岸田総理発言で議論に 海外のアジア人差別、なぜ起こる? 当事者に聞いた発信の大事さ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

連日続くLGBT、性的少数者への理解を促進する法案の議論。そんな中、岸田総理の“ある発言”が話題になった。
【映像】赤い蝶ネクタイが可愛い!“握手”拒否された幼少期の岸田総理(画像あり) 「私自身もニューヨークにおいて小学校時代、マイノリティとして過ごした経験がある」と語った岸田総理。著書『岸田ビジョン』によると、幼少期、授業で白人の同級生から手をつなぐことを拒否され、すぐに差別されていることに気づいたという。そして、これが多様性を重んじるきっかけの一つとなったとしている。

Twitterでも「自転車を壊されたり、バスで後ろからいきなり蹴られたり、トイレの使用を断られた」「黒人差別はダメだが、アジア人なら大丈夫という風潮を感じた」「アジア人差別はアメリカより西ヨーロッパの方が強烈」といった声が見られる。 なぜ日本人やアジア人は差別されるのか。その解決策はあるのか。ニュース番組『ABEMA Prime』では専門家、当事者とともに考えた。 フロリダ州在住のデジタルクリエイター・はるきさんは、アジア人差別について感じたことを動画で発信している。過去にどのような経験したのだろうか。「アップステート・ニューヨークの大学に通っていて課題を提出するとき、僕の順番が来たら『病気になりたくないから行け』と教授から言われた。周りはみんな白人だった。アジア人イコール、コロナという風潮がすごくあった」 教授は70~80歳くらいで、後に大学から追放される形になったという。「教授も人種差別の真ん中で生きてきた人だからこそ、そういう発言や行動に至ったのかなと思う。暴力も暴言も本当に氷山の一角だけでしかない。根強い人種差別は『白人たちが上に立っている』という考えだ。自分の人種を下げて、他の人種を上げる。知らないうちに自分たちも差別をしている。メディアの報道の仕方ももちろんあると思うが、白人を拝むような考え方は見直していく必要がある」 また、新型コロナの感染拡大が続いた時期は「アジア人に対しての差別が本当にひどかった」と明かす。「ニューヨークにいたとき、僕は男性なので自分の身を守れる部分はある。ただ、アジア人の女の子の友達は『夜に一人で地下鉄へ行くのは絶対に無理』と言っていた。唾をかけられた友達もいたし、僕も恐怖を感じていたから、ほとんど外を歩かないようにしていた。外に出るときはできるだけ電動で走るスケートボードに乗って、周りの人と同じスピードにならないようにしていた」 はるきさんによると「アメリカの差別は大きく4つに分けられる」という。「マイクロアグレッション(小さな攻撃性)、カラリズム(肌の色の濃さへの差別)、インターナライズド・レイシズム(自分自身や他の女性に対して無意識のうちに女性が行ってしまう性差別)、システミック・レイシズム(制度的人種差別)の4つだ。その中でも、マイクロアグレッションは本当に日頃からよくある。先日も妻とフロリダ州のアパートメントを探していたとき、向こうで名乗ると『That’s interesting(面白いね)』と言われた。直接的な差別には見えないかもしれないが、向こうに『うん?』という感情があるように、結局そういう考えが無意識・意識問わず存在するから、行動や発言に出てしまう」 「白人の人たちが全員悪いわけではない。いい人もたくさんいる。そこは忘れないでいただきたいと思う」と話すはるきさん。一方で、人種ボーダーレスを表現するモデル・分筆家のシャララジマは「小中学校のときに、日本で差別をされた経験はあまりない」と明かす。「ただ『黒い』と言われることはすごくあった。黒いと言われて『うん?』と思った。『白い』は良いのに、黒いと言ったらダメなのか。私が『うん?』と思ってしまうことは、その人の『黒い=悪い』と思っている感覚を共有することになる。それはダメだと思った。黒いというワードに反応したら、それに乗ることになると思って、心にしまった」 海外で初めてロンドンに行った際にも、思わぬ出来事があったという。「私とパートナーでロンドンのバスに乗ったら、2階の奥に不良の若者たちが溜まっていた。私たちを見ても、最初は何も反応しなかった。近くに座って、私とパートナーが日本語で話し始めたら、急に後ろから『ありがとうございまーす』『ニーハオ』とからかい始めた。