「ガチ中華」急増中 都内“ディープスポット”竹ノ塚でチャイナタウン化が進むワケ

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5月21日に投開票を迎える足立区議選が大激戦となっている。定数45人に対して64人が立候補する“乱立”模様で、候補者たちの舌戦もヒートアップ。高齢者施策や子育て支援などが主な争点となっているが、地元区民からは「今そこにある“異変”はスルーされたまま」との声も……。「日本の近未来を先取り」した同区の“最深部”を現地ルポ。
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【写真】竹ノ塚「チャイナタウン」を彩る個性強めの“ガチ中華”各店 上野駅から地下鉄と東武スカイツリーラインを乗り継ぐこと約20分。足立区の北側に位置し、沿線では都内「最北端」の駅となる竹ノ塚に到着する。駅前のロータリーを幾棟もの団地がぐるりと囲む独特の景観で知られ、「都内屈指のディープスポット」とタウン誌で紹介されたこともある。

中国“東北系”がブーム 駅東口を出て大通りを10分ほど進むと、赤や黄色のハデな装飾に中国語が躍る“ガチ中華”店が軒を連ねて現れた。竹ノ塚で急速に進む「チャイナタウン化」の中心部とされる場所だ。「竹ノ塚で中国系のお店が増え始めたのはここ1~2年のこと。“火鍋”や“カラオケ”をウリにした飲食店が中心で、看板もメニューも中国語で書かれているケースが多い。日本人はほとんど利用せず、同じ在日中国人を相手に商売しているようだ」(近隣の日本人商店主) 短期間で10軒近くの店が誕生したスピードに戸惑い、首都圏随一のチャイナタウンに変貌した西川口(埼玉県)のようになることへ「不安を覚える住民も少なくない」(同)という。実際、足立区は都内23区のなかでも、中国人の人口伸び率が最も高いエリアの一つとなっている。急増する中国人 法務省・出入国在留管理庁の最新データによると、日本に住む在留中国人は74万4551人(2022年6月時点)。東京都によれば、うち都内には20万1660人(23年4月1日時点)が居住しているという。 現在、足立区には江東区に次ぐ1万5622人(同)の中国人が住むが、10年前の8524人と比べると、その伸び率は23区のなかでもトップクラスを誇る。「竹ノ塚チャイナタウン」の特徴の一つが、中国・東北地方(遼寧省・吉林省・黒竜江省)の料理を出す店が多い点だ。日本人好みの味付けに変えることなく、「本場の味」をそのまま出していることも、日本人の足を遠ざける理由の一つになっているとか。 昨年秋にオープンした“ガチ中華”店の一つに入って前菜と冷麺を注文してみると、たしかに味付けは辛くて濃い“本格派”。時に水と一緒に流し込まないと完食に苦労するほどだった。店主に話を聞こうとしたが、「ニホンゴはワカラナイ」と片言の日本語と手振りを交えて取材は拒否された。「チャイナタウン」化が進む理由 周辺取材を進めると、竹ノ塚で中国系の店が増えている理由がおぼろげながら見えてきた。「竹ノ塚にできた中華系飲食店のなかには、オーナーが先に池袋や秋葉原などで“ガチ中華”店を出して成功をおさめたケースが少なくない。池袋などの繁華街に比べ、竹ノ塚だとテナント家賃は3分の1程度ですむ一方、周辺に居住する中国人はヨソと比べても多い。コロナ禍を経て、コスパを重視する中国人オーナーの目に竹ノ塚は“穴場”と映っているようだ」(足立区内の中国系飲食店経営者) 駅周辺に林立する竹の塚団地はUR都市機構の物件で、「都営住宅のように収入制限もなければ、一般の賃貸住宅のように保証人も不要」のため、在日中国人など「外国人でも借りやすい」のだという。 竹ノ塚周辺に居住した者が、家族や親類などを呼び寄せるケースが一般的というが、東北系の店が中心となっているのには別の事情もあるようだ。「大連出身者」の攻勢 日本と中国東北部の歴史的な繋がりについて、『中国人が日本を買う理由』などの著書がある、中国事情に詳しいジャーナリストの中島恵氏がこう話す。「満州事変後の1932年、日本軍が中国東北地方に満州国を建国し、終戦後には同地に残された在留邦人の帰国問題が浮上しました。そんな歴史的な経緯から、かつて日本人と一緒に仕事をした経験のある中国人を親に持つ子供やその孫の世代で、日本に関心を持ち、日本語を勉強しているケースが東北地方では珍しくありません。中国で日本語を学ぶコースとして最も有名なのも、大連外国語大学の日本語学科です」 近年、都内で中国系飲食店を展開する経営者のなかに遼寧省大連市出身者が増えているのも、そういった背景が影響している可能性があるという。「住民の“およそ半数が中国人”で有名な埼玉県川口市の芝園団地も、その多くは大連などを含む東北地方の出身者です。新天地を求める先として、東北出身者にとって“異国でありながら近い国”である日本を選ぶ傾向が見られたとしても何ら不思議ではありません」(中島氏) 近隣住民からは「団地が廃墟と化すよりは、外国人に入居してもらったほうがいい」との声が多い一方で、「地域社会に溶け込まず、中国人同士で完結する生活圏を形成しているのが不安だ」との声も聞かれた。“治外法権”とならなければ、チャイナタウン化も歓迎されるかもしれない。デイリー新潮編集部
