最恐熊「OSO18」姿なく3年 震える農家、追う猟友会 北海道東部で被害拡大

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北海道東部の酪農が盛んな地域で、正体不明の巨大ヒグマが跋扈(ばっこ)して、乳牛を襲う、飼料用トウモロコシを荒らすなどの農業被害が相次ぐ。猟友会が地域一体で懸命に狩猟を続けるが、捕獲の兆しはない。ヒグマが家畜を襲う事態はかつてはなかったが、2019年以降は毎年、乳牛が死傷する異常事態だ。酪農家は、恐怖を抱きながらの営農を余儀なくされている。(尾原浩子)
乳牛60頭襲う
正体不明の巨大ヒグマのコードネームは「OSO(オソ)18」。被害が出た標茶町オソツベツの地名と、現場に残された足跡の横幅が18センチだったことから名づけられた。ヒグマの平均体重は雄が200キロ前後だが、オソ18は推定300~400キロとされる。200キロ近い乳牛を襲うなどその怪力ぶりも特徴的だ。
全国屈指の酪農地帯である同町と厚岸町では、最初に被害があった19年度から19日までに、オソ18が合計で64頭の乳牛を襲ったとみられる。釧路総合振興局は「誰も直接見たことがなく、想像の世界でしかない。大きさなどもあくまでも推測」とする。襲われた乳牛の背中には太い爪による大きな引っかき傷があり、周辺には大きな足跡が残されているなどから、オソ18の仕業だとみられている。
酪農を守るため地元の猟友会、JA、自治体は懸命に捕獲を試みるが、3年以上成果はない。ただ、監視カメラや足跡の近くにあるふんや体毛などをDNA鑑定し、行動履歴などは把握しつつあるという。
地元猟友会代表で標茶町の後藤勲さん(78)は、乳牛を襲った被害が発生すれば、狩猟者10人と日の出から日没まで牧場周辺を見張ってきた。襲った乳牛に再びOSO18が近づく可能性があるためだ。猟友会はすぐに乳牛の死体は片づけず、炎天下でも氷点下の寒空でも待ち伏せを続ける。しかし、一向に姿を見せない。最近は牛舎のすぐそばで牛が襲われる被害もあった。
狩猟歴60年の後藤さん。これまで10頭以上のヒグマを捕獲してきたが、OSO18のような乳牛を襲う被害はなかった。OSO18以外のヒグマとみられる飼料用トウモロコシの食害も増えている。「この辺りではエゾシカが激増している。冬に餌となるエゾシカが多いからヒグマは冬眠しなくなった。地域環境の変化がヒグマの農業被害につながっている」と推測する。
その上で後藤さんは「この町は酪農が基盤。誘因する飼料用トウモロコシの栽培拡大をためらうような酪農家の苦境を何とかしたい。行動の特徴やパターンはつかみつつある。酪農家のため、地域農業のため、何とか捕獲したい」と諦めない。
地元JAも捕獲支援
地元自治体と被害が確認されているJAしべちゃとJA釧路太田は、専門家と連携しながら懸命な対策を続ける。
JAしべちゃは夏場の狩猟用の服や箱わなへの助成などで狩猟者を支援。ドローンで飼料用トウモロコシの食害状況の把握に努める。飼料用トウモロコシの食害を確認した管内農家は昨年度は20戸近いという。

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