見た目では反応しなかったのに、言語が違うと知った瞬間、急に差別が始まった。海外では、どんなポイントでも違いを見つけてしまうと、どんな小さいことでも揚げ足を取る」 アメリカ滞在中に差別を経験し、人種差別に詳しい歴史学者の廣部泉氏(明治大学教授)は「構造的な問題だ」と指摘する。「近代、西ヨーロッパが世界を支配するようになって『白い方が美しくて、黒が対極にある』という考え方が出てきた。もし他の国が世界を支配していたら、その国の肌の色が『いい色』になっていたかもしれない。非常に人為的に作られたものだ」 コロナ禍以降、アジア人に対するヘイトクライムが激増している。憎悪はどこから発生しているのか。 廣部氏は「コロナ禍になって突然不況がきて、職を失い、給料も減った。行動制限もかけられて不満が溜まっている。そのウイルスが中国起源とされたことが一番大きい」と話す。「こういった差別はコロナ禍で発生したものではない。100年以上前にすでにあったものだ。例えば、1900年のサンフランシスコで伝染病患者が発見されたとき、市当局は検査の結果も待たずに『中国人が悪い』といって、チャイナタウンを閉鎖した。でも『白人は出てきてもいい』という恣意的な閉鎖だった。当時からアジア人と疫病を結びつける考えは、根強くアメリカ社会にある。それがまた吹き出したと思っている」 廣部氏は「報道のされ方の影響はものすごく大きい」とした上で、「特に小さいお子さんが見るもので教育していかないと、なかなか解決は難しい」と述べる。 世界から人種差別をなくすためには、どうすればいいのか。廣部氏は「発信する、連帯する、共感するの3つが大事だ」と話す。「違和感があることをされたときに『私はこう思っている』『私は悲しい』と、ちゃんと発信すべき。日本人の場合、語学の問題もあって、ついニヤニヤ笑って済ませてしまうこともあるが、たどたどしくてもいいから何か発信することが大事。それからアジア人が差別されているときだけ注目するのではなく、例えば黒人が差別されているときも一緒に共感を持って連帯することが大事だ。アメリカでアジアンヘイトが起きているとき、我々は日本でテレビで見ていて『アメリカの人は大変だね』と思うだけでなく、少しは自分ごととしてみてほしい。そういう姿勢を持つことがすごく大切だ」(「ABEMA Prime」より)
「私自身もニューヨークにおいて小学校時代、マイノリティとして過ごした経験がある」と語った岸田総理。著書『岸田ビジョン』によると、幼少期、授業で白人の同級生から手をつなぐことを拒否され、すぐに差別されていることに気づいたという。そして、これが多様性を重んじるきっかけの一つとなったとしている。
Twitterでも「自転車を壊されたり、バスで後ろからいきなり蹴られたり、トイレの使用を断られた」「黒人差別はダメだが、アジア人なら大丈夫という風潮を感じた」「アジア人差別はアメリカより西ヨーロッパの方が強烈」といった声が見られる。
なぜ日本人やアジア人は差別されるのか。その解決策はあるのか。ニュース番組『ABEMA Prime』では専門家、当事者とともに考えた。
フロリダ州在住のデジタルクリエイター・はるきさんは、アジア人差別について感じたことを動画で発信している。過去にどのような経験したのだろうか。
「アップステート・ニューヨークの大学に通っていて課題を提出するとき、僕の順番が来たら『病気になりたくないから行け』と教授から言われた。周りはみんな白人だった。アジア人イコール、コロナという風潮がすごくあった」
教授は70~80歳くらいで、後に大学から追放される形になったという。
「教授も人種差別の真ん中で生きてきた人だからこそ、そういう発言や行動に至ったのかなと思う。暴力も暴言も本当に氷山の一角だけでしかない。根強い人種差別は『白人たちが上に立っている』という考えだ。自分の人種を下げて、他の人種を上げる。知らないうちに自分たちも差別をしている。メディアの報道の仕方ももちろんあると思うが、白人を拝むような考え方は見直していく必要がある」
また、新型コロナの感染拡大が続いた時期は「アジア人に対しての差別が本当にひどかった」と明かす。
「ニューヨークにいたとき、僕は男性なので自分の身を守れる部分はある。ただ、アジア人の女の子の友達は『夜に一人で地下鉄へ行くのは絶対に無理』と言っていた。唾をかけられた友達もいたし、僕も恐怖を感じていたから、ほとんど外を歩かないようにしていた。外に出るときはできるだけ電動で走るスケートボードに乗って、周りの人と同じスピードにならないようにしていた」
