北九州市長選で「菅前総理」の応援入り中止 「麻生太郎」副総裁の“ご乱心”に続く異常事態に、身内からも「自民党は大丈夫か」の声

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投開票まで1カ月を切った、福岡県北九州市の市長選挙(1月22日告示、2月5日投開票)。4月に行われる統一地方選を目前に控えた前哨戦とあって注目が集まっているが、自民党推薦の候補者・津森洋介氏(47)への応援を巡って、異例の事態が発生した。予定されていた菅前総理の応援演説が、急遽キャンセルとなってしまったのだ。一体何が起こっているのか――。
【写真】北九州市長選でサインを拒否した麻生氏の、スポーツウェアでウォーキングする貴重な姿どちらも応援しない 今回の北九州市長選といえば、昨年末にも自民党内で“事件”が起きたばかりだった。

政治部デスクが振り返る。「津森候補の推薦を決めた自民党本部が、党幹部34人の署名を集め始めた時のことです。手続き上、全員の署名が集まらないと正式な推薦とならないのですが、あろうことか、麻生太郎副総裁ただひとりが、頑なにサインを拒否したのです」北九州入りをお断りされた菅前総理 党ナンバー2である副総裁がサインをしないとは、異例中の異例。ともあれサインが揃わなければ、推薦が決まらない。「困り果てた自民党・森山裕選挙対策委員長は、麻生氏を説得。最終的に“一任します”と言う麻生氏の言葉を得て、それを承認の意と捉えて推薦にこぎつけた、というわけです」 麻生氏がなぜ署名を拒んだのかといえば、「原因は2019年の福岡県知事選挙です。この選挙は保守分裂となったのですが、麻生氏が応援していた候補が落選した。その時の麻生氏側の候補者も今回の北九州市長選に出馬することになり、板挟みとなった麻生氏は、“どちらも応援しない”という態度を取ることに決めたのです。その結果が、署名拒否という形になった」殺害予告か なんとも大人気ない話だが、いずれにせよ、統一地方選の行方を占う北九州市長選、自民党は出足から躓く形となったわけだ。ところが、異常事態はこれだけに留まらなかった。 地元紙記者が言う。「麻生さんが応援しないにせよ、自民党はなんとしても勝たなければならない。そこで、津森候補を応援すべく、菅義偉前総理が告示1週間前の1月14日に北九州市入りし、応援演説を行う予定になっていました。我々にもその情報が入っており、取材する予定だったのですが……。直前の1月5日になって、急遽取りやめになったのです」 重鎮の応援演説のキャンセル――。一報を聞いた地元紙記者の脳裏には一瞬、安倍元総理が応援演説中に銃弾に倒れた件が浮かび上がったという。“すわ、菅元総理の殺害予告でも来たのか”と。「ところが、そんな理由ではありませんでした。自民党福岡県連は、菅氏の演説会場を抑えており、万全の体制で菅氏を迎えるつもりだったのです」 であれば、一体何が問題だったのか。「菅さんを迎えて行われる予定だった、演説会の“式次第”です。そこに、武田良太氏の名前があったことが、キャンセルの引き金になったんです」 武田良太氏といえば、やはり福岡県出身で、福岡11区選出の衆院議員。当選は7回を数え、第四次安倍内閣で行革担当相、菅内閣では総務大臣も務めた、こちらも自民党きっての重鎮の一人だ。「今回の菅さんの北九州入りも、武田氏の働きかけによって話がまとまった。武田氏としては当然、自分もその場で挨拶をするものと思い、腹心の北九州市議に、式次第を作らせた」ハレーションが起きるからやめてくれ ところが、「それを見た福岡県連幹部が激怒。武田事務所に電話を入れ、“あなたが演説をするとハレーションが起きるからやめてくれ”と申し入れた。武田氏は“俺に来るなということか”と激怒。