「山上徹也の模倣犯」木村隆二容疑者の“空虚” 動機の背景に浮上した「政治家は旧統一教会票で利益独占」の意味するところ

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現職総理を自作の“パイプ爆弾”で襲撃するという「前代未聞のテロ行為」を敢行した木村隆二容疑者(24)。その生い立ちや犯行までの足跡は徐々に明らかとなりつつあるが、いまだ謎に包まれているのは「動機」である。しかし捜査関係者や専門家は木村容疑者の背後に「山上徹也の影」を見て取っているという。
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【写真を見る】生々しい事件の「傷跡」と防犯カメラが捉えた事件直前の容疑者の姿 4月17日、威力業務妨害の容疑で和歌山地検に送検された木村容疑者はいまも黙秘を貫いているという。

全国紙社会部記者の話。「逮捕後、“弁護士が来てから話します”と言ったきり、木村容疑者は一切の雑談にも応じていません。事件現場となった雑賀崎漁港に容疑者が持ち込んだ“パイプ爆弾”と見られる金属製の筒は2本あり、爆発した1本は40メートル先まで飛び、残る1本は着火前の状態で現場に残されていた。爆発物の他に刃渡り13センチの果物ナイフとライターなども所持していたことが判明しています」これから何を語るか(送検時の木村容疑者) 木村容疑者が母親と兄の3人で暮らしていた兵庫県川西市にある自宅からは、火薬の原料とみられる粉末や金属製の筒、工具類など約90点が押収された。「和歌山県警はパイプ爆弾を自宅で自作したと見ており、殺傷能力の有無のほか、殺人未遂容疑の適用も視野に入れて慎重に捜査を進めています」(同)透けて見える「山上徹也の存在」 頻繁に家族を怒鳴るなど「威圧的」な父親のもとに育ち、中学時代には友達から無視されるなどの“イジメ”にも遭っていたという木村容疑者。家族は容疑者について「定職に就いておらず、家に閉じこもる生活が続いていた」と県警に話したと伝えられる。「木村容疑者は昨年6月、年齢や供託金を理由に参院選に立候補できないのは“法のもとの平等を定めた憲法に違反する”として、国を相手取って提訴。弁護士を付けない本人訴訟で、“精神的苦痛を受けた”として10万円の損害賠償を求めたものの、1審神戸地裁は昨年11月に請求を棄却しました」(同) 判決を不服として木村容疑者は大阪高裁に控訴。その際、「既存政治家は国民の信任を得ずとも統一教会の組織票で当選し、利益を不当に独占」しているなどの主張を控訴状に書いたという。 捜査関係者が語る。 「容疑者が政治に強い関心を持っていたことは分かるが、選挙制度への不満が“なぜ現職総理を狙ったテロ行為”へと結びついたのかが不明だ。容疑者のものと見られるTwitterには“岸田首相も世襲3世ですが、民意を無視する人が政治家には通常なれません”と記され、また自分で起こした国賠訴訟のなかで“安倍元総理の国葬を世論の反対を押し切って強行した”と岸田内閣を批判もしているが、それだけでテロの対象となり得るのか。犯行を動機付けるような強い思想や宗教的な背景も見えてこないなか、容疑者の飛躍した行動に決定的な影響を与えた可能性があるのが“山上徹也”の存在だ」「山上の模倣犯」 昨年7月、安倍晋三元総理を銃撃した山上徹也被告の減刑を求める署名は1万3000筆を超えるなど、“悲劇のカリスマ”として神格化する動きはいまだ衰えを見せていない。 精神科医の片田珠美氏が言う。「山上被告が犯した行為は決して許されるものではありませんが、一方で被告に犯行を決意させた旧統一教会をめぐる問題では被害者救済法案が成立するなど、事件が現実の政治を動かした。そのため、一部で山上被告を“旧統一教会の悪を暴いた正義のヒーロー”として偶像視する傾向が見られるのは事実です。事件の形態やこれまで明らかになっている情報から、木村容疑者が山上被告にインスパイアされて事件を起こした“山上被告の模倣犯”である可能性は否定できません」 ただし片田氏が危うさを感じるのは、山上被告のように“壮絶な生い立ち”を伴っているわけではないにもかかわらず、木村容疑者が同被告に「共鳴して同一視」したとも窺える点という。「他人からは理解困難であっても、山上被告にとっては安倍元総理を狙う必然性がありましたが、現状、木村容疑者に“岸田首相でなければならなかった”理由があったのか判然としません。結局のところ、政治的な不満を持っていたとしても、傷つけられた自尊心の回復手段として“世間から注目を集めることで見返してやる”といった短絡的な心情が動機の核心部を占めている疑いも払拭できません」(片田氏) 鬱屈した想いを抱える青年をテロへと駆り立てたものは何だったのか。木村容疑者の供述が待たれる。デイリー新潮編集部
