岸田文雄総理を狙ったテロ事件の余波は一向に収まっていない。和歌山県警は、現行犯逮捕した木村隆二容疑者(24)への取り調べを進めているが、動機の解明には時間を要しそうだ。
【写真を見る】活発な小学生時代から一転、大人しくなったという中学生時代の木村容疑者 今回の一件は現職総理を狙ったテロであり、また、誰の脳裏にも昨年7月に安倍晋三元総理が凶弾に倒れた事件が過ったはずだ。しかし、木村容疑者が逮捕されたのは、あくまでも威力業務妨害の容疑。その法定刑は<3年以下の懲役または50万円以下の罰金>に過ぎない。
大勢の人々が集まった岸田総理の街頭演説の最中に爆発物を投げ込み、あわや大惨事という事態を引き起こした木村容疑者。仮に3年の懲役刑が課されたとしても、“あまりに軽すぎる”という印象は否めないだろう。しかも、事件によって人命こそ奪われなかったものの、容疑者に対して厳しい刑罰が下されなければ、新たな“模倣犯”が今後も続々と現れかねない非常事態と言える。送検される木村容疑者 捜査当局は今後、テロ行為の犯人に対してどのような対処を考えているのか。 元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は次のように語る。「威力業務妨害容疑での逮捕は捜査の入り口に過ぎず、これで終わることは100%ないでしょう。捜査当局は容疑者への事情聴取を進めつつ、複数回の再逮捕を念頭に動いていると思います」捜査当局が目指す“無期懲役” 事実、木村容疑者を再逮捕するための材料は少なくない。たとえば、現場にナイフを持ち込んでいたことで銃刀法違反罪に問うことも想定される。また、岸田総理の街頭演説中に爆発物を用いているため、公職選挙法違反(選挙の自由妨害)容疑での再逮捕もあり得るという。その上で、「事件の重大性や社会的影響を考慮すれば、捜査当局は適用可能な法律を駆使してより重い刑罰、たとえば無期懲役くらいを目指しているのではないか」 すると、捜査当局の最終的な狙いはどこにあるのか。若狭氏が指摘するのは2つの容疑による再逮捕だ。「まずは殺人未遂容疑です。今回使用した爆発物は、破片が数十メートルも飛散しています。人を殺傷するに足りる威力のある爆発物であることが反映し、それを人に向かって投げつけたとなれば、本人が否定したとしても殺意が客観的に認められる可能性はある」 未遂罪は刑が軽減されるとはいえ、殺人罪の法定刑は<死刑または無期もしくは5年以上の懲役>と、威力業務妨害罪よりもはるかに重い。オウム事件でも用いられた「爆発物取締罰則」 さらに、若狭氏はもうひとつの可能性にも触れている。それが「爆発物取締罰則」違反だ。こちらの法定刑は<死刑または無期もしくは7年以上の懲役または禁錮>。ちなみに、1995年に起きたオウム真理教による東京都庁爆発物事件では、元信者の菊地直子元被告が殺人未遂と、爆発物取締罰則違反のほう助罪で起訴されている(後に無罪が確定)。「爆発物取締罰則違反の法定刑は、殺人罪と比べてもかなり重いわけです。しかも、この法律の場合、殺意の有無は適用に関係しないとされます。今回の事件では、容疑者本人が爆発物を使用したことは間違いなく、殺人未遂以上に客観的な状況で罪に問うことができる。おそらく、捜査当局は爆発物取締罰則の適用を軸に進めていくのではないでしょうか。その場合、少なくとも、懲役10年以上の刑罰が下される可能性があると思います」デイリー新潮編集部
今回の一件は現職総理を狙ったテロであり、また、誰の脳裏にも昨年7月に安倍晋三元総理が凶弾に倒れた事件が過ったはずだ。しかし、木村容疑者が逮捕されたのは、あくまでも威力業務妨害の容疑。その法定刑は<3年以下の懲役または50万円以下の罰金>に過ぎない。
大勢の人々が集まった岸田総理の街頭演説の最中に爆発物を投げ込み、あわや大惨事という事態を引き起こした木村容疑者。仮に3年の懲役刑が課されたとしても、“あまりに軽すぎる”という印象は否めないだろう。しかも、事件によって人命こそ奪われなかったものの、容疑者に対して厳しい刑罰が下されなければ、新たな“模倣犯”が今後も続々と現れかねない非常事態と言える。
捜査当局は今後、テロ行為の犯人に対してどのような対処を考えているのか。
元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は次のように語る。
「威力業務妨害容疑での逮捕は捜査の入り口に過ぎず、これで終わることは100%ないでしょう。捜査当局は容疑者への事情聴取を進めつつ、複数回の再逮捕を念頭に動いていると思います」
事実、木村容疑者を再逮捕するための材料は少なくない。たとえば、現場にナイフを持ち込んでいたことで銃刀法違反罪に問うことも想定される。また、岸田総理の街頭演説中に爆発物を用いているため、公職選挙法違反(選挙の自由妨害)容疑での再逮捕もあり得るという。その上で、
「事件の重大性や社会的影響を考慮すれば、捜査当局は適用可能な法律を駆使してより重い刑罰、たとえば無期懲役くらいを目指しているのではないか」
すると、捜査当局の最終的な狙いはどこにあるのか。若狭氏が指摘するのは2つの容疑による再逮捕だ。
「まずは殺人未遂容疑です。今回使用した爆発物は、破片が数十メートルも飛散しています。人を殺傷するに足りる威力のある爆発物であることが反映し、それを人に向かって投げつけたとなれば、本人が否定したとしても殺意が客観的に認められる可能性はある」
未遂罪は刑が軽減されるとはいえ、殺人罪の法定刑は<死刑または無期もしくは5年以上の懲役>と、威力業務妨害罪よりもはるかに重い。
さらに、若狭氏はもうひとつの可能性にも触れている。それが「爆発物取締罰則」違反だ。こちらの法定刑は<死刑または無期もしくは7年以上の懲役または禁錮>。ちなみに、1995年に起きたオウム真理教による東京都庁爆発物事件では、元信者の菊地直子元被告が殺人未遂と、爆発物取締罰則違反のほう助罪で起訴されている(後に無罪が確定)。
「爆発物取締罰則違反の法定刑は、殺人罪と比べてもかなり重いわけです。しかも、この法律の場合、殺意の有無は適用に関係しないとされます。今回の事件では、容疑者本人が爆発物を使用したことは間違いなく、殺人未遂以上に客観的な状況で罪に問うことができる。おそらく、捜査当局は爆発物取締罰則の適用を軸に進めていくのではないでしょうか。その場合、少なくとも、懲役10年以上の刑罰が下される可能性があると思います」
デイリー新潮編集部