その流れで菅元総理の北九州入り自体も、取り止める方向となったのです」 ちなみに武田氏が菅氏を北九州市に呼び込もうとしたのには、あるワケがあった。「公明党の存在です。実は公明党は、津森候補への推薦を、自民の推薦が決まって以降も、ずっと出し渋っていたのです。理由は、候補者選定の際に、公明党への相談がなかったこと。この仕打ちに拗ねてしまい、推薦を躊躇していた。武田氏はこの問題を解決すべく、公明党と昵懇の菅氏を呼び、公明党の推薦を取り付けようという腹だったのです。そうすれば、武田氏の功績となりますからね」 ところが、昨年末、公明党は態度を豹変。急遽、津森氏の推薦を発表した。武田氏の思惑通りとはいかなかったものの、「それでも菅氏を呼んだことを演説でアピールできれば、武田氏にとってはプラスに働くことになる。なので式次第に、自身の名前を並べたというわけです」白血球のごとく それにしても側から見れば、総理大臣経験者に、さらに大臣経験者が応援となれば、鬼に金棒のはず。なぜこれでハレーションが起きることになるのか。 福岡在住の自民党関係者が察する。「武田氏は、永田町ではすでに地位を確立し、彼が所属する二階派の次の領袖候補とまで言われていますが、地元福岡県では、実はそれほど人気がない。特に、選挙区が近い麻生太郎氏とは、さまざまな利害関係が錯綜し、犬猿の仲と言われています。さらにはその対立構造が波及し、自民党福岡県連を牛耳る幹部との仲も険悪になり、結果、地元県議の大半が“反武田”という構図になっているのです。津森候補を応援する県連幹部たちは、当然、武田氏をこの選挙に関わらせたくない。まるでウイルスを退治する白血球のごとく武田氏の侵入をキャッチし、排除したのです」 この件で最も割を食い、恥をかかされたのは、菅氏だろう。自民党幹部も嘆息する。「福岡県連は、結果的にではあるにせよ、菅氏の存在よりも、県連内の対立構造を優先させたわけです。たとえ津森氏が選挙に勝ったとしても、遺恨 となることは間違いない。4月の統一地方選での応援にも、さまざまな影響が出るでしょう。それにしても、政令指定都市の首長選という大事な局面にありながら、我が党のこのまとまりのなさ、本当に大丈夫かと思ってしまいますね」デイリー新潮編集部
今回の北九州市長選といえば、昨年末にも自民党内で“事件”が起きたばかりだった。
政治部デスクが振り返る。
「津森候補の推薦を決めた自民党本部が、党幹部34人の署名を集め始めた時のことです。手続き上、全員の署名が集まらないと正式な推薦とならないのですが、あろうことか、麻生太郎副総裁ただひとりが、頑なにサインを拒否したのです」
党ナンバー2である副総裁がサインをしないとは、異例中の異例。ともあれサインが揃わなければ、推薦が決まらない。
「困り果てた自民党・森山裕選挙対策委員長は、麻生氏を説得。最終的に“一任します”と言う麻生氏の言葉を得て、それを承認の意と捉えて推薦にこぎつけた、というわけです」
麻生氏がなぜ署名を拒んだのかといえば、
「原因は2019年の福岡県知事選挙です。この選挙は保守分裂となったのですが、麻生氏が応援していた候補が落選した。その時の麻生氏側の候補者も今回の北九州市長選に出馬することになり、板挟みとなった麻生氏は、“どちらも応援しない”という態度を取ることに決めたのです。その結果が、署名拒否という形になった」
なんとも大人気ない話だが、いずれにせよ、統一地方選の行方を占う北九州市長選、自民党は出足から躓く形となったわけだ。ところが、異常事態はこれだけに留まらなかった。
地元紙記者が言う。
