外務省からパスポート返納命令を受けているガーシーは13日にパスポートの返納期限を迎えた。このまま失効すれば、今後はガーシーの滞在ビザを発給しているUAE当局の判断が重要な意味を持つ。UAE当局と日本警察の交渉次第では、強制的に身柄が引き渡される可能性もある。一方で、ガーシーはこうした最悪の事態も見据えて、密かに現地の有力者と接触を重ねてきた。そこでガーシーを有力者につないでいたのは、思いも寄らぬ人物だった。元朝日新聞ドバイ支局長・伊藤喜之氏の新刊『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』から抜粋してお届けする。
連載『悪党』第4回前編
アラブの王族になりたい――。
東谷が突飛なことを言い出した。参院選のころからだ。
誰もが眉をひそめたくなるが、本人は結構本気だという。
経済学者成田悠輔とのNewsPicksでのオンライン対談で、その理由を語っている。
「王族になりたいんですよ。めちゃめちゃハードルが高いとは思っているんですけどね、(可能性は)ゼロじゃないと思っている。(アラブの王族と)養子縁組をさせてもらうとか、王女さんと結婚するとか、いろんなかたちで入る方法はあると思う。もし王族になれたら、大手をふって日本に帰れる。さすがにアラブのロイヤルファミリーの人は逮捕できないでしょう。漫画みたいなこと言っていると思うやろ。でも、実際に王族を紹介してくれる人がたくさん出てきたんですよ」(2022年8月19日 NewsPicks配信) 当初はレストラン崇寿がスポンサーとなって就労ビザを取得し、アルバイトしていた東谷だが、YouTubeなどの動画配信の活動が本格化したことで、ビザを切り替える必要が出てきた。
ちょうどUAEでは近年、UAEで多額の投資をする投資家や博士号取得者、医師、研究者、芸術家など各分野で優れた能力を持つ人に対して最長10年の居住ビザを取得できる「ゴールデンビザ」の制度がスタートしていた。崇寿の日本人シェフがゴールデンビザを取得したこともあり、東谷もYouTube活動などから「クリエーター」の枠で申請してみると、思いのほかすぐに取得できたのだという。経営コンサルタントの元赤軍派東谷にとってはUAEでの身分や生活基盤が安定することは、ドバイで暴露動画の配信を続けていく上でも死活的な重要な意味合いを持つ。そして、そこからさらに大胆にも思いついたのが「王族になる」という発想だった。日本に帰国すれば、詐欺や暴露行為による名誉毀損、脅迫などの容疑で逮捕される恐れがある。それだけにUAEでできる限り王族と近づくことで、日本に帰るための何らかの安全保障を得たいと考えたのだ。東谷とのオンライン対談で成田は苦笑いをしていたが、こういう反応が普通だろう。だが、東谷が語るように本当に王族を紹介する人物が現れた。その経歴がまた変わっている。かつて赤軍派だったという日本人男性だ。ガーシー誕生日会の2日目にもその男性は顔を出し、隅っこのほうで1回500UAEディルハム(当時のレートで2万円)の高級シーシャ(水タバコ)を吸っていた。UAEの地元民が着る民族衣装カンドゥーラ姿。頭にもガトゥラと呼ばれる布を巻いているので、ひときわ目立っていた。 大谷行雄。70歳。UAE北部のラスアルハイマに住んでいる。現在の職業は経営コンサルタント。UAEに進出する日本人の会社設立の相談などに乗っている。私は新聞記者時代にラスアルハイマで大谷に取材したことがあり、顔馴染みでもあったが、ここで出くわすとは思っていなかった。後編記事【窮地のガーシーはUAEに居続けられるのか…ガーシーと現地王族をつなげた、トップ進学校出身の元赤軍派の告白「ガーシー氏の権力に対する破壊的精神を買っている」】
ちょうどUAEでは近年、UAEで多額の投資をする投資家や博士号取得者、医師、研究者、芸術家など各分野で優れた能力を持つ人に対して最長10年の居住ビザを取得できる「ゴールデンビザ」の制度がスタートしていた。崇寿の日本人シェフがゴールデンビザを取得したこともあり、東谷もYouTube活動などから「クリエーター」の枠で申請してみると、思いのほかすぐに取得できたのだという。
東谷にとってはUAEでの身分や生活基盤が安定することは、ドバイで暴露動画の配信を続けていく上でも死活的な重要な意味合いを持つ。
そして、そこからさらに大胆にも思いついたのが「王族になる」という発想だった。日本に帰国すれば、詐欺や暴露行為による名誉毀損、脅迫などの容疑で逮捕される恐れがある。それだけにUAEでできる限り王族と近づくことで、日本に帰るための何らかの安全保障を得たいと考えたのだ。
東谷とのオンライン対談で成田は苦笑いをしていたが、こういう反応が普通だろう。だが、東谷が語るように本当に王族を紹介する人物が現れた。その経歴がまた変わっている。かつて赤軍派だったという日本人男性だ。
ガーシー誕生日会の2日目にもその男性は顔を出し、隅っこのほうで1回500UAEディルハム(当時のレートで2万円)の高級シーシャ(水タバコ)を吸っていた。UAEの地元民が着る民族衣装カンドゥーラ姿。頭にもガトゥラと呼ばれる布を巻いているので、ひときわ目立っていた。 大谷行雄。70歳。
UAE北部のラスアルハイマに住んでいる。現在の職業は経営コンサルタント。UAEに進出する日本人の会社設立の相談などに乗っている。私は新聞記者時代にラスアルハイマで大谷に取材したことがあり、顔馴染みでもあったが、ここで出くわすとは思っていなかった。
後編記事【窮地のガーシーはUAEに居続けられるのか…ガーシーと現地王族をつなげた、トップ進学校出身の元赤軍派の告白「ガーシー氏の権力に対する破壊的精神を買っている」】