コンビニ店員が「年配客の詐欺被害」を未然に防げた4つの違和感

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筆者はコンビニで長く働いてきた。辞めていた時期もあるが、現在はライター業の傍ら、知り合いの店長に「人手不足」を理由に頼まれ、空いた時間に手伝う生活をしている。 もう何年も前から店舗に対して“ある通達”が警察や本部からきている。それはコンビニ内での「詐欺犯罪」についてだ。たとえば「振り込め詐欺」。携帯で通話しながらATMでお金を振り込む人や、ここ最近では高額のプリペイドカードを購入する人などは、「不審に思ったら声掛けをしろ」というもの。コンビニ店員が詐欺被害を未然に防止して感謝状をもらったなどというニュースも時折見られる。
実際に筆者も「詐欺被害にあいそうになっている客」に遭遇したことがある。
◆電話しながらATMを操作する客は気になる
警視庁によれば、オレオレ詐欺や振り込め詐欺が目立つようになったのは平成15年(2003年)以降とのことだが、流行り始めた頃から警察や本部からは注意するように言われていた。「面倒で大変だね」と思われるかもしれないが、そのような場面に出くわすことはほとんどないので、普段はすっかり忘れている。
とはいえ、何度もATMで振り込みをしているような客や、電話をしながらATMを使っている年配の客は気になるものだし、筆者も高額のプリペイドカードを購入する年配の客に「失礼ですが、これは何に使用するのですか?」とたずねることがある。
結局、普通の買い物なのだが、相手が気を悪くする可能性もあるので「ごめんなさいね、警察からうるさく言われるので声をかけさせてもらってます」と付け加えている。 ◆深夜の不審な行動 コンビニ店員が詐欺被害を防いだという報道は年間でそこまで多くはないものの、実際はけっこうあるのかもしれない。
ちょうど1年前ぐらいに、筆者も世間に褒められてもいいんじゃないかということをやった。
時刻は夜21時過ぎ。そのときは、けっこう暇だった。普段この時間帯の客層は、仕事帰りの会社員や、近所の若者が多い。
そこに、いきなり年配の女性客がプリペイドカードの台紙を手に持ちながら「これと同じカードを買いたいのだけど、どこにあるのかしら?」と聞いてきたのだ。
筆者は違和感を覚えた。
この時間帯に年配の女性が、わざわざプリペイドカードを購入しに来るのは珍しい。それになんだか急いでいるようだ。通常、このようなカードは「1000円」とか「1500円」とか「5万円」とか、具体的に金額が記載されているタイプと、「1500円~5万円」とか書かれているタイプがある。
後者の場合、客の方から「2500円でお願いします」などと、欲しい金額を店員に伝える。しかしながら、中には何も言わない客もいるので「いくらでしょうか?」とたずねることもある。
この年配女性は、「1500円~5万円」のカードを持ってきた。そして、1万円札を5枚出してきた。だが、きちんと金額を確認しないといけないので「いくらでしょうか?」と聞く。
「え、5万円って書かれているから5万円でしょう?」「このタイプのカードは金額を言ってもらわないと」「あら、そうなの?」
これは、“完全に怪しい”と思った。
◆4つの違和感「もしかして詐欺?」
彼女が詐欺被害にあいそうになっていると思ったのは、以下の4つの点だ。
’配の人が夜21時にプリペイドカードのみを買いにくる。近所に住んでいるようだが、見たことがない人。プリペイドカードの購入方法をわかっていない。ぞし前にどこかで買ったと思われるプリペイドカードの台紙(カード自体はない)。
不審な点が多いので筆者がたずねる。

「それ、払ったらダメです。ここでは売りません」
店長は別のレジで接客中だったが、会話が聞こえたのか「それは詐欺ですよ。間違いないです!」と大声で言う。
◆パニックになる女性客
年配女性はワケがわからないという表情でパニックになっている。後ろには二人の客が待っていたが、もはや同情の目で見ていた。
「本当なの? ウイルスが入って画面に表示されている所に慌てて電話したらお金を払えと。この前も5万円を払ってしまったわ」「その5万円は戻らないかもしれませんが、もう払わないでください。そして交番にすぐ行って相談してください」
筆者がそう言うと、女性は店を出ていってしまった。店長は「まだこんなことで騙される人がいるのか」と嘆いているが、このような被害はいまだに絶えないのだ。
◆後日談「まさか自分が騙されるとは」 約1週間後、その年配女性が再び来店した。
「この前、助けてくれた人ですね? やはり詐欺でした。本当にありがとうございました」
最初に筆者から「詐欺ではないか?」と聞かされたときは、「まさか自分が騙されるとは思わず、とにかくショックだった」そう。交番に駆け込んで顛末を話すと、警官からも注意を受けたようだ。
女性の話によれば、詐欺業者に電話したのち、他のコンビニでプリペイドカードを購入。そして、カード番号を相手に伝えてしまったという。
「あそこのコンビニの人は、なんで注意してくれなかったのかしらね。年寄りがパニックになっているのに」
◆コンビニ店員として誇らしい気持ちに
騙される方も悪いと思うが、たしかに、そこのコンビニ店員もなぜ気づかなかったのだろうか。人手不足の時期や忙しい時間帯は、そこまで注視してはいられないという事情もわかるが、明らかに彼女の場合は挙動がおかしいのだから。犯人もカモだと思ったのだろうか。
「とにかく、未然に被害が防げて良かったですよ。でもその前に盗られた5万円は戻ってきませんよね?」
そう聞くと、意外な答えが返ってくる。
「それが全部戻ってくるみたいなのよ」「え!」 一般的にはプリペイドカード詐欺の返金は難しいとされているが、幸いこの女性が損することはなかったらしい。後日、本部や店のスタッフたちに褒められて筆者は嬉しい気持ちになった。
<取材・文/浜カツトシ>
※「プリペイドカードを購入し、番号を教えろ」など、少しでも不審な点を感じたら消費生活相談窓口などにご相談ください。
【消費者ホットライン】188(局番なし)
【平日バックアップ相談】03-3446-1623 ※消費者ホットラインに電話がつながらない場合10時~12時、13時~16時(土日祝日、年末年始を除く)

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