岩手医大病院。母体保護法の要件を十分確認しないまま不妊手術を実施した疑いがある=岩手県矢巾町
岩手医大病院で2003年11月に行われた精神疾患がある男性の不妊手術を巡り、病院側が母体保護法の要件を十分確認しないまま実施に至った疑いがあることが31日、分かった。精神疾患が理由の不妊手術はできないが、男性の求めで開示された内部文書には要件に照らして検討した形跡がなかった。手術に関わった複数の医師が取材に、要件を知らなかったと認めた。
男性は岩手県の片方司さん=23年に72歳で死去。精神障害を理由に手術を事実上強制されたとして20年に日弁連に人権救済を申し立てていた。今回明らかになった文書で、本人が本来望まず、要件に当てはまらない手術に臨んだ病院側の対応が改めて問われそうだ。
同病院は「診療情報については、患者や遺族の同意が得られていない以上、回答しかねる」とした。
救済申立書などによると、片方さんは10代で統合失調症になり、入退院を繰り返した。2003年当時は岩手県内の別の病院に入院し、親族が退院の条件として手術を求めたとされる。