芋焼酎や泡盛は「血栓」を溶かす効果が期待できる?お酒にまつわるウソとホント

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新年会があったり、年度末には歓送迎会があったりと、お酒を飲む機会が増えてくるかもしれない。酒ジャーナリストの葉石かおりさんと肝臓専門医の浅部伸一さんが監修を務め、アルコールによる弊害、ベストなお酒との付き合い方について解説する『酒飲み医師が教える 体によいお酒の飲み方』(扶桑社)。その中から、4つのお酒にまつわるウソのようなホントの話について一部抜粋・再編集して紹介する。芋焼酎、泡盛は血栓を溶かす30代、40代になり、気になってくるのが健康診断の結果。コレステロール値や中性脂肪、肝機能の数値などが「再検査」となっている人もいるでしょう。

これらの数値を再検査のまま放置していると、怖くなってくるのが「血栓」。血管内の内皮細胞が傷ついて、そこに血の塊ができるもの。動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞といった重篤な疾患の引き金になると言われ、体にとっては“敵”となる存在です。そんな血栓を、お酒の力を借りて、溶かすことができると言われたら、不思議ですよね。倉敷芸術科学大学・須見洋行名誉教授による研究によって芋焼酎と泡盛には、血栓の溶解に関わる酵素である「t-PA(組織プラスミノーゲン活性化因子)」や「ウロキナーゼ」の分泌、活性を促す作用があることがわかったのです。また、芋焼酎や泡盛を飲まずに、香りを嗅ぐだけでも、同様の効果は期待できるそうです。お酒にはカロリーがないなんてウソ「お酒を飲むときに、おつまみを食べなければ太らない」「お酒はエンプティーカロリーだから太らない」という噂があります。しかし、お酒にもカロリーはあるのです。お酒は純アルコール換算すると1グラム当たり7.1カロリーです。お酒の適量である純アルコール量20グラム(ビール中ジョッキ1杯)を摂った場合、195カロリーもあります。しかし、その7割は代謝によって消費されます。また、同じカロリーを脂質や糖質で摂った場合と比べると、アルコール自体には栄養素がないため、体重増加への作用が少ないと考えられています。これが“アルコールは太らない”と言われている理由の真相なのです。また、ビール、日本酒、ワインなどの醸造酒には糖質、タンパク質などの栄養素が含まれているので、そうしたお酒をたくさん飲めば摂取カロリーがおのずと増えるのも当然のこと。実はおにぎり1個よりもビール中ジョッキ1杯のほうが、カロリーは多いのです。筋トレ後にお酒を飲むと筋肉がつきにくい「ジムで汗を流した後の冷たいビールがやめられなくて、ジムに通っている…」という人がいるかもしれません。しかし、ジムで汗を流す(特に筋トレ)後に飲酒をすると、筋肉の合成を妨げ、筋トレした効果を最大限に活かすことができないことがわかっています。筋トレをすると、筋肉の合成を高めるスイッチである「mTOR(エムトール)」という酵素が細胞内で働き、タンパク質の合成を盛んに行います。しかし、筋トレ後に飲酒をすると、mTORの作用が抑制されて、筋肉の合成率が3割程度減ってしまいます。そのため、せっかく筋トレをした意味がなくなってしまうのです。筋肉合成のピークは、筋トレ後から1~2時間後なので、飲酒をするなら筋トレ後、十分に時間を空けるか、運動は朝に行うとよいでしょう。酔っても自宅に帰れるのは長期記憶のおかげベロンベロンに酔っ払って、どのように帰ってきたか記憶がなくても、なぜか帰宅できている…。そんな経験をしたことがある人もいるでしょう。飲酒をすると、前頭葉のコントロール機能が落ち、酔いが進んで小脳が麻痺します。すると、千鳥足になったり、呂律が回らなくなったりします。そして、脳の海馬に影響を及ぼすと、記憶がなくなったり、同じことを何度も話したりするようになるのです。そんな状態になるまで酔っても、家に帰ることができるのには、理由があります。自宅への道のりは、脳に長くとどまる長期記憶によって固定化されているからです。酔ってほとんど記憶がなくても、取り出せる記憶のひとつなのです。このようなウソのようなホントの話はいくつもあります。お酒を安全に楽しむために知っておくといいかもしれません。葉石かおり (はいし・かおり)エッセイスト・酒ジャーナリスト一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション理事長1966年、東京都練馬区生まれ。日本大学文理学部独文学科卒業。ラジオレポーター、女性週刊誌の記者を経て、現職に。「酒と健康」「酒と料理のペアリング」を核に、執筆・講演活動を行う。2015年に一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションを設立。国内外で日本酒の伝道師SAKE EXPERTを育成する。著書に累計17万部を超える『酒好き医師が教える最高の飲み方』『酒好き医師が教えるもっと!最高の飲み方』『名医が教える飲酒の科学』(すべて日経BP)など多数ある。浅部伸一 (あさべ・しんいち)肝臓専門医1990年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、虎の門病院消化器科、国立がん研究センターなどを経て、肝炎免疫研究のためアメリカ・サンディエゴのスクリプス研究所に留学。2010年より自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科に勤務。現在はアッヴィ合同会社に所属している。<イラスト/楢崎義信>