上野駅から地下鉄と東武スカイツリーラインを乗り継ぐこと約20分。足立区の北側に位置し、沿線では都内「最北端」の駅となる竹ノ塚に到着する。駅前のロータリーを幾棟もの団地がぐるりと囲む独特の景観で知られ、「都内屈指のディープスポット」とタウン誌で紹介されたこともある。
駅東口を出て大通りを10分ほど進むと、赤や黄色のハデな装飾に中国語が躍る“ガチ中華”店が軒を連ねて現れた。竹ノ塚で急速に進む「チャイナタウン化」の中心部とされる場所だ。
「竹ノ塚で中国系のお店が増え始めたのはここ1~2年のこと。“火鍋”や“カラオケ”をウリにした飲食店が中心で、看板もメニューも中国語で書かれているケースが多い。日本人はほとんど利用せず、同じ在日中国人を相手に商売しているようだ」(近隣の日本人商店主)
短期間で10軒近くの店が誕生したスピードに戸惑い、首都圏随一のチャイナタウンに変貌した西川口(埼玉県)のようになることへ「不安を覚える住民も少なくない」(同)という。実際、足立区は都内23区のなかでも、中国人の人口伸び率が最も高いエリアの一つとなっている。
法務省・出入国在留管理庁の最新データによると、日本に住む在留中国人は74万4551人(2022年6月時点)。東京都によれば、うち都内には20万1660人(23年4月1日時点)が居住しているという。
現在、足立区には江東区に次ぐ1万5622人(同)の中国人が住むが、10年前の8524人と比べると、その伸び率は23区のなかでもトップクラスを誇る。
「竹ノ塚チャイナタウン」の特徴の一つが、中国・東北地方(遼寧省・吉林省・黒竜江省)の料理を出す店が多い点だ。日本人好みの味付けに変えることなく、「本場の味」をそのまま出していることも、日本人の足を遠ざける理由の一つになっているとか。
昨年秋にオープンした“ガチ中華”店の一つに入って前菜と冷麺を注文してみると、たしかに味付けは辛くて濃い“本格派”。時に水と一緒に流し込まないと完食に苦労するほどだった。店主に話を聞こうとしたが、「ニホンゴはワカラナイ」と片言の日本語と手振りを交えて取材は拒否された。
周辺取材を進めると、竹ノ塚で中国系の店が増えている理由がおぼろげながら見えてきた。
「竹ノ塚にできた中華系飲食店のなかには、オーナーが先に池袋や秋葉原などで“ガチ中華”店を出して成功をおさめたケースが少なくない。池袋などの繁華街に比べ、竹ノ塚だとテナント家賃は3分の1程度ですむ一方、周辺に居住する中国人はヨソと比べても多い。コロナ禍を経て、コスパを重視する中国人オーナーの目に竹ノ塚は“穴場”と映っているようだ」(足立区内の中国系飲食店経営者)
駅周辺に林立する竹の塚団地はUR都市機構の物件で、「都営住宅のように収入制限もなければ、一般の賃貸住宅のように保証人も不要」のため、在日中国人など「外国人でも借りやすい」のだという。
竹ノ塚周辺に居住した者が、家族や親類などを呼び寄せるケースが一般的というが、東北系の店が中心となっているのには別の事情もあるようだ。
日本と中国東北部の歴史的な繋がりについて、『中国人が日本を買う理由』などの著書がある、中国事情に詳しいジャーナリストの中島恵氏がこう話す。
「満州事変後の1932年、日本軍が中国東北地方に満州国を建国し、終戦後には同地に残された在留邦人の帰国問題が浮上しました。そんな歴史的な経緯から、かつて日本人と一緒に仕事をした経験のある中国人を親に持つ子供やその孫の世代で、日本に関心を持ち、日本語を勉強しているケースが東北地方では珍しくありません。中国で日本語を学ぶコースとして最も有名なのも、大連外国語大学の日本語学科です」
近年、都内で中国系飲食店を展開する経営者のなかに遼寧省大連市出身者が増えているのも、そういった背景が影響している可能性があるという。
「住民の“およそ半数が中国人”で有名な埼玉県川口市の芝園団地も、その多くは大連などを含む東北地方の出身者です。新天地を求める先として、東北出身者にとって“異国でありながら近い国”である日本を選ぶ傾向が見られたとしても何ら不思議ではありません」(中島氏)
近隣住民からは「団地が廃墟と化すよりは、外国人に入居してもらったほうがいい」との声が多い一方で、「地域社会に溶け込まず、中国人同士で完結する生活圏を形成しているのが不安だ」との声も聞かれた。“治外法権”とならなければ、チャイナタウン化も歓迎されるかもしれない。
デイリー新潮編集部

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