大浴場の湯入れ替え「盆と正月のみでいい」、大丸別荘社長が自ら指示…「塩素臭嫌いだった」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

福岡県筑紫野市の老舗旅館「二日市温泉・大丸別荘」が大浴場の湯を年2回しか入れ替えていなかった問題で、旅館の山田真社長(70)が28日、福岡市博多区の福岡商工会議所で記者会見し、社長自らが従業員に対し、湯の入れ替えをしないよう指示していたことを明らかにした。
「利用者の皆さまを裏切るような行為で大変申し訳ない」と謝罪した。
山田社長によると、指示をしていたのは2019年12月頃。利用客が少ないことを理由に「盆と正月の湯の入れ替えのみでいい」と話したという。
福岡県の調査では、基準値の最大約3700倍のレジオネラ属菌が検出された。山田社長は「レジオネラ菌を甘く見ており、大した菌ではないという認識があった。どこにでもいるという軽い気持ちだった」と説明。そのうえで、「1分間に70リットルの湯を浴槽に入れており、水質はいいだろうと思っていた」と釈明した。
消毒用塩素の投入を怠ったことについては「塩素のにおいが自分の体質に合わず嫌いだった」と述べ、塩素の必要性を感じていなかったという。「入れたければちょこっと入れればいい」と従業員に指示していた。ただ、県に報告するための自主検査の時には、投入していたという。
その後、新型コロナウイルスの感染が拡大し、客が減少したことで、「(対応は)一層ルーズになった。法令順守の思いがあまりに低かった」と述べた。従業員の中には、適切に対応するよう求めた人もいたが、「そんなことをしなくても、うちは大丈夫だという間違った確信があった。自身も毎日風呂に入っていたが、何も感じなかった」とも語った。
山田社長は、事態が収束した際に、退任するとの考えを示した。
同旅館は、公衆浴場法に基づく県条例に違反して、週1回以上行う必要がある大浴場の湯を年に2回しか入れ替えていなかった。県の調査にも虚偽の説明をしていた。少なくとも19年以降、違反状態だったとみられ、県は昨年、行政指導を行った。同旅館は、衛生管理を改善し、現在は営業を再開している。
旅館は江戸時代の1865年(慶応元年)創業。二日市温泉の中でも老舗旅館として知られ、昭和天皇が宿泊されたこともある。コロナ禍前の旅館利用者は、年間約2万5000人。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。