新年会があったり、年度末には歓送迎会があったりと、お酒を飲む機会が増えてくるかもしれない。
酒ジャーナリストの葉石かおりさんと肝臓専門医の浅部伸一さんが監修を務め、アルコールによる弊害、ベストなお酒との付き合い方について解説する『酒飲み医師が教える 体によいお酒の飲み方』(扶桑社)。
30代、40代になり、気になってくるのが健康診断の結果。コレステロール値や中性脂肪、肝機能の数値などが「再検査」となっている人もいるでしょう。
これらの数値を再検査のまま放置していると、怖くなってくるのが「血栓」。血管内の内皮細胞が傷ついて、そこに血の塊ができるもの。
動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞といった重篤な疾患の引き金になると言われ、体にとっては“敵”となる存在です。
そんな血栓を、お酒の力を借りて、溶かすことができると言われたら、不思議ですよね。
倉敷芸術科学大学・須見洋行名誉教授による研究によって芋焼酎と泡盛には、血栓の溶解に関わる酵素である「t-PA(組織プラスミノーゲン活性化因子)」や「ウロキナーゼ」の分泌、活性を促す作用があることがわかったのです。
また、芋焼酎や泡盛を飲まずに、香りを嗅ぐだけでも、同様の効果は期待できるそうです。
「お酒を飲むときに、おつまみを食べなければ太らない」「お酒はエンプティーカロリーだから太らない」という噂があります。
しかし、お酒にもカロリーはあるのです。
お酒は純アルコール換算すると1グラム当たり7.1カロリーです。お酒の適量である純アルコール量20グラム(ビール中ジョッキ1杯)を摂った場合、195カロリーもあります。
しかし、その7割は代謝によって消費されます。また、同じカロリーを脂質や糖質で摂った場合と比べると、アルコール自体には栄養素がないため、体重増加への作用が少ないと考えられています。
これが“アルコールは太らない”と言われている理由の真相なのです。
また、ビール、日本酒、ワインなどの醸造酒には糖質、タンパク質などの栄養素が含まれているので、そうしたお酒をたくさん飲めば摂取カロリーがおのずと増えるのも当然のこと。
実はおにぎり1個よりもビール中ジョッキ1杯のほうが、カロリーは多いのです。
「ジムで汗を流した後の冷たいビールがやめられなくて、ジムに通っている…」という人がいるかもしれません。
しかし、ジムで汗を流す(特に筋トレ)後に飲酒をすると、筋肉の合成を妨げ、筋トレした効果を最大限に活かすことができないことがわかっています。
筋トレをすると、筋肉の合成を高めるスイッチである「mTOR(エムトール)」という酵素が細胞内で働き、タンパク質の合成を盛んに行います。
しかし、筋トレ後に飲酒をすると、mTORの作用が抑制されて、筋肉の合成率が3割程度減ってしまいます。そのため、せっかく筋トレをした意味がなくなってしまうのです。
筋肉合成のピークは、筋トレ後から1~2時間後なので、飲酒をするなら筋トレ後、十分に時間を空けるか、運動は朝に行うとよいでしょう。
ベロンベロンに酔っ払って、どのように帰ってきたか記憶がなくても、なぜか帰宅できている…。そんな経験をしたことがある人もいるでしょう。
飲酒をすると、前頭葉のコントロール機能が落ち、酔いが進んで小脳が麻痺します。すると、千鳥足になったり、呂律が回らなくなったりします。そして、脳の海馬に影響を及ぼすと、記憶がなくなったり、同じことを何度も話したりするようになるのです。
そんな状態になるまで酔っても、家に帰ることができるのには、理由があります。自宅への道のりは、脳に長くとどまる長期記憶によって固定化されているからです。酔ってほとんど記憶がなくても、取り出せる記憶のひとつなのです。
このようなウソのようなホントの話はいくつもあります。お酒を安全に楽しむために知っておくといいかもしれません。
葉石かおり (はいし・かおり)エッセイスト・酒ジャーナリスト一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション理事長1966年、東京都練馬区生まれ。日本大学文理学部独文学科卒業。ラジオレポーター、女性週刊誌の記者を経て、現職に。「酒と健康」「酒と料理のペアリング」を核に、執筆・講演活動を行う。2015年に一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションを設立。国内外で日本酒の伝道師SAKE EXPERTを育成する。著書に累計17万部を超える『酒好き医師が教える最高の飲み方』『酒好き医師が教えるもっと!最高の飲み方』『名医が教える飲酒の科学』(すべて日経BP)など多数ある。
浅部伸一 (あさべ・しんいち)肝臓専門医1990年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、虎の門病院消化器科、国立がん研究センターなどを経て、肝炎免疫研究のためアメリカ・サンディエゴのスクリプス研究所に留学。2010年より自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科に勤務。現在はアッヴィ合同会社に所属している。

<イラスト/楢崎義信>

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