サミット警備で“異例の人事”が行われた理由 現地のホテルは「全館休館で、最大500万円の損失」とため息

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「日本の歴史においても、最も重要なサミットになると感じている」
と話したのは岸田文雄総理(65)である。今月13日、広島サミットの会場を視察した際の発言だが、米「タイム」誌が先月発表した「世界で最も影響力のある100人」の「リーダー部門」に選ばれ表紙を飾るなど、世界からも注目を浴び意気揚々。下見は日帰りで、メイン会場となるグランドプリンスホテル広島をはじめ、平和記念公園や厳島神社のある宮島までを一気に見て回った。
【写真を見る】サミット直前、厳戒態勢の広島 意気込む総理は、サミット成功で支持率上昇を狙い、長期政権への布石を打とうともくろむが、警護につく警察関係者は終始緊張感を漂わせていた。 昨年7月の安倍晋三元総理銃撃事件に続き、先月には当の岸田総理が和歌山で襲撃を受けたのは記憶に新しい。日本の警備能力に世界中から疑念がもたれているところへ、G7の首脳らが大挙して押し寄せてくるのだ。G7サミットに関する視察で広島を訪問した岸田総理(外務省のTwitterより) 社会部デスクが言う。「近年のサミット会場は、テロ防止の観点から警備が容易な保養地などが選ばれる傾向にあり、日本も2008年『北海道洞爺湖サミット』や16年『伊勢志摩サミット』では、リゾートホテルを貸し切りにしました」異例の人事 ところが、今回は人口120万人を誇る大都市で行われる上、VIPの訪問先も街中に分散している。「持ち回りで議長国となった日本が会場を決めましたが、ウクライナ侵攻で核の脅威が現実味を帯びたことで、岸田総理は“被爆地から平和のメッセージを発信する”と大風呂敷を広げ、自身の地元で開催する大義名分を語ったのです」(同) 総理のお膝元で失敗は許されない。重圧にさらされた警察庁は、昨年9月、会場警備を仕切る広島県警本部長に、森元良幸氏(55)を抜てきしたのだ。 警察庁関係者によれば、「東大法学部に入学する以前は広島市民だったという森元氏は、刑事畑出身の前任者と打って変わって警備畑のエースです。伊勢志摩サミットでは三重県警本部長、一昨年の東京五輪で警視庁警備部長を歴任するなど適材適所にみえますが、異例の人事ですよ」 警察人事では、キャリア官僚が自らの出身地である県警の本部長には就かないという慣例がある上、一度でもサミット警備の職責を全うした人物が、再任されるのは珍しいという。「満室なら約500万円の損失」 警察の威信を背負う新本部長は、どんな作戦でサミット警備を完遂するのか。「広島市内の主要道路には100メートル置きに制服姿の警官が立ち、サミット前日から高速道路は通行止め、路面電車やバスなど公共交通機関も一部運休。各国首脳が訪れるメイン会場のホテルがある宇品島や宮島などは、関係者や住民に渡されるIDがないと立ち入れません」(先のデスク) 文字通り広島全体を封鎖する勢いだが、地元住民への影響は甚大である。 宮島のさるホテル従業員に話を聞くと、「サミット開催中の3日間、宮島は観光客の立ち入りができないので、ウチは全館休館。仮に期間中、満室なら約500万円の損失ですが、国や県から支援の話は聞こえてきません」「経済効果はゼロ」 同じ宿泊業でも、警備関係者が利用する施設は潤うなど、明暗が生じていた。 別のホテル従業員は、「海外からも予約が入っていたのですが、事情を伝えて泣く泣くキャンセルにしてもらいました。書き入れ時なので正直かなりの痛手。経済効果はゼロですよ」 広島市内に目を転じれば、中国地方有数の歓楽街・流川からはこんな声も……。「サミット中は交通機関も止まって女の子が出勤できず休業する店もある。GWで客が増えてきたのにいい迷惑。その分非番の機動隊員が来るけど、おさわり禁止の店でおっぱいに触れようとしたり、飲み方が汚いという声は聞くね。皆やたらと体格がいいし、柔道の影響か餃子みたいな耳だから、警官だと分かるんだ」(無料案内所の店員)「週刊新潮」5月25日号 掲載
意気込む総理は、サミット成功で支持率上昇を狙い、長期政権への布石を打とうともくろむが、警護につく警察関係者は終始緊張感を漂わせていた。
昨年7月の安倍晋三元総理銃撃事件に続き、先月には当の岸田総理が和歌山で襲撃を受けたのは記憶に新しい。日本の警備能力に世界中から疑念がもたれているところへ、G7の首脳らが大挙して押し寄せてくるのだ。
社会部デスクが言う。
「近年のサミット会場は、テロ防止の観点から警備が容易な保養地などが選ばれる傾向にあり、日本も2008年『北海道洞爺湖サミット』や16年『伊勢志摩サミット』では、リゾートホテルを貸し切りにしました」
ところが、今回は人口120万人を誇る大都市で行われる上、VIPの訪問先も街中に分散している。
「持ち回りで議長国となった日本が会場を決めましたが、ウクライナ侵攻で核の脅威が現実味を帯びたことで、岸田総理は“被爆地から平和のメッセージを発信する”と大風呂敷を広げ、自身の地元で開催する大義名分を語ったのです」(同)
総理のお膝元で失敗は許されない。重圧にさらされた警察庁は、昨年9月、会場警備を仕切る広島県警本部長に、森元良幸氏(55)を抜てきしたのだ。
警察庁関係者によれば、
「東大法学部に入学する以前は広島市民だったという森元氏は、刑事畑出身の前任者と打って変わって警備畑のエースです。伊勢志摩サミットでは三重県警本部長、一昨年の東京五輪で警視庁警備部長を歴任するなど適材適所にみえますが、異例の人事ですよ」
警察人事では、キャリア官僚が自らの出身地である県警の本部長には就かないという慣例がある上、一度でもサミット警備の職責を全うした人物が、再任されるのは珍しいという。
警察の威信を背負う新本部長は、どんな作戦でサミット警備を完遂するのか。
「広島市内の主要道路には100メートル置きに制服姿の警官が立ち、サミット前日から高速道路は通行止め、路面電車やバスなど公共交通機関も一部運休。各国首脳が訪れるメイン会場のホテルがある宇品島や宮島などは、関係者や住民に渡されるIDがないと立ち入れません」(先のデスク)
文字通り広島全体を封鎖する勢いだが、地元住民への影響は甚大である。
宮島のさるホテル従業員に話を聞くと、
「サミット開催中の3日間、宮島は観光客の立ち入りができないので、ウチは全館休館。仮に期間中、満室なら約500万円の損失ですが、国や県から支援の話は聞こえてきません」
同じ宿泊業でも、警備関係者が利用する施設は潤うなど、明暗が生じていた。
別のホテル従業員は、
「海外からも予約が入っていたのですが、事情を伝えて泣く泣くキャンセルにしてもらいました。書き入れ時なので正直かなりの痛手。経済効果はゼロですよ」
広島市内に目を転じれば、中国地方有数の歓楽街・流川からはこんな声も……。
「サミット中は交通機関も止まって女の子が出勤できず休業する店もある。GWで客が増えてきたのにいい迷惑。その分非番の機動隊員が来るけど、おさわり禁止の店でおっぱいに触れようとしたり、飲み方が汚いという声は聞くね。皆やたらと体格がいいし、柔道の影響か餃子みたいな耳だから、警官だと分かるんだ」(無料案内所の店員)
「週刊新潮」5月25日号 掲載

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