【山村佳子】「生活費を30万円に減らされた」港区のタワマンに暮らす専業主婦の「言い分」

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不動産検索サイトに「港区」「タワーマンション」と検索すると、膨大に物件が出てくる。たとえばある日ひとつの検索サイトで港区の1LDKタワーマンションを検索すると、その賃貸料は18.9万~104万円だった。
さらに同じサイトで1LDKの物件の23区内賃貸料の相場を比較してみると12.9万円~104万円で、その最高値は港区の物件だった。タワーマンションはやはり「憧れの物件」といえる。
ちなみに、共働き世帯が増加する一方、専業主婦世帯は減少している。独立行政法人労働政策研究・研修機構は2025年3月に「専業主婦世帯と共働き世帯」の最新版推移グラフを発表。
1980年では専業主婦世帯は約1100万世帯で、共働き世帯は約610万世帯だったが、1995年ごろに共働き世帯が上回り、2024年では専業主婦世帯が508万世帯、共働き世帯が1300万世帯になっている。
そう考えると、タワーマンションに暮らす専業主婦、というのは本当に裕福な家庭で、一握りしかいないであろうことは想像できる。
しかし、タワーマンションに暮らす専業主婦の家庭は、お金もあって幸せで、羨ましい、と言い切れるのだろうか。
キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんは「富裕層の専業主婦の方からの依頼も増えています。SNSや他人には幸せな家族をアピールしていても、モラハラの被害を受けていたりもします。そうであっても、夫に生活を預けているために、浮気が判明しても泣き寝入りをした結果、心身の調子を崩すことも少なくありません」と語る。彼女は浮気調査に定評がある「リッツ横浜探偵社」の代表だ。
山村さんに依頼がくる相談の多くは「時代」を反映している。同じような悩みを抱える方々への問題解決のヒントも多くあるはずだ。また、山村さんは問題解決をサポートするためにもカウンセラーの資格を持っている。個人が特定されないように配慮をしながら、家族の問題を浮き上がらせる連載「探偵が見た家族の連載」、に続き、メンタルケアについても伝える「探偵はカウンセラー」を連載している山村さんの事例で世相を表すテーマを伝える「探偵はカウンセラー正月SP」の弟2回は「専業主婦とモラハラ」がテーマ。
今回紹介する、山村さんの依頼者は45歳の専業主婦・優子さん(仮名)。夫の行動調査を依頼してきたのだが、その背景にはいくつもの不審点が……。
山村佳子
私立探偵、夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定 メンタル心理アドバイザー JADP認定 夫婦カウンセラー。神奈川県横浜市で生まれ育つ。フェリス女学院大学在学中から、探偵の仕事を開始。卒業後は化粧品メーカーなどに勤務。2013年に5年間の修行を経て、リッツ横浜探偵社を設立。豊富な調査とカウンセリング経験を持つ探偵として注目を集める。テレビやWEB連載など様々なメディアで活躍している。
リッツ横浜探偵社:https://ritztantei.com/
今回の依頼者は優子さん(45歳)です。引き締まったボディをニットワンピースに包み、華やかで女性らしさを全面的に押し出している容姿をしています。パイソン柄に鋲がついているパンプスを履いており、それがとてもよく似合っている。バッグも400万円は超える最高級品です。
腕や脚など見えるところにあざがあるので、DV被害を受けているのかと聞いたところ、「最近、趣味でポールダンスを始めたんです。その練習をしていたら、こんなになっちゃって」と笑っていました。
優子さんは天真爛漫で明るく、少女のような人柄だと感じました。こういう女性は、年上の男性、しかもある程度年の離れた人をパートナーに持つことが多くあります。私たちのカウンセリングルームに来た理由を伺いました。
「最近、主人が渡してくれる生活費を大幅に減らしたんです。もう半年前くらいになるかな……私、貯金が全然できないので、お金が入ってこないと、家族カードを使うしかなくて、それも取り上げられそうなんです。もしかして、主人の会社が危なくなっていたら、どうしようと思い、調べてもらいに来たんです」
優子さんの夫は50代半ばの会社経営者です。人材派遣、レストラン運営、投資家、リゾート施設経営などさまざまな事業を行っており、妻である優子さんもほとんど実態を把握していないとのこと。
「ほとんど家では仕事の話をしないんです。息子(18歳)とはちょっと話しているみたいなんですが、息子は私に心配かけまいとして、何も言わない。どうしても教えて欲しいと聞いたら、『なんかのサブスクサービスをやって失敗したみたいだ』と言われてしまって」
優子さんは結婚20年。お金持ちと結婚したい一心で、東京に出てきたそうです。高校卒業後に美容関連の専門学校に入りますが、数日で中退。その後、夜の仕事などをしつつ、20歳の頃から婚活を始め、24歳の時に10歳以上離れた夫と出合い結婚しました。
27歳の時に息子が産まれ、嫁としての勤めを果たしたと思ったそうです。
