児童相談所、配置人員が国基準に届かない自治体も 人材の奪い合いに

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神奈川県厚木市で昨年7月に車内で当時2歳と1歳のきょうだいが放置され、熱中症で死亡した事件では、県の児童相談所が母親のネグレクト(育児放棄)が疑われるとして県警から通告を受けながらも迅速に対応せず、現場で手が回らない状況が浮き彫りとなった。
県や川崎市などでは児相の配置人員が国の基準に届いておらず人手不足が課題となっているが、児童虐待への対応件数が全国的に増加傾向にある中で自治体間では人材の奪い合いが激しさを増しているとされる。
「事件前にも長男を駐車場に一時置き去りにしたとして児相に通報があった」。28日、横浜地裁小田原支部で開かれた長沢麗奈被告(22)の初公判で、検察側はこう指摘した。
事件3週間前の昨年7月8日、寒川町の商業施設の駐車場で長男を車内に一時置き去りにし、警察官が駆けつける事態となった。長沢被告は「二度としない」とする上申書を県警側に提出。県の児相は14日に県警から通告を受けていたが、他に緊急性が高い案件があったなどとして、長沢被告に連絡を試みたのは事件当日だった。
県内で児相を設置しているのは、県のほか横浜、川崎、相模原の3政令指定市と横須賀市。国は各設置自治体ごとに人口や前年度の対応件数などに応じて、社会福祉士の国家資格を持つ「児童福祉司」、教育学や心理学に関する専門知識がある「児童心理司」の配置人員数の基準を設けているが、対応件数が多い県、横浜市、川崎市が基準に届いていない。
保護者、子供双方への対応が求められる児相の業務は「福祉職の中でも難易度が高い」(相模原市幹部)。全国的に虐待件数が増加する中で人材の奪い合いが起きているとされ、人手が不足する自治体の担当者たちは「対応件数が高止まりし、採用が追いつかない」などと口をそろえる。
現場で対応するための知識などの習得には長期間の実務経験が必要として、新卒の配置を人事上、避けている県内自治体がある。また、児童福祉司は社会福祉士の有資格者であるため、生活保護、高齢者支援を担う他の部署に配属されるケースもあるという。
人手不足を解消するために人員増強を打ち出してきた政府は昨年12月、児童福祉司を令和6年度までに約1000人、児童心理司を8年度までに950人ほど増やす新たなプランを決定。その一方で東京で児相増設の動きが出ており、県内の児相関係者からは人材確保がさらに難しくなることを懸念する声があがる。
ある担当者は「国が人員数を引き上げるというのであれば、人を確保できるようにする具体的な手立ても合わせて考えていただきたい」と不満を漏らす。(橋本愛、高木克聡)

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