4月17日、威力業務妨害の容疑で和歌山地検に送検された木村容疑者はいまも黙秘を貫いているという。
全国紙社会部記者の話。
「逮捕後、“弁護士が来てから話します”と言ったきり、木村容疑者は一切の雑談にも応じていません。事件現場となった雑賀崎漁港に容疑者が持ち込んだ“パイプ爆弾”と見られる金属製の筒は2本あり、爆発した1本は40メートル先まで飛び、残る1本は着火前の状態で現場に残されていた。爆発物の他に刃渡り13センチの果物ナイフとライターなども所持していたことが判明しています」
木村容疑者が母親と兄の3人で暮らしていた兵庫県川西市にある自宅からは、火薬の原料とみられる粉末や金属製の筒、工具類など約90点が押収された。
「和歌山県警はパイプ爆弾を自宅で自作したと見ており、殺傷能力の有無のほか、殺人未遂容疑の適用も視野に入れて慎重に捜査を進めています」(同)
頻繁に家族を怒鳴るなど「威圧的」な父親のもとに育ち、中学時代には友達から無視されるなどの“イジメ”にも遭っていたという木村容疑者。家族は容疑者について「定職に就いておらず、家に閉じこもる生活が続いていた」と県警に話したと伝えられる。
「木村容疑者は昨年6月、年齢や供託金を理由に参院選に立候補できないのは“法のもとの平等を定めた憲法に違反する”として、国を相手取って提訴。弁護士を付けない本人訴訟で、“精神的苦痛を受けた”として10万円の損害賠償を求めたものの、1審神戸地裁は昨年11月に請求を棄却しました」(同)
判決を不服として木村容疑者は大阪高裁に控訴。その際、「既存政治家は国民の信任を得ずとも統一教会の組織票で当選し、利益を不当に独占」しているなどの主張を控訴状に書いたという。
捜査関係者が語る。 「容疑者が政治に強い関心を持っていたことは分かるが、選挙制度への不満が“なぜ現職総理を狙ったテロ行為”へと結びついたのかが不明だ。容疑者のものと見られるTwitterには“岸田首相も世襲3世ですが、民意を無視する人が政治家には通常なれません”と記され、また自分で起こした国賠訴訟のなかで“安倍元総理の国葬を世論の反対を押し切って強行した”と岸田内閣を批判もしているが、それだけでテロの対象となり得るのか。犯行を動機付けるような強い思想や宗教的な背景も見えてこないなか、容疑者の飛躍した行動に決定的な影響を与えた可能性があるのが“山上徹也”の存在だ」
昨年7月、安倍晋三元総理を銃撃した山上徹也被告の減刑を求める署名は1万3000筆を超えるなど、“悲劇のカリスマ”として神格化する動きはいまだ衰えを見せていない。
精神科医の片田珠美氏が言う。
「山上被告が犯した行為は決して許されるものではありませんが、一方で被告に犯行を決意させた旧統一教会をめぐる問題では被害者救済法案が成立するなど、事件が現実の政治を動かした。そのため、一部で山上被告を“旧統一教会の悪を暴いた正義のヒーロー”として偶像視する傾向が見られるのは事実です。事件の形態やこれまで明らかになっている情報から、木村容疑者が山上被告にインスパイアされて事件を起こした“山上被告の模倣犯”である可能性は否定できません」
ただし片田氏が危うさを感じるのは、山上被告のように“壮絶な生い立ち”を伴っているわけではないにもかかわらず、木村容疑者が同被告に「共鳴して同一視」したとも窺える点という。
「他人からは理解困難であっても、山上被告にとっては安倍元総理を狙う必然性がありましたが、現状、木村容疑者に“岸田首相でなければならなかった”理由があったのか判然としません。結局のところ、政治的な不満を持っていたとしても、傷つけられた自尊心の回復手段として“世間から注目を集めることで見返してやる”といった短絡的な心情が動機の核心部を占めている疑いも払拭できません」(片田氏)
鬱屈した想いを抱える青年をテロへと駆り立てたものは何だったのか。木村容疑者の供述が待たれる。
デイリー新潮編集部

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