「『育休』休みではない」 取得した千葉・四街道市長が感じたこと

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育児休業を取得する男性は少しずつ増えているものの、まだ「取りづらい」との声も聞かれる。そんな中、千葉県四街道市の鈴木陽介市長(39)が2月中旬、生後6カ月の次男を世話するために5日間の育休を取得した。休業明けに毎日新聞のインタビューに応じた鈴木氏は「育休は成長できる機会だと実感した」と振り返り、「その成長が評価され、キャリアアップにつながる社会の実現を」と訴えた。【林帆南】
育休中に「学び直し」? 岸田首相に知ってほしいこと――歴代市長で初めて育休を取った。なぜ取得したのか。 ◆四街道市の男性職員の取得率は21・1%と低い。市長自ら率先して取ることで取得を促進したいという思いがあった。 また、四街道市は子育て世帯の転入により人口が増えている。「男性が育休を取るべきだ」と発信したかったし、私自身が子どもと向き合う家庭の目線も理解できると考えた。――長男と長女が生まれた県議時代に取得しなかったのはなぜか。 ◆時間的には取る余裕はあったが、実際には難しかった。政治家は固定給なので育休を取得しても収入が減ることがなく、取得したらイメージダウンにつながる可能性があると思った。県民の負託を受けている以上、有権者の視線は気にせざるを得ない。 今回の取得にあたっても悩んだ。「5日間では足りない」との声もいただいたが、市政を預かる者としてはそれが限度だ。――5日間を振り返って感じたことは。 ◆ママは大変だと。頼る存在が自分だけの中で、赤ちゃんというコントロールできない存在に真剣に向き合うわけで、「育休」といっても休みではなかった。世の中に誤解があるなら、「育休」という呼び方を変えた方が良いとすら思った。 一方で、達成感はすごくあった。生まれたばかりの次男の成長だけでなく、長女が初めてトイレトレーニングをうまくできた瞬間にも立ち会えた。医療的ケアが必要な長男についても、保育園の先生とゆっくり話し合う時間を持てた。5日間で「子育ては自分を育てること」と実感した。――望ましい育休のあり方についてどう考えるか。 ◆育休は自分が成長できる機会。だが、妻を見ていても、育休を通じて成長した人材がきちんとキャリアアップできていない。これは社会にとってもったいない。育休後にキャリアを形成できる社会になってほしい。 また、3歳とか5歳とか子どもの成長段階に応じて、少しずつ何回も育休を取れる制度になれば良い。千葉市が行っているように、四街道市でも対象となる職員と丁寧に面談を重ね、どうして取れないのかを聞き取り、男性が取りやすい環境を整えていきたい。育休取得率、自治体間で格差 県によると、2021年度の千葉市を除く県内53市町村の男性職員の育児休業取得率は25・3%だった。前年度から7・7ポイント増加し、県内の民間企業の男性社員(22・2%)の水準も上回った。ただ、女性職員(99・4%)と比べると4分の1にとどまっている。 53市町村の間でも取得率には大きな差がある。最も高かったのは成田市の63・8%。これに佐倉市(61・9%)や船橋市(54・2%)が続いた。この他、政令市として県の集計対象から外れている千葉市は83・2%と県内市町村で群を抜く取得率を達成している。 一方、育休の取得対象者となる男性職員がいたものの、取得者がゼロだった自治体が20市町村あった。富津市は13人、茂原市は12人の対象者がいながら、誰も取らなかった。県の男性職員も16・4%と市町村や民間企業の平均を下回る。 千葉市の育休取得率が高い背景には、独自の取り組みがある。子どもが生まれた男性職員は所属長と育休の取得を前提として面談し、計画書を作ることをルール化している。担当者は「取得を前提とすることで取りやすくなる」と説明する。 政府は25年度に男性の育休取得率を30%に引き上げることを目指している。県市町村課は「制度への理解が徐々に進みつつあるが、取得できていない職員もいる。自治体への働きかけを強化していきたい」としている。
――歴代市長で初めて育休を取った。なぜ取得したのか。
◆四街道市の男性職員の取得率は21・1%と低い。市長自ら率先して取ることで取得を促進したいという思いがあった。
また、四街道市は子育て世帯の転入により人口が増えている。「男性が育休を取るべきだ」と発信したかったし、私自身が子どもと向き合う家庭の目線も理解できると考えた。
――長男と長女が生まれた県議時代に取得しなかったのはなぜか。
◆時間的には取る余裕はあったが、実際には難しかった。政治家は固定給なので育休を取得しても収入が減ることがなく、取得したらイメージダウンにつながる可能性があると思った。県民の負託を受けている以上、有権者の視線は気にせざるを得ない。
今回の取得にあたっても悩んだ。「5日間では足りない」との声もいただいたが、市政を預かる者としてはそれが限度だ。
――5日間を振り返って感じたことは。
◆ママは大変だと。頼る存在が自分だけの中で、赤ちゃんというコントロールできない存在に真剣に向き合うわけで、「育休」といっても休みではなかった。世の中に誤解があるなら、「育休」という呼び方を変えた方が良いとすら思った。
一方で、達成感はすごくあった。生まれたばかりの次男の成長だけでなく、長女が初めてトイレトレーニングをうまくできた瞬間にも立ち会えた。医療的ケアが必要な長男についても、保育園の先生とゆっくり話し合う時間を持てた。5日間で「子育ては自分を育てること」と実感した。
――望ましい育休のあり方についてどう考えるか。
◆育休は自分が成長できる機会。だが、妻を見ていても、育休を通じて成長した人材がきちんとキャリアアップできていない。これは社会にとってもったいない。育休後にキャリアを形成できる社会になってほしい。
また、3歳とか5歳とか子どもの成長段階に応じて、少しずつ何回も育休を取れる制度になれば良い。千葉市が行っているように、四街道市でも対象となる職員と丁寧に面談を重ね、どうして取れないのかを聞き取り、男性が取りやすい環境を整えていきたい。
育休取得率、自治体間で格差
県によると、2021年度の千葉市を除く県内53市町村の男性職員の育児休業取得率は25・3%だった。前年度から7・7ポイント増加し、県内の民間企業の男性社員(22・2%)の水準も上回った。ただ、女性職員(99・4%)と比べると4分の1にとどまっている。
53市町村の間でも取得率には大きな差がある。最も高かったのは成田市の63・8%。これに佐倉市(61・9%)や船橋市(54・2%)が続いた。この他、政令市として県の集計対象から外れている千葉市は83・2%と県内市町村で群を抜く取得率を達成している。
一方、育休の取得対象者となる男性職員がいたものの、取得者がゼロだった自治体が20市町村あった。富津市は13人、茂原市は12人の対象者がいながら、誰も取らなかった。県の男性職員も16・4%と市町村や民間企業の平均を下回る。
千葉市の育休取得率が高い背景には、独自の取り組みがある。子どもが生まれた男性職員は所属長と育休の取得を前提として面談し、計画書を作ることをルール化している。担当者は「取得を前提とすることで取りやすくなる」と説明する。
政府は25年度に男性の育休取得率を30%に引き上げることを目指している。県市町村課は「制度への理解が徐々に進みつつあるが、取得できていない職員もいる。自治体への働きかけを強化していきたい」としている。

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