「息子が産まれたらお世話をしなくちゃいけないじゃないですか。幼稚園、小学校と教育も計画して実行しなくてはいけないし、習い事のサポート、野球が好きだったから、リトルリーグの送迎など、やることは盛りだくさんで働く余裕なんて全くありませんでした。
しかし、その息子も大学進学なんですよね。息子は日本国内の学校には進まず、海外に大学への進学を決めました」
海外の大学への合格通知が出たタイミングで、夫は優子さんに渡すお金の減額。それまで、月に100万円以上だったそうですが、30万円にされてしまったとのこと。しかし、タワーマンションは分譲で、ローンや管理費、さらに光熱費や学費は夫の口座からの引き落としとのこと。それ以外の生活費で30万円は十分すぎるくらいだと思うのですが、優子さんは不満のようです。
生活費も毎日の食事代や習い事がメインですが、30万円あれば通常の生活には十分ゆとりがあるはず。優子さんは毎月高級エステやスポーツクラブに通い、ポールダンスなどの習い事をし、ブランドの直営店も常連。ママ友とのお食事会もあって、100万円あっても手元には一切残っていなかったとのことでした。まさに「セレブ妻」な生活です。
「このままでは好きなものも買えないし、私のメンテナンスもできないんです。主人は結婚する時に、“優子は好きなことをして、笑顔でいてくれればいいんだよ”と言っていたのに、30万円では笑顔になれません。主人の会社、もしかしたら業績不振なのかも。息子の海外留学には多額の費用がかかるし、生活水準だって下げられない。もしもの時のために、現状を知っておいた方がいいと思うんです」
その時、私は、「それって庶民の常識だな」と感じました。20年以上セレブ妻で過ごしてきた人が、しかも「現在お金がそんなにもらえていない」という人が、その程度のことで、お金がかかる探偵に相談に来るとは思えない。少し考えてしまいました。私が何も話さないでいると、依頼者さんは本当のことを話す事が多いです。
数十秒の沈黙の後、「実は、主人から離婚を切り出されてしまったんです」と話し始めました。
「結婚するまでは、優しくしてくれたのに、入籍した瞬間に、威圧的で攻撃的な発言が多くなりました。私のことを、家政婦兼風俗嬢のように扱い、人間扱いされないというか。それでも毎月の生活費は入れてくれるし、どこに行っても“奥さんきれいですね”と言われるのがいいと言っていました」
とはいえ、誕生日や結婚記念日などには、豪華なプレゼントをくれ、年に3回は家族で海外旅行もしてきました。
「他の人には“いいご主人ですね”と言われるんですが、満たされない。若い頃は別の男性のことも好きになったのですが、主人はそういうことは察知が早くて、暴力を振るわれたこともありました」
激しい暴力と暴言の後に、夫は優子さんのことを肉体的に支配する。息子はそういう家庭にいたくないために、中学校から同じマンションの同じ階の別の部屋に住んでいるとのこと。優子さんの家は、港区内のタワマンです。優子さんの家は80平米ですが、息子の部屋は40平米だそうです。
「息子と別居ってことではなく、朝、起こしに行ったり、ご飯を作ったりしています。ただ、中高一貫校の友達の溜まり場になってしまって、犯罪行為をしないかどうかも心配だったから、海外留学をさせることにしたのです」
この調査をしていると、お金があるから幸せとは限らないと感じることが多々あります。家族や親しい人との、穏やかで優しく、いたわりあう時間……そういう事が優子さんの人生から欠如しているようにしか聞こえませんでした。
「結婚してから、胃痛で救急車で運ばれたこともありましたし、帯状疱疹を発症し、これは今でも苦しい。薬で抑えているのですが、“あ、ヤバい”と思うと痛みが走る。何かに集中していないと辛いから、ランニングや筋トレ、ポールダンスなどをしています。20年間も主人に人生を捧げてきたのだから、このまま結婚を続けて、主人の葬式の喪主になりたい。それで私の人生は、初めて勝つと思うのです」
優子さんは天真爛漫を演じていますが、内には苦悩を抱えていました。優子さんは夫がもたらす経済的メリットがあるために、離婚したくない。しかし、夫は本気のようだと言います。夫が強硬に離婚をしようとした時のために、調査をすることにしました。
◇優子さんが「30万円では足りない」というのには驚くが、夫のハラスメントのもと、お金だけが心を落ち着けるツールになってもいるのかもしれない。お金がありながら、胃痛で救急車に運ばれたり、帯状疱疹で苦しむのは、優子さんの体がSOSを出している証拠だ。
コミュニケーション能力が高く、チャーミングな優子さんなら、自分の能力で十分生きていけるはず。優子さんがリラックスして幸せを感じるには、どのようなことが必要なのかを考えさせられる。
様々な問題点をはらんでいるように感じる夫婦関係だが、まずは実態を知ることが重要だ。調査の結果は後編「生活費を30万円に減額、帯状疱疹のセレブ妻、夫に離婚を切り出されてからの「大逆転」」にて詳しくお伝えする。
【後編】生活費を30万円に減額、帯状疱疹のセレブ妻、夫に離婚を切り出されてからの「大逆転」

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