師走恒例の「年末ジャンボ宝くじ」。わずかな可能性に期待して宝くじを購入する人は少なくありませんが、実際に当選したあとで思わぬ悩みを抱えるケースもあるようです。
弁護士ドットコムに相談を寄せた男性は、婚姻関係にあるパートナーと離婚する前、内緒で宝くじを購入し、それが当選したといいます。
相談者の妻は、男性が宝くじに当選したことを知らないまま離婚。その後、男性は当選金を受け取ったそうです。
離婚の理由は、妻による不貞行為だったといいますが、当選のタイミングが「婚姻期間中」であったことから、男性は元妻から当選金の分配を請求されるのではないかと不安を抱いています。
また、別の相談者は、パートナーと結婚する直前に宝くじが当選し、婚姻届を提出した翌日に当選金が自身の口座に振り込まれたといいます。
そのため、「この場合の当選金は夫婦の共有財産になるのでしょうか?」と疑問を持っているようです。
一般的に、結婚期間中に築いた財産は、夫婦で半分ずつに分けるのが原則とされています。しかし、「宝くじの当選金」は、夫婦が協力して築いた財産といえるのでしょうか。
また、結婚前に当選した宝くじの扱いはどうなるのでしょうか。光安理絵弁護士に聞きました。
──離婚前に購入した宝くじが当選し、離婚後に当選金を受け取った場合、元配偶者に財産分与をする必要はありますか。
離婚前に購入した宝くじということですから、購入代金が通常の家計(小遣い)から支出されたのか、それとも婚姻前から有していた特有財産から支出されたのかによって、考え方を区別することができそうです。
通常の財産分与の考え方に照らせば、小遣いから購入なら分与対象となり、特有財産から購入した場合は、当選金も全額特有財産とされるはずです。
ただし、財産分与で問題となるのは、当選金が数万円から数十万円程度で生活費として使われてしまったようなケースではありません。購入代金に比して当選金が莫大で、離婚時にも現金や別の財産として残っている場合です。
そのようなケースでは、当選金を「ほぼ無償で得た偶然の利益」と捉え、たとえ特有財産から購入していたとしても、当然に特有財産とするのではなく、公平の観点から夫婦の家計とすべき(離婚の場合は財産分与の対象となる)という見解が有力です。
したがって、今回のように、離婚前に当選が確定し、当選金を受け取ることが確実だった場合には、実際の入金が離婚後であっても、当選金は財産分与の対象になると考えられます。
ただ、配偶者が継続的に宝くじを購入していた結果、多額の当選金を得たような場合には、必ずしも折半とはならず、購入者6割、相手配偶者4割といったように、分与割合に差がつく可能性もあります。
──離婚前に別居し、その後に当選金を得た場合はどうなるでしょうか。
離婚前の別居後に当選金を得た場合でも、同居中に当選が確定していたのであれば、財産分与の対象になります。
また、別居前から継続して宝くじを購入しており、たまたま別居後に当選したようなケースでも、分与対象と考えるべきでしょう。
一方で、問題となるのは、別居して家計が完全に分かれた後に初めて宝くじを購入した場合です。
通常、財産分与の基準時は「別居時」とされるため、別居後に購入した宝くじの当選金については、特有財産とされる余地があります。
──では、結婚前に当選した宝くじの当選金はどのように扱われますか。
結婚前に当選が確定していた宝くじについては、入金が結婚前か結婚後かを問わず、原則として購入者本人の特有財産と考えるべきです。
ただし、入籍前の同居期間や結婚準備期間に当選金が入金されている場合には、先に述べた「ほぼ無償で得た偶然の利益は夫婦の家計とするのが公平にかなう」という観点から、離婚時に財産分与の対象とされる場合もあります。
【取材協力弁護士】光安 理絵(みつやす・りえ)弁護士大阪大学法学部、同大学院法学研究科修了後、パナソニック株式会社(旧松下電器産業株式会社)入社、本社法務本部配属。2003年司法試験合格、東京地方検察庁、横浜地方検察庁を経て仙台弁護士会に弁護士登録。2021年度仙台弁護士会副会長。現在、ソレイユ総合法律事務所代表弁護士を務め、離婚事件、交通事故事件、刑事事件等を多数扱っている。事務所名:ソレイユ総合法律事務所事務所URL:http://www.sendai-soleil.net/