戦場と同じ緊迫感「現地フォトルポ」…ハンターたちに同行 「巨大ヒグマとの命がけの闘い」【北海道】

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子連れの母グマは容赦なく人間を襲う! 100kg以上のメスを捕獲した現場に遭遇
鼓動が激しく高鳴る。わずかな異常でも見逃せば、命取りになりかねない。
彼らは私が山に入ったことを当初から認識し、ヤブの中からじっと様子をうかがっているはずだ。鼻も耳も、人間よりはるかに優れているのだから。報道カメラマンとしてウクライナやアフガニスタンなど多くの戦場を取材した私でも、極度の緊張からノドが渇く。比較的新しい糞や足跡があればなおさらだ――。
猟銃と狩猟の免許を取得して17年になる私が、ヒグマを追って北海道十勝(とかち)地方・足寄(あしょろ)町の山に入ったのは10月下旬のことだ。頼ったのはハンティングの師匠と仰ぐ、猟歴49年の黒川光雄氏(70)。一日で2頭のヒグマを仕留めたこともある凄腕ハンターだ。黒川氏が話す。
「年々、ヒグマの数が増えているのを実感するね。ヒグマが好むドングリなどの木の実が猛暑の影響で不作だったため、山から下りてくるんだろうな」
環境省によると、今年度上半期(4~9月)のクマの出没件数は2万792件にのぼり過去5年間で最多だった。人的被害は99件108人となり、とくに7月~9月の発生場所は7割以上が人間の生活圏だったという。クマの駆除は喫緊の課題だ。
冒頭の場面に戻ろう。前日に黒川氏と行った車で林道を走る「流し猟」に対し、この日、私が同行したのは山中を歩いて獲物を仕留める「忍び猟」だ。ヒグマが潜む山を実際に歩くため、いやがうえにも緊迫する。一緒に山に入った若手ハンターの伊藤有理沙(ありさ)氏(36)は、この前の週に戦慄の体験をしたという。
「ヤブに潜んだヒグマが唸り声を上げてきたんです。姿は見えませんでしたが、初めてヒグマの気配を近くで感じ恐怖で身体が震えました」
私たちが進む周囲の白樺(しらかば)の幹にはヒグマのツメ痕があり、地面には足跡や糞が残されていた。しかし結局この日、私たちがヒグマに遭うことはなかった。私はこれまでに100回以上狩猟に出ているが、まだヒグマと対峙したことはない。
「ヒグマは警戒心が強く、めったに人間を襲わない。ハンターでもヒグマを撃ったことのない人はいる。でも子連れの母グマは、脅威を感じると容赦なく襲ってくる。子グマの周囲には必ず母グマがいるから注意が必要だよ」(前出・黒川氏)
私は2年前の’23年10月、ヒグマの駆除現場に遭遇している。場所は北海道・足寄町の山中。同じく山に入った仲間のハンターから、体重100圓鯆兇┐詈譽哀泙隼劵哀泙魴發辰燭範⇒蹐入ったのだ。
私たちが当該のハンターと合流すると、子グマは息絶えていたが、母グマは弾を1発食らうも山の斜面を駆け上がっていったという。我々は山を大きく迂回し、高い場所から下りながら徒歩で現場へ向かった。
低い場所からだと、高い所にいるクマの素早い動きに対応できないためだ。現場では、母グマが斜面にうずくまっていた。黒川氏が3~4発撃ってとどめを刺す。黒川氏が話す。
「倒したと思っても油断は禁物。クマがあおむけに倒れていれば安心だが、うつ伏せの場合は危険だ。死んだふりをして人間を待ち伏せし、近づくと突然起き上がって襲ってくることがある。しばらく様子を見て、動かなくても何発か撃ち込んでみることが大切だ。昨年も北海道で、うつ伏せのクマから逆襲を受け大ケガしたハンターがいた」
駆除したヒグマは、その場で解体し小分けにして山から下りる。解体しないと身体が大き過ぎるうえに重いため、とても持ち帰れない。黒川氏が「解体中も注意が必要だ」と続ける。
「弟子の50代の男が、エゾシカを解体していた時のことだ。近くの笹の中に身を隠していたのだろう。臭いにつられて、ヒグマが背後から襲ってきた。銃は離れた木に立てかけていて、弟子の手元にない。仕方なく弟子は解体用のナイフを持ち両腕を広げ、できるだけ身体を大きく見せ『ワァー!!』と叫び威嚇したそうだ。
弟子は身長180僂曚匹△訛臺舛蔽砲澄ヒグマは恐れをなし、一旦はヤブの中へ退散。しかし諦められなかったのだろう。再び後方から襲ってきたが、銃を確保した弟子に倒された。ヒグマに遭遇して最もやってはいけないのは、背中を見せて逃げること。勢いづいたヒグマに、背後から鋭いツメで襲われるだろう」
一つ間違えれば殺される――。巨大ヒグマとハンターたちの、命がけの闘いが続いている。
4~5発撃ち込みようやく仕留める
『FRIDAY』2025年11月28日・12月5日合併号より
取材・文・PHOTO:横田 徹

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