「麻生さんが応援しないにせよ、自民党はなんとしても勝たなければならない。そこで、津森候補を応援すべく、菅義偉前総理が告示1週間前の1月14日に北九州市入りし、応援演説を行う予定になっていました。我々にもその情報が入っており、取材する予定だったのですが……。直前の1月5日になって、急遽取りやめになったのです」
重鎮の応援演説のキャンセル――。一報を聞いた地元紙記者の脳裏には一瞬、安倍元総理が応援演説中に銃弾に倒れた件が浮かび上がったという。“すわ、菅元総理の殺害予告でも来たのか”と。
「ところが、そんな理由ではありませんでした。自民党福岡県連は、菅氏の演説会場を抑えており、万全の体制で菅氏を迎えるつもりだったのです」
であれば、一体何が問題だったのか。
「菅さんを迎えて行われる予定だった、演説会の“式次第”です。そこに、武田良太氏の名前があったことが、キャンセルの引き金になったんです」
武田良太氏といえば、やはり福岡県出身で、福岡11区選出の衆院議員。当選は7回を数え、第四次安倍内閣で行革担当相、菅内閣では総務大臣も務めた、こちらも自民党きっての重鎮の一人だ。
「今回の菅さんの北九州入りも、武田氏の働きかけによって話がまとまった。武田氏としては当然、自分もその場で挨拶をするものと思い、腹心の北九州市議に、式次第を作らせた」
ところが、
「それを見た福岡県連幹部が激怒。武田事務所に電話を入れ、“あなたが演説をするとハレーションが起きるからやめてくれ”と申し入れた。武田氏は“俺に来るなということか”と激怒。その流れで菅元総理の北九州入り自体も、取り止める方向となったのです」
ちなみに武田氏が菅氏を北九州市に呼び込もうとしたのには、あるワケがあった。
「公明党の存在です。実は公明党は、津森候補への推薦を、自民の推薦が決まって以降も、ずっと出し渋っていたのです。理由は、候補者選定の際に、公明党への相談がなかったこと。この仕打ちに拗ねてしまい、推薦を躊躇していた。武田氏はこの問題を解決すべく、公明党と昵懇の菅氏を呼び、公明党の推薦を取り付けようという腹だったのです。そうすれば、武田氏の功績となりますからね」
ところが、昨年末、公明党は態度を豹変。急遽、津森氏の推薦を発表した。武田氏の思惑通りとはいかなかったものの、
「それでも菅氏を呼んだことを演説でアピールできれば、武田氏にとってはプラスに働くことになる。なので式次第に、自身の名前を並べたというわけです」
それにしても側から見れば、総理大臣経験者に、さらに大臣経験者が応援となれば、鬼に金棒のはず。なぜこれでハレーションが起きることになるのか。
福岡在住の自民党関係者が察する。
「武田氏は、永田町ではすでに地位を確立し、彼が所属する二階派の次の領袖候補とまで言われていますが、地元福岡県では、実はそれほど人気がない。特に、選挙区が近い麻生太郎氏とは、さまざまな利害関係が錯綜し、犬猿の仲と言われています。さらにはその対立構造が波及し、自民党福岡県連を牛耳る幹部との仲も険悪になり、結果、地元県議の大半が“反武田”という構図になっているのです。津森候補を応援する県連幹部たちは、当然、武田氏をこの選挙に関わらせたくない。まるでウイルスを退治する白血球のごとく武田氏の侵入をキャッチし、排除したのです」
この件で最も割を食い、恥をかかされたのは、菅氏だろう。自民党幹部も嘆息する。
「福岡県連は、結果的にではあるにせよ、菅氏の存在よりも、県連内の対立構造を優先させたわけです。たとえ津森氏が選挙に勝ったとしても、遺恨 となることは間違いない。4月の統一地方選での応援にも、さまざまな影響が出るでしょう。それにしても、政令指定都市の首長選という大事な局面にありながら、我が党のこのまとまりのなさ、本当に大丈夫かと思ってしまいますね」
デイリー新潮編集部

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