長時間労働、飲みニケーション…オッサン文化が日本をダメにする。筋金入りのオッサンを変えるには?

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「日本の生産性が低いのは、オッサン文化が根強いから」
こう語るのは、ソフトウェア開発会社「サイボウズ」の青野慶久社長だ。青野さんは2021年の衆議院選挙で、選択的夫婦別姓に反対する議員を落選させようと「ヤシノミ作戦」を展開した。なぜオッサン文化が日本をダメにするのか?青野さんに直撃した。

まず青野さんはオッサン文化の定義を、自身のSNSでこう語っている。
「長時間労働と飲みニケーション。ITを使えず、いまだに紙とハンコ。テレワークはやらせない。アナログな根回しとヨイショで出世。大事なことは密室で決めるけど、決めた理由はよくわからない。女性や若者は非正規雇用にして搾取する。パワハラ・セクハラで若手のモチベーションを下げまくる」(青野さんのnoteより)

そして青野さんは「オッサン文化とは、考え方が古いままアップデートできない男性にとっては都合がいい文化で、オッサン文化に属していない若い男性や女性、セクシャルマイノリティなどの活躍を阻害する文化」だという。そこで青野さんに聞いてみた。

――オッサン文化がよくないと言われると、中高年の男性が怒りそうですが。
青野氏:
よく間違えられますが、オッサンが悪いわけではなくて、オッサン文化がよくないのです。オッサンは中高年の男性を指しますが、オッサン文化はこの男性に権限が集中している状態を言うのです。オッサン文化はジェンダー問題であると同時に、ジェネレーション問題でもあります。例えばいま若い男性に「子どもが生まれたとき育休を取りたいですか」と聞くと「取りたい」が多数派です。若い人たちは男性も女性もオッサンとは考え方が変わってきていますね。
――青野さんはオッサン文化が日本の経済成長を阻害していると考えていますね。
青野氏:
女性や若い人たちの意見が反映されないので、当然ですが多様なニーズに応えられないし、時代の変化についていけません。一番分かりやすい例を言うと、日本経済が“失われた30年”になったのは、新しく出現したデジタル産業に対応できなかったことが要因でした。また、少子化が止まらない原因は、権限を持っているオッサンが、「なぜ若い人が子どもをつくらないのか」わからないからなんですよね。

――少子化で働き手が不足して社会の活力が減り、地方は衰退する。いいことないですね。
青野氏:
当たり前ですけど、世界のどこに行っても男性と女性は半分半分で、男性に偏った時点で半分は活躍できないわけですし、さらに若い人が活躍できないとなると3/4が活躍できない状態になります。それで強い経済をつくろうと思っても無理ですよね。

――さすがに日本社会もジェンダーギャップ解消に向けた動きが出始めましたね。
青野氏:
なぜ自分たちが変わらなければならないのか、少しずつ理解し始めましたね。ジェンダーギャップ指数をみると日本がダメなのは政治と経済です。僕から見ると経済のほうが速く動き始めていますが、それはなぜかというとグローバル企業に競争で負け続けて、さすがに経営者も変わらなければならないと思い始めたからですね。

――政治の動きはどうご覧になっていますか?
青野氏:
政治は動きが遅いですね。いわば“外資が入ってこない閉ざされた市場”なので、どんなに負けても維持できますから。やはり国民が「とりあえずあのオッサンに投票しておこう」という投票行動を変えない限り政治は変わりません。年齢が高い政治家が悪いわけではありませんが、今のようにジェンダーやジェネレーションが偏った状態を受け入れてしまっている限り、この国が変化するのは難しいでしょうね。
――青野さんは前回の衆院選で「ヤシノミ作戦」をやりましたね。
青野氏:
今年の地方統一選でも「またヤシノミ作戦をやってほしい」という要望を頂くので、できる限りやろうかなと思っています。統一地方選は国民が「変わりたいのか?」と試されている気がします。権限にしがみつく政治家は多いので、落選させて交代しないと日本は変わらないと思います。もし権限移譲がダメだったら、情報の透明化ですね。密室の中の話を透明化すれば、オッサン文化から抜け出す動きが加速すると思います。

――企業がアップデートするにはどうすればいいと思いますか?
青野氏:
いま権限を持っている人たちが既得権を委譲する。女性の管理職をどんどん増やして、年功序列をやめていくことが一番速いと思います。サイボウズでは女性や若い人、外国人など多様な人がチームで働ける環境作りをしてきました。僕らはこれを“100人100通りの働き方”と呼びます。また、社内情報の透明化を徹底的にやっていて、取締役会だろうが事業戦略会議だろうが、従業員であれば誰でもリアルタイムに視聴可能にしています。また、情報がオープンになるだけではダメで、忖度なく意見をする、言わないことはよくないという企業文化をつくってきました。

――そうした文化はどうやったら企業に根付くのでしょうか?
青野氏:
言った人に被害が及ばない、言ってくれてありがとうという状態をつくることだと思います。例えば社長を批判した人を密室に連れ込んで「お前、なんてこと言うんだ」というのはダメです。「社長、おかしいと思います」という声が出たらオープンな場で議論する。例えば僕が去年ツイッターである議員を実名で批判したら、「青野のツイッターに物申す会」が開催されて社員76名に糾弾されました(笑)。しかもそれを実況中継して全社員が見られるようにした。こうした状態をつくることが大事です。

――とはいえ、自分がパワハラをしていることにさえ無自覚な、筋金入りのオッサンを変えるにはどうすればいいんでしょう?
青野氏:
お勧めはその人の下でもう働かないことですね。いま日本の企業で大問題になっているのは、人材を採用できない、採用しても定着しないということです。ですから社員がどんどん離れていけば経営者も変わらざるをえなくなる。それが僕は大事だと思います。“失われた30年”の理由の1つは「終身雇用」という考え方です。1社に入って長く勤める文化が、企業の変化を遅らせました。人生100年時代を考えると転職、副業や兼業をするスキルの方が大事ですね。
――変わらないオッサンたちは、せめて邪魔をするなと言いたいですね。
青野氏:
そうですね。そこはどんどん声を上げていったほうがいいと思います。
ーーありがとうございました。
【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】

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