覚醒剤取締法違反で実刑が確定したロックバンド「THE FOOLS」のボーカル、伊藤耕さん(当時62歳)が2017年、服役中の月形刑務所(北海道月形町)で病死したのは刑務所などが適切な対応を怠ったことが原因だとして、遺族が国などに計約4320万円の損害賠償を求めた訴訟は7日、東京地裁(男澤聡子裁判官)で和解が成立した。国が遺族に4300万円の賠償金を支払う内容で、遺族側は「金額を見れば国側が全面的に責任を認めたことを示している」と評価した。
死亡の男性、身体拘束100時間以上 薬も服用できず 「THE FOOLS」は1980年に結成され、「不良ロッカーのカリスマ」とも称されるロックバンド。伊藤さんは15年7月、覚醒剤取締法違反で懲役2年10月の判決が最高裁で確定し、月形刑務所に服役した。 訴状によると、伊藤さんは17年10月15日、刑務所内で腹痛と嘔吐(おうと)を繰り返し町立病院に搬送された。医師は触診のみで診断し、伊藤さんは痛み止めを投与されて刑務所に戻された。しかし、翌16日も痛みは治まらず、刑務所内のエコー検査で腹部に水がたまっていることが分かったが、すぐに病院に搬送されず17日未明に死亡した。刑務所は伊藤さんの死因を肝硬変などによる出血性ショックとしたが、遺族の依頼により北海道大で解剖が実施され、死因は腸閉塞(へいそく)による出血性ショックだったことが判明した。 遺族側は訴訟で、刑務所が速やかに病院に再搬送していれば伊藤さんは死ななかったと主張。国が開示した刑務所内の映像には、意識がもうろうとして苦しむ伊藤さんの様子が映っていた。今回、地裁は国に責任を認めるよう勧告して和解に至ったが、和解内容に国の過失の有無や謝罪は盛り込まれなかったという。遺族は町立病院を運営する月形町も提訴し、22年3月に50万円の解決金を支払う内容で先に和解していた。 伊藤さんの妻満寿子さん(55)は記者会見で「主人は苦しんで亡くなった。和解が成立し、『頑張ったよ』と報告したい」と語った。法務省矯正局は「今後とも適切な医療の実施に努めていきたい」とコメントした。【遠藤浩二】
「THE FOOLS」は1980年に結成され、「不良ロッカーのカリスマ」とも称されるロックバンド。伊藤さんは15年7月、覚醒剤取締法違反で懲役2年10月の判決が最高裁で確定し、月形刑務所に服役した。
訴状によると、伊藤さんは17年10月15日、刑務所内で腹痛と嘔吐(おうと)を繰り返し町立病院に搬送された。医師は触診のみで診断し、伊藤さんは痛み止めを投与されて刑務所に戻された。しかし、翌16日も痛みは治まらず、刑務所内のエコー検査で腹部に水がたまっていることが分かったが、すぐに病院に搬送されず17日未明に死亡した。刑務所は伊藤さんの死因を肝硬変などによる出血性ショックとしたが、遺族の依頼により北海道大で解剖が実施され、死因は腸閉塞(へいそく)による出血性ショックだったことが判明した。
遺族側は訴訟で、刑務所が速やかに病院に再搬送していれば伊藤さんは死ななかったと主張。国が開示した刑務所内の映像には、意識がもうろうとして苦しむ伊藤さんの様子が映っていた。今回、地裁は国に責任を認めるよう勧告して和解に至ったが、和解内容に国の過失の有無や謝罪は盛り込まれなかったという。遺族は町立病院を運営する月形町も提訴し、22年3月に50万円の解決金を支払う内容で先に和解していた。
伊藤さんの妻満寿子さん(55)は記者会見で「主人は苦しんで亡くなった。和解が成立し、『頑張ったよ』と報告したい」と語った。法務省矯正局は「今後とも適切な医療の実施に努めていきたい」とコメントした。【遠藤浩二】