「糖尿病で足を切断」する判断基準とは?足を切断するまでの症状の進み方も解説!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

糖尿病は血糖値のコントロールが難しく、進行すると足の血管や神経に障害を起こすことがあります。これにより足の感覚が鈍くなったり、傷が治りにくくなったりして、感染や壊疽(えそ)を起こすと切断が必要です。実際、糖尿病による足の切断は重い合併症のひとつです。本記事は、なぜ足を切断するのか、その割合や経過、そして早期発見や日常のケアによって防ぐ方法を詳しく解説します。
監修医師:伊藤 規絵(医師)
旭川医科大学医学部卒業。その後、札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、市立釧路総合病院、市立芦別病院などで研鑽を積む。2007年札幌医科大学大学院医学研究科卒業。現在は札幌西円山病院神経内科総合医療センターに勤務。2023年Medica出版社から「ねころんで読める歩行障害」を上梓。2024年4月から、FMラジオ番組で「ドクター伊藤の健康百彩」のパーソナリティーを務める。またYou tube番組でも脳神経内科や医療・介護に関してわかりやすい発信を行っている。診療科目は神経内科(脳神経内科)、老年内科、皮膚科、一般内科。医学博士。日本神経学会認定専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本老年医学会専門医・指導医・評議員、国際頭痛学会(Headache master)、A型ボツリヌス毒素製剤ユーザ、北海道難病指定医、身体障害者福祉法指定医。

神経障害があると痛みや熱さを感じにくくなり、タコや靴ずれ、やけどなどの小さなトラブルに気付かず放置してしまいます。

一方で、末梢動脈疾患などの血流障害があると、傷に必要な酸素や栄養が届かず、傷が治りにくく感染が悪化しやすいです。この感覚が鈍い、血が流れにくい、感染に弱い条件が重なると、足先の組織が腐る壊疽となり、命を守るために足の一部や下肢を切断せざるをえない場合があります。

参照:『糖尿病性足病変【症状と診断、フットケア】』(日本医科大学武蔵小杉病院)

参照:『フットケア|糖尿病情報センター』(国立健康危機管理研究機構)

判断の大きな基準は、以下の3点です。

壊疽や感染がどこまで広がっているか
血流(血管の詰まり)がどの程度悪いか
治療を続けても生命や全身状態に危険が及ばないか

具体的には、足首より上まで壊疽や骨髄炎・重症感染がおよび、血行再建や局所の切除では感染を抑えられない場合、命を守るために膝下や膝上での切断が検討されます。どの高さで切断するかは、残した部分の血流と、将来義足で歩ける可能性を考えながら、多職種チームと本人・家族で話し合って決めていきます。

参照:『糖尿病足病変の切断術』(全身疾患に伴う足部障害)

足潰瘍は再発が多く、難治性で7~20%が下肢切断となり、糖尿病患者さんの足切断の80~85%は足潰瘍が先行します。糖尿病患者さんの下肢切断頻度は、1年間に78~704人/10万人ほどで、非糖尿病患者さんの7.4から41.3倍に上ります。

参照:『11章糖尿病性足病変』(糖尿病診療ガイドライン2024)

また、血流が悪くなると足が冷たい、歩くとふくらはぎが痛む、爪や皮膚の色が紫~黒っぽくなる、皮膚が乾燥してひび割れる、タコやまめ・爪の変形が増えるなどの変化が出てきます。これらを放置すると傷が潰瘍になり、感染や壊疽に進んでしまうことがあります。

参照:『糖尿病性足病変【症状と診断、フットケア】』(日本医科大学武蔵小杉病院)

ここで適切な治療やフットケアが行われないと、傷が深くなって潰瘍となり、膿が出たり悪臭を伴う感染を起こします。さらに進行すると指先や足先が黒く変色する壊疽の状態を起こします。壊疽や重症感染が広がると命に危険が及ぶため、足の一部や下肢の切断が必要になることがあります。

