山積みティッシュ、床に散らばる麺、ラーメン店が投げかけた“子連れ客のマナー違反”「このままでは入店制限も」

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床に散らばった麺。山積みになった使用済みティッシュ──。
飲食店における「客のマナー」がたびたび議論になるなか、子連れ客の振る舞いについて、あるラーメン店がXで問題意識を投げかけた。
「子供連れだからしょうがないとは言え、最低限のマナーは必要でしょう」
投稿した店主によると、注意を呼びかけたことで、Googleマップの口コミで「星1」を付けられるなどの報復を受けたという。
弁護士ドットコムニュースの取材に応じた店主は、子連れ客の受け入れ中止も検討していると明かしたうえで、一部の客の非常識な行為が、多くの客の行動に影響を与えることを理解してほしいと語った。
2月22日のX投稿では、子どもが食べ散らかしたとみられる麺が床に放置され、卓上のティッシュが大量に使われたまま散乱している客席の写真が添えられていた。
店主は「最低限のマナーは必要でしょう」「子供の問題じゃない、対処しない親の問題です」と投稿。長年通う常連客は節度を守っていると前置きしながら、「お金を払っていれば何しても良いという事ではない」と親のモラル欠如に警鐘を鳴らした。
弁護士ドットコムニュースは、投稿したラーメン店「麺創房LEO」(静岡県焼津市)の店主 に取材した。
ここ2カ月ほど、複数の子連れ客によるマナー違反が目に余るようになり「受け入れをやめるか」と従業員たちと話し合うほど追い詰められたという。
本心ではそんな決断をしたくない──。少しでも子連れ客の行動が変わってほしいとの思いから、Xに投稿したそうだ。
「子連れ客を批判したいわけではありません。多くの家族連れは常識のある人たちばかりで、マナーの悪い人はごく一部です。
ただ、このようなことが続けば、子どもの入店制限をする必要もあります。一部の客の問題で、すべての子連れ客の行動範囲が狭まることもありえると理解してほしいんです」(店主)
投稿で触れた出来事は、約2カ月前に起きたという。
父母と祖母、未就学児と小学生とみられる子ども3人の6人家族が来店し、ラーメンの食券を購入。3卓を並べたテーブル席に案内した。
店主によると、食べ散らかすだけでなく、店内外をうろうろと歩きまわる子どもたちを、親が注意することはなかったという。
さらに「ごちそうさま」の声をかけることもなく、気づけば家族は店を後にしていた。ティッシュが一箱以上使われていたが、その場で注意することはできなかった。
さらに、別の子連れ客では、幼い子どもが1人でトイレを使い、便座と便器、床までびしょびしょに濡らしたまま退出したケースもあったという。客が列を作る多忙な時間帯だったが、従業員は掃除で十数分の時間をとられた。
「子どもが悪いのではなく、まだ1人で上手にトイレができないなら、親がついて行ってやる必要があります。せめて『汚してしまった』と一言あれば印象は違うのですが、それもない」(店主)
店主は、子どもが迷惑をかけるのは仕方がないと強調しつつ、「親が注意するなり、制御するなりしなければ、店に入る資格がない」と話す。
投稿には、店に同情する声がほとんどだったが、「飲食店なら受け入れるべき」とか「いやなら飲食店をやめろ」といった批判もあったという。
なかには「子連れを敵視している」という意見もあったが、店は13年前の開店以来、ベビーカーでも受け入れてきた。
しかし、ラーメン店のような業態では、子連れを受け入れるほど、利益が落ちていく側面があることはもっと理解されてもよい。
「中学生以上には1人1杯注文してもらっています。小さな子どもは1杯のラーメンを食べ切れないので、大人とシェアすることになり、利益がなくなります。食べるのが遅いので、滞在時間も長くなります。
この少子化のなかで、子どもを大事にしたいという思いもあります。自分に子どもがいるので、利益が落ちても入店禁止にはしたくない。そう思っている店がほとんどです。
