「混んでいても座れない」路線バスの最前席 コロナ対策で封鎖も…これからどうなる?

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2023年3月13日からマスクの着用が個人の判断に委ねられるようになるなど、新型コロナウイルスをめぐる状況が大きく変わろうとしている。路線バスの運行会社の中には、感染対策のためバスの一番前の席を封鎖しているところもあり、路線によっては立客が出るほどの混雑時であっても席に座れない状況も発生している。「最前席封鎖」をめぐる各社の今後の対応は。
東京23区東部のJR錦糸町駅(墨田区)と門前仲町駅(江東区)を結ぶ、都バスの都07系統。江東区内の「鉄道空白地帯」を縦断し、16~20年度にかけて5年連続で都バス全路線の中で最多の乗車人員(一日あたり)を記録するなど、屈指の混雑路線だ。
23年2月下旬、夕方の帰宅時間帯に記者が途中の西大島駅前バス停を訪れると、バスを待つ人で長い列ができていた。バスに乗り込むと、車両の一番前から後ろまで立客で埋まるほどの込み具合。しかし、運転席後ろの座席は感染対策のため紐で塞がれ、座ることはできなかった。
新型コロナウイルスが流行し始めた20年春以降、路線バス各社は感染対策のため、最前席の封鎖などを実施してきた。その根拠とされたのが、バス事業者による業界団体・日本バス協会が定めた「バスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」だ。
ガイドラインでは、20年5月14日に定められた第1版から「利用状況を踏まえ、バス車内の一部の座席の使用を禁止することや続行便を運行すること等により、乗客と乗務員や乗客同士の間隔を空け、乗客と乗務員が安心できる車内環境を確保するよう努める」と記載されてきた。
それでも、同年7月21日改訂の第4版からは「乗客と乗務員の飛沫感染を防止する対策がとられている場合は除く」と追記され、22年12月1日改訂の第7版では追記含む文言自体が削除されるなど、感染対策としての座席封鎖は、ガイドライン上では解除の方向性に進んでいった。
ただ、コロナが流行してから比較的早い段階で解除に踏み切った事業者がいる一方で、都バスのように封鎖を継続している例もあり、事業者によって対応はまちまちだ。
京成バス(千葉県市川市)は22年いっぱいまで運転席後方の座席を封鎖してきたが、23年1月1日から封鎖を解除した。同社の広報担当者は2月17日の取材に、解除は昨年12月のバス協会ガイドライン改訂を受けた対応だったと説明する。
政府は2月10日、マスク着用を3月13日から屋内・屋外を問わず個人の判断に委ねる方針を決めた。ただ、混雑するバスや電車などでは、マスクの着用を推奨する方針だ。また、5月8日からは、新型コロナウイルスの感染法上の位置付けが、季節性インフルエンザなどと同じ5類に引き下げられる。
コロナをめぐる事情が変わる中、現時点(2月17日時点)で最前席を封鎖している会社は、今後も封鎖を継続するのか、それとも解除するのか。
都バスでは運転席後方の座席と、左側の最前席を封鎖してきたが、運行する東京都交通局自動車営業課の担当者は17日、取材に対し「今後については現在調整中」と説明する。
運転手の後方座席を封鎖してきたバス会社では、京浜急行バス(横浜市)の広報担当者は「今後については検討中」とし、今後の感染状況について様子を見たいとした。同様に、神奈川中央交通(平塚市)の広報担当者も20日、「今後の国内の感染状況や業界の動向等も注視しながら検討してまいります」と説明した。

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