一般的に、足先や足の一部だけの切断であれば、靴型装具や部分的な義足で歩行を続けられる可能性が高く、膝下切断でもリハビリと義足装着によって歩ける方は少なくないです。一方、膝上で大きく切断した場合や、心不全・腎不全などの合併症が重い場合は、義足歩行が難しく、車いす中心の生活です。いずれの場合も、早期からのリハビリテーションと残った足のケアが、できるだけ自立した生活を維持する鍵です。

参照:『下肢切断術の治療成績 切断高位の検討』(臨床雑誌整形外科 62巻2号)|医書.jp)

動脈硬化は両側の足に起こりやすく、片側を切断しても、もう一方の足に新たな潰瘍や壊疽ができて再度切断が必要になるリスクが高いと報告されています。さらに、糖尿病足病変や下肢切断を経験した方は、心筋梗塞や脳梗塞などほかの合併症のリスク・死亡リスクも高く、切断後も継続的なフットケアと全身管理が重要とされています。

参照:『糖尿病足病変のフットケアから下肢救済治療の基本』(日本技師装具学会誌)

赤み
水ぶくれ
ひび割れ
色の変化
腫れ

血豆

足裏は見えにくいので、鏡を使ったり家族に見てもらったりするとよいでしょう。

あわせて、しびれ・冷え・ジンジンする痛み、靴ずれの有無なども意識し、いつもと違うと感じたら早めに主治医やフットケア外来に相談します。

参照:『フットケア|糖尿病情報センター』(国立健康危機管理研究機構)

まず、食事・運動・薬物療法で血糖値を安定させ、高血糖が続かないことがとても大切です。日常生活では、サイズが合う靴と厚手で締め付けない靴下を選び、素足やサンダルで歩かないようにして、靴ずれやケガを防ぎます。

入浴や就寝前に毎日足を観察し、以下のような変化があれば早めに受診しましょう。

赤み
腫れ
ひび割れ
水ぶくれ
爪の変形
色の変化

さらに、喫煙は血流を悪くするため禁煙し、定期的に主治医やフットケア外来で足のチェックを受けることも重要です。

参照:『糖尿病性足病変【症状と診断、フットケア】』(日本医科大学武蔵小杉病院)

特に、以下のような症状がある場合は、早急に糖尿病を診ている医師やフットケア外来、血管外科などに相談します。

傷が治らない
じくじくする
熱をもつ
痛みが強い
足が紫~黒っぽい
足全体が腫れている

受診までの間は、傷口をこすらず清潔に保ち、市販の湿布や外用薬をむやみに使わず、きつい靴や靴下を避けて患部への体重をできるだけ減らします。また、血糖値が高い状態では傷が治りにくいため、主治医の指示どおり薬をしっかり内服・自己注射し、受診時に足の状態を常に見せるようにします。

糖尿病は、高血糖が続くことで足の神経障害と血流障害が進み、小さな傷や靴ずれから潰瘍・感染・壊疽へ進行し、命を守るために足の切断が必要になることがあります。

糖尿病患者さんの下肢切断リスクは、糖尿病のない方より大幅に高いことが報告されており、早期発見と予防がとても重要です。多くは、しびれや冷え、タコやひび割れ、治りにくい傷などのサインを経て重症化します。毎日の足の観察とフットケア、血糖・血圧・脂質管理、禁煙、合わない靴を避けること、異常を見つけたときの早期受診により、多くの足切断は防げる可能性があります。
参考文献
『糖尿病性足病変【症状と診断、フットケア】』(日本医科大学武蔵小杉病院)
『フットケア|糖尿病情報センター』(国立健康危機管理研究機構)
『糖尿病足病変の切断術』(全身疾患に伴う足部障害)
『11 章 糖尿病性足病変』(糖尿病診療ガイドライン2024)
『下肢切断術の治療成績 切断高位の検討』 (臨床雑誌整形外科 62巻2号)|医書.jp)
『糖尿病足病変のフットケアから下肢救済治療の基本』(日本技師装具学会誌)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。