ただ、うちの場合は13席あって、大人であれば13杯の利益が出るところ、子どもが1席使えば、店の利益はその分なくなることだけは理解してほしいのです」
同業店のなかには、同様の状況に追い込まれ、「小学生以下入店禁止」にした店も少なくないという。
店主は「飲食店は本当に立場が弱い」と漏らす。
今回の投稿後、Googleマップの口コミは約20件増えた。応援のコメントもあったが、発信翌日に「星1」評価を連続で6件付けられたそうだ。
「マナーの悪さを注意する。発信する。すると嫌がらせや報復的な評価が付く。その一連の流れをどこかで止めたいんです。
「口コミやSNSの評判を気にして、飲食店の多くが、何か問題が起きても、注意できなくなっていると感じます。マナーの悪い人が放置され、良識のあるお客さんにも影響が出ている。そんな悪循環が起きているのではないでしょうか」
飲食店の問題にくわしい石崎冬貴弁護士は、このように語る。
──飲食店では、迷惑行為をする客に注意することで、トラブルや悪質な口コミ投稿などの“報復”を受けるリスクを懸念する声もあります。
日本ではサービスに対する期待水準が非常に高いですから、「お客様は神様です」の時代ではないにせよ、依然として客側が優位であることには変わりません。
口コミをはじめ、客は店に対して一方的に意見や論評を発信できますが、店側の反論手段は限られます。個人情報保護の壁もあり、投稿者を特定したり、その口コミに対して媒体上で反論したりすることは容易ではありません。
その意味では、店側は立場が弱く、このような迷惑行為に対しても、「報復」されるリスクを考慮せざるを得ず、厳しい対応を取りにくい状況が生じています。
──注意された腹いせに、Googleマップなどで「星1」評価をつける報復的な行為への対策はありますか。
Googleなどの口コミは、客の「意見」なので、まったくの虚偽であったり、店の商品・サービスと無関係といった場合でなければ、原則として自由に投稿・評価することができます。
客観的に見れば明らかに非常識、あるいは的外れな内容であっても、個人の意見・感想・評価として尊重されます。
特に、GoogleやSNSなど、海外資本のプラットフォームでは、その傾向が顕著です。もちろん投稿内容次第ではありますが、「意見」にあたる口コミについて、法的に削除や修正、損害賠償を求めることは、一般に容易ではないと言わざるを得ません。
口コミはいろいろな方が書きますし、「報復」のように、何かしらの意図があって書かれる場合もあります。
読む方も、口コミはあくまで特定個人の意見であることを意識し、冷静に、あくまで一つの参考として読むようにすべきです。
──子連れ客のマナーをめぐっては、店側との摩擦も起きがちです。客として意識すべき点を教えてください。
本来、客が店側に迷惑をかければ、その対応に時間や費用がかかります。その結果、提供時間の遅延や商品価格の上昇、食事に伴うルールの設定など、めぐりめぐって、ほかの客や自分自身にも影響が及びます。
迷惑行為は周りの客が見ても気持ちいいものではありません。子連れで外出が大変なことはもちろんですし、ある程度、社会全体で許容する必要もありますが、それを理由に配慮を欠くのではなく、店やほかの客に対する気遣いは忘れないようにすべきでしょう。
【取材協力弁護士】石崎 冬貴(いしざき・ふゆき)弁護士東京弁護士会所属。一般社団法人フードビジネスロイヤーズ協会代表理事。自身でも飲食店を経営しながら、飲食業界の法律問題を専門的に取り扱い、食品業界や飲食店を中心に顧問業務を行っている。著書に「なぜ、一年で飲食店はつぶれるのか」「飲食店の危機管理【対策マニュアル】BOOK」(いずれも旭屋出版)「飲食店経営のトラブル相談Q&A―基礎知識から具体的解決策まで」(民事法研究会)などがある。事務所名:法律事務所フードロイヤーズ事務所URL:https://food-lawyer.net/

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