109人に所得税の不正還付指南、36歳会社代表を告発…「ライン」で若者勧誘

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会社員ら男女109人に所得税の不正還付を指南したとして、東京国税局がウェブサイト企画運営会社「プルスウルトラ」(東京都北区)の古関陽介代表(36)を所得税法違反容疑で東京地検に告発したことがわかった。
架空の事業で赤字が出たとする虚偽の確定申告書を税務署に提出させ、計約4300万円の不正な還付申告を行わせていたという。
会社員など給与所得者の所得税は、勤務先の会社などが源泉徴収して国に納めている。事業所得や不動産所得などの赤字がある場合は、給与所得から差し引くことができ、確定申告することで納めすぎた所得税の還付を受けられる。
関係者によると、古関代表はこの仕組みを悪用し、全国の会社員ら109人に対し、マルチ商法で赤字が出たなどとする虚偽の確定申告書を税務署に提出させる手口を指南。2021年までの7年間に事業の赤字が計約7億2900万円あったとして、所得税計約4300万円の不正な還付申告を行わせた疑い。
古関代表は19年9月、仲間数人と一緒に確定申告書の作成代行を始め、通信アプリ「ライン」などで、「会社員が受け取れる還付金がある」などとうたって勧誘していた。109人のうち約7割は20~30歳代の若者だったという。
古関代表らは、会社員らから提供を受けた源泉徴収票などの情報をもとに虚偽の確定申告書を作成。会社員らはこの申告書を印刷し、税務署に提出していた。所得税の還付申告は過去5年分遡って申告することができ、古関代表らは1年分につき5万円の手数料を受け取っていたという。
古関代表らは109人以外にも指南していたとみられ、東京国税局の査察(強制調査)が入った昨年11月までの約3年間に受け取った手数料は計約5000万円に上ったとみられる。約半分が古関代表の取り分で、遊興費や投資などに充てられていたという。
109人は1人あたりの還付額が多額ではないため告発は見送られるとみられるが、還付金を返還の上、重加算税などを課される見通しだ。
読売新聞は古関代表に文書で取材を申し込んだが、回答はなかった。
国税庁によると、昨年6月までの1年間に、所得税の不正還付による追徴は191件(前年比9件増)あり、追徴額は2億711万円(同8309万円増)に上った。若者がSNSで指南役とつながり、安易に不正に手を染めるケースが目立ち、国税当局は税務調査を強化している。

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