「SASUKEは僕の人生」毎朝5時30分から特訓、職も変えた。それでも18年間出場叶わない男性を魅了し続けた「競技」

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13歳で初めてSASUKE出場に応募して以来、「完全制覇」を目標に、生活のすべてをSASUKEに捧げてきた橋本拓実さん(31)。しかし、完全制覇はおろか本戦出場という夢もいまだ叶わぬまま。それでも、18年たった今もその思いは消えません。SASUKEに魅了され続ける男の素顔と、その魅力について聞きました。
【写真】「苦節18年」応援し続けてくれるレジェンドと決意の1枚(10枚目/全10枚)
── 高校卒業時に就職した製油会社を辞め、現在はスポーツインストラクターとして働いているそうですが、今も変わらずトレーニング中心の生活を送っているのでしょうか。
橋本さん:はい、完全にSASUKEを軸にした生活リズムができあがっています。より多くトレーニングできる環境を求めて転職しました。毎朝5時半に起床し、まずは頭と体を起こすために1時間半ほどかけてじっくりランニング。朝食を摂ってから仕事へ向かいます。職場には19時までいますが、日中の休憩時間も筋トレやストレッチに充てています。帰宅後も、自宅に設置した器具で1、2時間トレーニング。これが平日のルーティンです。
── お休みの日はどのように過ごされているのですか?
橋本さん:休みの日は、さらに気合いが入ります(笑)。週末になると夜行バスに乗って、全国各地にいる仲間の家を回るんです。自宅にSASUKEの自作セットを作った仲間が全国にたくさんいるので、本番さながらの環境で1日中一緒にトレーニングをさせてもらっています。周りからは「よくそんな大変な生活を続けられるね」と驚かれることもありますが、僕にとってはこれが純粋に楽しいんです。
── そこまで突き詰められる背景には、周囲の理解や支えもあるのでしょうか。
橋本さん:それは本当に大きいです。今は実家で暮らしているのですが、両親は5歳のころからこの熱量を見続けてきているので、今もいちばん近くで応援してくれています。食事面でも協力してもらっていて、本当に頭が上がりません。
地元の友人たちも僕の本気度を昔から知っているので、何年経っても「いつか絶対にやれる」「今年こそ出場できるといいね」と温かい声をかけてくれます。周囲の理解と応援があるからこそ、今も全力で走り続けられていると、毎日感謝しています。
──18年という歳月をSASUKEに捧げてきて、「得られたもの」は何だと感じていますか?
橋本さん:ひと言で言えば、「SASUKEは僕の人生そのもの」です。各エリアをクリアするためのトレーニング自体も楽しいのですが、それ以上に精神面で得られたものが計り知れないほど大きい。
昨日までできなかった動きが、何百回と練習を重ねるうちにできるようになる瞬間の爆発的な達成感。「どうすればあの壁を越えられるか」を必死に考えて目標に向かって突き進む、濃密な時間。そのすべてが、何にも代えがたいです。大人になると、何かに夢中になって挑戦する機会は減ってしまいがちですが、「挑戦することの純粋なワクワク感」を、SASUKEが教えてくれていると感じます。
── なるほど。
橋本さん:あとは、「仲間」の存在です。これが僕にとって最大の財産ですね。「SASUKEの出場を目指している」という共通言語がひとつあるだけで、年齢も性別も国籍も職業も関係なく、出会った瞬間に打ち解けられる。それもまた、この競技が持つ魅力だと思います。
── コミュニティの絆が本当に強いのですね。トップ選手たちとの交流もあるのでしょうか。
橋本さん:完全制覇を成し遂げたレジェンドの方と一緒に練習させてもらったこともあります。みなさん、本当に優しくて未出場の僕に対してもフランクに接してくださるんです。テレビで見ているレジェンドの方や常連メンバー、有名人の方も、「拓実、がんばれ!」「今年は絶対出場しよう!」と本気で背中を押してくれます。全員が同じ目線でリスペクトし合える仲間に出会えました。
──「ライバル」でありながら、お互いを全力で応援し合える関係性は素敵ですね。
橋本さん:一般的なスポーツは「相手に勝つ」という構図ですが、SASUKEは少し違うんです。ステージに立つときはひとりきりで挑む孤独な競技ですが、プレイヤー全員の感覚としては「1対SASUKE」。全員が巨大な競技に立ち向かう同志なんです。
だからこそ、新エリアの攻略法をみんなで知恵を出し合って考えます。遠くに住んでいてなかなか会えない仲間とも、LINEやSNSを通じて毎日情報交換をしていますし、トレーニング動画を送り合っては「ここはこうしたほうがいい」とアドバイスし合っています。
── 仲間が本戦で活躍する姿を見るのは、どのような心境ですか?
橋本さん:まだ本戦に出たことがないので、テレビの前や応援席で見守ることしかできません。でも、毎年本番の放送で仲間たちがステージをクリアする姿を見ると、自然と涙が出るくらい嬉しいんです。一緒に練習した仲間として彼らが日々すごい努力を重ねてきたことを知っているから、仲間の成功が自分のことのように嬉しくて。それも、SASUKEの魅力のひとつですね。
── 仲間の活躍を喜ぶいっぽうで、「自分があの場に立てていない」という悔しさとの折り合いは、どのようにつけられているのでしょうか。
橋本さん:正直、やっぱり悔しいです。仲間が本戦で挑戦する姿を見ると、「なぜ自分はあそこにすらいないんだ」と、自分の不甲斐なさを感じます。折り合いをつけるのが難しいときもあります。
でも、だからこそ「取り組みがいがある」と思えるんです。簡単に立てない舞台だからこそ、人生をすべて懸ける価値がある。もし簡単に手が届く夢だったら、18年間もこんなに夢中になっていなかったと思います。
── これからの目標を教えてください。
橋本さん:やっぱり、SASUKEの舞台に出場して結果を出すことです。本番前にコースの動きや安全性を確認するため、実際にエリアを試す「シミュレーター」も務めてきました。「黒虎」の一員として山田勝己さんのもとで積み重ねてきた練習への自負もあります。ファーストステージ、セカンドステージを突破し、サードステージまで進める手応えも感じています。
あとは本番のあの大歓声の中で緊張をコントロールし、18年ぶんの思いに身体が負けないようにするだけ。出場が決まったら、絶対に結果を残してみせます。ずっと支え続けてくれている家族、そして仲間のためにも、今年こそは出場したいですね。

本戦出場という夢はいまだ叶っていない。それでも橋本さんは、「簡単に届かないからこそ挑戦する価値がある」と言い切る。18年間積み重ねてきた努力と情熱を胸に、その挑戦は今も続いています。
取材・文:大夏えい 写真:橋本拓実

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