ネコの街・広島県尾道市を象徴する存在で、同市立美術館への侵入を試みる様子がSNSで話題を呼んだ雄の黒猫「ケンちゃん」が死んだ。
同館が11日、公式Xで明らかにした。ネコが入るのを阻む警備員との<攻防>の様子がSNSで国内外に拡散され、来館者の増加や同市の知名度アップに貢献していた。
ケンちゃんは近くの飲食店の飼い猫。2016年頃から同館周辺に姿を見せ、17年3月、初めて館内への侵入を試みたが、警備員に阻止された。ちょうど「招き猫亭コレクション―猫まみれ」と題した特別展を開催中で、ガラスの壁越しに見えるネコの彫刻作品に反応したらしい。
同館が、その際の攻防の写真とともに公式Xに「入館を許可したいところですが、丁重にお帰りいただきました」と投稿すると、国内外のネコ好きの心をつかみ、一気に存在が知れ渡った。海外メディアでも報道され、2022年度には、年間の来館者数は過去最多の7万人超を記録した。
同館によると、ケンちゃんが最後に姿を見せたのは昨年7月で、今年に入って病気になり、9月下旬に死んだという。警備員は「寂しい。まだ建物の角からやってくるような気がする」と話しているという。
SNSで発信してきた梅林信二学芸員は「毎日のようにふれ合ってきた同僚、同志といえる存在。地方都市の美術館の名を世界に知らしめてくれた」と悼んだ。来年度、ケンちゃんにちなんだ企画展を検討するという。