9年連続でM-1の決勝ラウンドに進出し、’10年にM-1王者に輝いた実力派芸人、笑い飯の哲夫。小・中学生向け学習塾の経営者としての顔も持つ彼が、令和ニッポンの教育について考え、悩める親たちの相談に答えていく!◆息子が高卒の妻のことを見下すような発言をします
相談者42歳男性・自営業(妻、息子10歳)
春から小5になる息子が、高卒の妻のことを「お母さんは低学歴だから。高卒だから」と見下す発言をしだして困っています。私の母が妻の学歴をよく思っておらず、妻のいないところで悪く言うのを息子が耳にしたせいだと思います(ちなみに私は一応大卒ですが、そんなにレベルの高い大学ではありません)。
母には、そもそも人を学歴で判断するのはおかしいし、子どもの教育にもよくないと注意しているのですが、私がいないときの発言まではどうしようもありません。
息子には、将来の選択肢を増やすためにも大学には進学してほしいのですが、妻への態度を注意しながら大学進学を希望するのは矛盾している気もして、どうしたらいいかわからなくなっています。
◆哲夫のアンサー
とりあえず息子さんはしばきの刑ですね。思春期に親を蔑むのはよくある通過点だとは思いますが、それに対しての躾は絶対に必要です。より良い大人に成長させてあげるために、お父さんはしばいてあげなければなりません。
以前この連載で「しばく」は使い勝手のいい関西弁だと案内させていただきました。「茶しばく」などのように使います。今回の冒頭では、口による徹底的な制裁の意味でしばくを使っています。
すみません、不悪口の戒めを怠っておりました。
仏教に三業というものがあって、これは身、口、意の三つを表しています。いつもこれらを綺麗にしておきましょうという教えがあるわけです。また、十善戒という十の戒めがあって、不殺生、不偸盗、不邪淫、不妄語、不綺語、不悪口、不両舌、不慳貪、不瞋恚、不邪見となっています。
簡単に説明しますと、殺さない、盗まない、不倫しない、嘘をつかない、飾った言葉を使わない、乱暴なことを言わない、二枚舌を使わない、貪欲にならない、ブチ切れない、ものの見方を間違わない、となります。
これらを先ほどの身、口、意に分類しますと、身に対する戒めは、不殺生、不偸盗、不邪淫、口に対する戒めは、不妄語、不綺語、不悪口、不両舌、意に対する戒めは、不慳貪、不瞋恚、不邪見となります。
口に対する戒めが、他のものより一つ多くなっていますね。それほど、口は綺麗にしておかなければならないということです。「口は災いの元」といいますよね。まさに息子さんは、発言によって災いを招いています。
◆子どもは必ず親の口調を真似する
もう少しだけ仏教知識をひけらかしますが、楊柳観音という観音さんがいてはります。この観音さんは手に柳の枝でできた楊枝を持ってはります。まさに口が災いの元だから、その大本の部分を綺麗にしてあげようというお姿になってはります。病気も口から、人間関係のもつれも口からですよね。
これも過去に連載で案内しましたが、子どもは必ず親の口調を真似します。お母さまだけでなく、ご自身もいま一度、学歴を揶揄するような発言をしてこなかったか見直していただきたいと思います。
◆「だから」に続く文章を考えさせ、いかに心ない言葉か実感させる
また、それ以上に気になるのが「高卒だから」と、「だから」で終わる口調になっている点です。発言内容の如何にかかわらず、息子さんがこの「だから」で終わる発言をしたときは、必ず「だからなんやねん」と言ってやってください。
無責任な「だから」で終わらせず、その後の文章を子供に一生懸命考えさせることで創造性を育み、作り上げた言葉によっていかに自分がお母さんに対して心ないことを言っているか、痛感させてあげましょう。「お母さんは高卒だから、こんなお父さんと結婚したんだ」。どうですか。しばきでしょ。
★息子さんに口は災いの元だということを痛感させましょう
イラスト/とあるアラ子 図版/ミューズグラフィック
―[笑い飯・哲夫の寺子屋 子どもを幸せにするシン・教育論]―