【村木 厚子】刑事事件に巻き込まれた一般市民が陥る「弁護士選び」の罠…「絶対に任せてはいけない」弁護士の特徴

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約1分の勾留質問で164日間勾留、検事の作文で作られる供述調書、証拠改竄や捏造……。
『おどろきの刑事司法 “犯罪者”の作り方』(村木厚子 著)では、冤罪に巻き込まれた著者がみた驚愕の刑事司法の実態が明かされています。
本記事では、〈守秘義務が課されている検事が「自分たちにとって有利な情報」を「故意に」マスコミにリークしている、異常な実態〉に引き続き、選んではいけない弁護士の3つの特徴について詳しく見ていきます。
(※本記事は村木厚子『おどろきの刑事司法』より抜粋・編集したものです)
身に覚えのない事件に巻き込まれた時には、一刻も早く弁護士に相談すべきです。
とはいえ、日頃は刑事司法と何の接点もない一般市民には、どうやって弁護士を探せばいいのかわかりません。私もそうでした。逮捕される前から職場の人に、「すごく嫌な感じがする。早く弁護士に相談するほうがいい」と言われていたのですが、知り合いに弁護士はいないし、マスコミに追われて右往左往するうちに日が過ぎていきます。ぐずぐずしていたら、その人が弘中惇一弁護士を紹介してくれました。
逮捕される2週間ほど前に、弘中弁護士の事務所に相談に行き、自分が置かれている状況を説明しました。弘中弁護士は私の話をじっくり聴いたあと、「それで、村木さんはどうしたいのですか」と言いました。
あとで知ったことですが、依頼人が信用できるかどうかを弁護士が判断するポイントは、主に二つあるそうです。
第一のポイントは、事実を包み隠さずに話しているかどうか。弁護士としては、本当のことを言ってもらえないと弁護のしようがありません。仮に、悪いことをしたならしたで、事実を言ってくれれば弁護の方法があるわけです。弘中弁護士は、「証明書の発行権限を持っていた私が、わざわざ部下に命じて偽物を作らせる理由がありません」という私の話の内容から、本当のことを言っている、と感じてくれたそうです。
第二のポイントは、依頼人が弁護士の意見に耳を傾けるかどうかです。裁判になった時、どういう方向で闘っていくかは依頼人と弁護人の話し合いで決まりますが、法律の専門的なことについては、依頼人が弁護人の意見をある程度受け入れないと、裁判を続けていくことが困難になります。それで弘中弁護士は、裁判になった場合の私の向き合い方を確認する意味で、「どうしたいのか」と聞いたわけです。
そう聞かれた時は戸惑いましたが、私の無実の訴えを信用して弁護を引き受ける気持ちになっていたからこそ、「どうしたいのか」と聞いてくださったのだ、それはとても大事なことだったのだと、逮捕されてから気付きました。
取調べで自分の言い分を全否定され、いくら「やっていない」と言っても信じてもらえない状況のなかで、自分の言うことを信じてくれる弁護士と一緒に闘えることは、とても大きな心の支えになるのです。
幸運にも私は信頼できる弁護士に出会うことができましたが、弁護士を自分で選ぶのは難しいものです。病気になった時に、いい医師を自分で選ぶのが難しいのと同じで、「こういう人に任せれば安心ですよ」とは誰にも言えません。ただ、「こういう弁護士に任せてはいけない、任せないほうがいい」ということなら言えます。それは次の三つです。
?最初から有罪の心証を持っている弁護士
依頼者が「やっていない」と言っているのに、捜査機関から容疑をかけられている以上、「本当はやっているんだろう」という見方をする弁護士は、絶対にダメです。
足利事件(1990年に栃木県足利市で発生した幼女誘拐殺人死体遺棄事件)では、当初の弁護人が「クロ」の前提で、虚偽自白を強いられた菅家利和さんから真相を聞き出そうとせず、裁判で否認するためのアドバイスもしませんでした。控訴審から担当した佐藤博史弁護士がDNA型の再鑑定や再審請求に奔走し、冤罪であることが証明されましたが、逮捕から再審で無罪が確定するまでに20年かかっています。
松橋事件(1985年に熊本県下の松橋町で発生した殺人事件)では、虚偽の自白調書を取られた宮田浩喜さんが公判で否認して争おうとしたところ、「クロ」の心証を持つ当初の弁護人が、それを押しとどめてしまいました。
宮田さんは逮捕から34年後の2019年に再審で無罪となりましたが、その間に認知症が進行し、判決の意味を十分に理解できないまま翌年に亡くなりました。なお、この事件では、警察が虚偽自白と矛盾する重要な物的証拠を宮田さんが焼却したことにして、実際にはその証拠を隠匿保管していたという、とんでもない事実も明らかになっています。
?話をちゃんと聞いてくれない弁護士
最初から有罪の心証を持ってはいなかったとしても、依頼者の話をじっくり聞いてくれなければ、有効な弁護活動ができるはずがありません。また、そのような弁護人とは、信頼関係も築けません。弁護人と信頼関係が築けないとき、取調べで虚偽の自白をさせられる危険は大きくなります。公判で否認しようとしても、そのような弁護人は耳を傾けてくれない可能性もあります。
?検察官的発想から抜け切れていないヤメ検
ヤメ検(検察官をやめて弁護士になった人)のなかには、検察官的発想で有罪を前提に裁判を進めがちな人もいます。もちろん、すべてのヤメ検がそうというわけではありませんが、「検事を何年もやっていて検察のことをよく知っている」「担当検事やその上司は知り合いである」などと、その経歴をセールスポイントにしているヤメ検のなかには、古巣である検察と徹底的に争おうとしない人も混じっているので、気をつけなければなりません。

さらに〈誠実な公務員だったのに突然の逮捕…村木厚子氏が驚き、怒り、絶望した日本刑事司法の「暗部」〉では、村木氏が逮捕された経緯を詳しくみていきます。
●特に言及のない限り、登場人物の所属・肩書、法律や制度の名称・内容は、すべて当時のものである
【つづきを読む】誠実な公務員だったのに突然の逮捕…村木厚子氏が驚き、怒り、絶望した日本刑事司法の「暗部」

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