異例の起訴となった。
3月17日、東京地検立川支部が殺人罪で起訴したのは職業不詳の高張潤被告(49)だ。東京・国立市のマンション9階から妻のAさん(当時41)を投げ落とし殺害したとして、高張被告が逮捕されたのは’21年2月。翌月には処分保留で東京地検立川支部が釈放していたが、5年の歳月を経ての起訴となった。
「逮捕当初から高張被告は容疑を否認していました。しかし警視庁捜査1課や東京地検は、高張被告を釈放後も任意の捜査を続けていた。複数の法医学の専門家から意見を聞き、防犯カメラ映像を解析して事件の再現実験を繰り返していたんです。その結果、マンション9階から落下する際すでにAさんに意識はなく、何者かがベランダから落としたという見方を強め起訴に踏み切ったとみられます」(全国紙司法担当記者)
『FRIDAYデジタル』は高張被告の逮捕直後に、事件について詳しく報じている。Aさんとの夫婦間トラブルや、高張被告の矛盾した言い分を紹介したい――。
’21年2月28日の早朝。10人ほどの捜査員がマンションを囲んでいる。朝9時過ぎ、捜査員はいっせいにマンション内へ。ターゲットの男はジャンパーにスエット姿で、抵抗せず室内から出てくると周囲へ鋭い視線を投げる。転落を偽装し妻を殺害したとされる高張被告だ。
事件発生は前年(’20年)11月29日にさかのぼる。
「翌11月30日朝、高張被告から110番通報が入ったんです。『タバコを吸いにベランダに出たら下に妻が倒れていた。前夜にケンカしたから気づかなかった』と。警察や消防隊員が現場に駆けつけると、9階のベランダから転落したと思われる女性の遺体を発見。司法解剖の結果、死因は胸を強打したことによる多発骨折と判明しました」(全国紙社会部記者)
亡くなったのは、高張被告の妻Aさんだ。警察の調べに対し当初、高張被告はこう説明していたという。「妻は育児ノイローゼだった」「自殺したようだ」と。ところが……。
「高張被告の言い分と矛盾するような事例が、次々と明らかになったんです。遺体を調べると、首に絞められたような痕や、まぶたに窒息した際に見られるわずかな出血を発見。ベランダの手すりからは、Aさんの指紋や繊維痕は検出されませんでした。
さらにAさんは事件の前日、アイドルグループメンバーのオンライン動画視聴チケットを購入していたことがわかっています。自ら命を絶とうと考えている人が、前の日にチケットを買いますか?」(同前)
当時、記者が現地で聞き込みをすると近隣住民は次のように話していた。
「あの家族には、幼い女の子がいるんです。お母さん(Aさんのこと)が、幸せそうに女の子を抱いている姿をよく見かけました。とても育児で悩んでいるようには見えませんでしたね。ただダンナさんとケンカは絶えなかったようです。『カネのことでうるさい!』と、ダンナさんが怒鳴っているのを聞いたことがあります」
前出の社会部記者が続ける。
「高張被告は、多額の借金を抱えていたようです。返済のために、Aさんの貯金に手を出すこともあったとか。それが原因で、夫婦間にはトラブルが絶えなかったのでしょう。事件直前にAさんは母親に、〈潤とケンカして、もう離婚だ。怖いよ〉というような趣旨の連絡をしたこともわかっています。別れ話のもつれから、高張被告はAさんの首を絞めて意識を失わせ、9階から突き落としたのではないかと警察はみていました」
元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が解説する。
「不起訴ではないので、被疑者を釈放してからも捜査は続けられます。ただ5年経ってからの起訴は異例の長さでしょう。1999年に名古屋で起きた女性殺害事件について、昨年10月に容疑者が逮捕されてから警察や検察がより過去の犯罪への捜査に積極的になったようです。
今回の事件で否認を続ける被告の起訴に踏み切ったということは、当局も自信があるのでしょう。以前は証拠にできなかった事例も、DNA鑑定など技術の向上により犯行を裏づける事象として解明できるようになりましたから」
釈放から5年後の起訴――。東京地検立川支部は「殺人という事案の重要性に鑑みて捜査を行った」とコメントしている。