はるきさんによると「アメリカの差別は大きく4つに分けられる」という。
「マイクロアグレッション(小さな攻撃性)、カラリズム(肌の色の濃さへの差別)、インターナライズド・レイシズム(自分自身や他の女性に対して無意識のうちに女性が行ってしまう性差別)、システミック・レイシズム(制度的人種差別)の4つだ。その中でも、マイクロアグレッションは本当に日頃からよくある。先日も妻とフロリダ州のアパートメントを探していたとき、向こうで名乗ると『That’s interesting(面白いね)』と言われた。直接的な差別には見えないかもしれないが、向こうに『うん?』という感情があるように、結局そういう考えが無意識・意識問わず存在するから、行動や発言に出てしまう」
「白人の人たちが全員悪いわけではない。いい人もたくさんいる。そこは忘れないでいただきたいと思う」と話すはるきさん。一方で、人種ボーダーレスを表現するモデル・分筆家のシャララジマは「小中学校のときに、日本で差別をされた経験はあまりない」と明かす。
「ただ『黒い』と言われることはすごくあった。黒いと言われて『うん?』と思った。『白い』は良いのに、黒いと言ったらダメなのか。私が『うん?』と思ってしまうことは、その人の『黒い=悪い』と思っている感覚を共有することになる。それはダメだと思った。黒いというワードに反応したら、それに乗ることになると思って、心にしまった」
海外で初めてロンドンに行った際にも、思わぬ出来事があったという。
「私とパートナーでロンドンのバスに乗ったら、2階の奥に不良の若者たちが溜まっていた。私たちを見ても、最初は何も反応しなかった。近くに座って、私とパートナーが日本語で話し始めたら、急に後ろから『ありがとうございまーす』『ニーハオ』とからかい始めた。見た目では反応しなかったのに、言語が違うと知った瞬間、急に差別が始まった。海外では、どんなポイントでも違いを見つけてしまうと、どんな小さいことでも揚げ足を取る」
アメリカ滞在中に差別を経験し、人種差別に詳しい歴史学者の廣部泉氏(明治大学教授)は「構造的な問題だ」と指摘する。
「近代、西ヨーロッパが世界を支配するようになって『白い方が美しくて、黒が対極にある』という考え方が出てきた。もし他の国が世界を支配していたら、その国の肌の色が『いい色』になっていたかもしれない。非常に人為的に作られたものだ」
コロナ禍以降、アジア人に対するヘイトクライムが激増している。憎悪はどこから発生しているのか。
廣部氏は「コロナ禍になって突然不況がきて、職を失い、給料も減った。行動制限もかけられて不満が溜まっている。そのウイルスが中国起源とされたことが一番大きい」と話す。
「こういった差別はコロナ禍で発生したものではない。100年以上前にすでにあったものだ。例えば、1900年のサンフランシスコで伝染病患者が発見されたとき、市当局は検査の結果も待たずに『中国人が悪い』といって、チャイナタウンを閉鎖した。でも『白人は出てきてもいい』という恣意的な閉鎖だった。当時からアジア人と疫病を結びつける考えは、根強くアメリカ社会にある。それがまた吹き出したと思っている」
廣部氏は「報道のされ方の影響はものすごく大きい」とした上で、「特に小さいお子さんが見るもので教育していかないと、なかなか解決は難しい」と述べる。
世界から人種差別をなくすためには、どうすればいいのか。廣部氏は「発信する、連帯する、共感するの3つが大事だ」と話す。
「違和感があることをされたときに『私はこう思っている』『私は悲しい』と、ちゃんと発信すべき。日本人の場合、語学の問題もあって、ついニヤニヤ笑って済ませてしまうこともあるが、たどたどしくてもいいから何か発信することが大事。それからアジア人が差別されているときだけ注目するのではなく、例えば黒人が差別されているときも一緒に共感を持って連帯することが大事だ。アメリカでアジアンヘイトが起きているとき、我々は日本でテレビで見ていて『アメリカの人は大変だね』と思うだけでなく、少しは自分ごととしてみてほしい。そういう姿勢を持つことがすごく大切だ」
(「ABEMA Prime」より)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。