アルバイトで「制服は自腹」に納得できない、法的には?

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アルバイトで制服の着用が求められることはよくありますが、「支給・貸与」ではなく「購入」するケースについて、弁護士ドットコムに相談が寄せられています。
相談者の女性は大手コーヒーチェーン店でバイトを始めたところ、最初にエプロンが支給されましたが、「エプロンの代金3000円は最初の給料から引きます」と伝えられました。しかも、退職時にエプロンを返しても返金されないといいます。
制服が自腹になることについて納得のいかない女性。勤務に必要な制服を自腹で負担することは、違法にならないのでしょうか。金井英人弁護士に聞きました。
–アルバイトの制服は会社が費用を出すものではないのですか?
アルバイトで着用する制服について、その費用を従業員が自腹で負担するというルールを勤務先が定めること自体を法律が禁じているわけではありません。
これは「待遇」の問題で、制服代を会社やお店が支給するか、従業員が負担するかについては、原則として自由に取り決めてよいことになっています。
裏を返すと、労働契約や就業規則で取り決めをしていないにもかかわらず、一方的に従業員に制服の買い取りを強制することはできません。法律上も、労働者が負担する作業用品については、労働条件として明示しなければならないとされています(労働基準法施行規則第5条1項6号)。
ですので、労働契約を結ぶとき(採用のとき)に、制服の代金を従業員が負担することを説明されたかどうかが重要になります。
–今回のケースでは、バイトを始めた後にエプロンの代金を従業員が負担することを伝えられたようです。
そのような場合、エプロンの代金負担は労働条件になっていないとして支払いを拒める可能性があります。
また、エプロンの代金を給与から天引きすることについては、労働基準法は、社会保険料など法令で認められている場合や、労働協約がある場合などの例外を除いて給料からの天引きを禁じていますから(賃金全額払いの原則)、一方的に給料からエプロンの代金が天引きされた場合、それは違法になる可能性があります。
働き始めてから制服や備品を自己負担するように言われてしまった場合、最初にどのような説明を受けて、取り決めをしたかチェックするために、採用時に労働条件に関する書類はきちんともらって、保管しておきましょう。
【取材協力弁護士】金井 英人(かない・ひでひと)弁護士愛知県弁護士会所属。労働事件、家事事件、刑事事件など幅広く事件を扱う。現在はブラックバイト対策弁護団あいちに所属し、ワークルール教育や若者を中心とした労働・貧困問題に取り組んでいる。事務所名:弁護士法人名古屋法律事務所 みなと事務所事務所URL:http://www.nagoyalaw.com/

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