「動かない鳥」ハシビロコウ、3年越しの求愛…世界2例のみの繁殖目指す高知の動物園「50センチまで接近」

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「動かない鳥」として人気のハシビロコウを公開する高知県香南市の「県立のいち動物公園」で、国内初のひな誕生に期待が高まっている。
園内では雌雄2羽を飼育しており、求愛を示すとみられる行動の頻度が増えているという。人工環境下での繁殖は世界で2例しかなく、関係者は親密さを増す2羽を優しく見守っている。(高知支局 田中志歩)
ハシビロコウは、アフリカ中東部の湿地帯に生息する大型の鳥。獲物の魚を捕まえる際、動かずに長時間待ち続ける習性を持つ。環境破壊や違法捕獲により、個体数は減少傾向とされる。
岐阜大の楠田哲士教授(動物園動物繁殖学)によると、人工環境下で繁殖に成功した例は、2008年のベルギー、09年のアメリカの2例だけ。成功例の少なさから、繁殖時期などに関し、不明点が多い。
のいち動物公園の2羽は、雄の「ささ」と、繁殖のため、22年12月から栃木県の「那須どうぶつ王国」に借りている雌の「カシシ」。
同園は、普段は1羽ずつ公開し、2羽の様子を見ながら1時間程度「同居」させ、慣らしてきた。
ハシビロコウは群れず、縄張り意識が強い。当初は2羽が近づくと、互いに攻撃的になり、飛びつこうとすることもあった。このため、飼育員が立ち会い、熊手で体を押さえて2羽を離すようにした。
そうした中、23年、ささが展示場内にあった金属製の蓋を卵に見立てて抱卵する様子が見られた。2羽が一緒にくちばしを鳴らす「クラッタリング」やお辞儀など、求愛を示すと考えられる行動の頻度も増えた。
今も同居の際は飼育員が立ち会っているが、今年に入り、攻撃的になる回数が減ったといい、今夏には2羽のくちばしの先が50センチまで近づいた。
担当飼育員の木村夏子さん(42)は「年を追うごとに関係が親密になってきている。人が介入せず、2羽に任せるタイミングを見極めたい」と語った。
ファンの期待も高まっている。9月末に同園で開かれた「ハシビロコウシンポジウム」は、100人の傍聴枠が予約開始当日に埋まった。参加した兵庫県伊丹市の女性(51)は「インパクトの強い顔だけど、実は表情が豊かで愛らしい。ひなを見られるかもしれないと思うとわくわくする」とうれしそうだった。
ハシビロコウは、国内7施設で計15羽が飼育され、雌雄がそろう4施設が繁殖に取り組んでいる。
雄雌を2羽ずつ飼育する神戸市中央区の「神戸どうぶつ王国」は、環境を重視している。
21年、屋内施設の人工降雨機で、アフリカの雨期と乾期を再現したエリアを設置。池の水位も変化させている。結果、雄が雨期の終わりに積極的にわらを運んで巣を作ったほか、上空を飛行して雌を探すような行動も見られたという。
楠田教授は全国の施設で、ハシビロコウのふんから、産卵に関係するホルモンを調査している。神戸どうぶつ王国では、新エリアを設けた後、雌のホルモンが高まったという。楠田教授は「飼育下でも、降雨や湿度の変化が繁殖に必要かもしれない。シャワーを使って雨期を模すことができないか、各施設と考えていきたい」と語る。

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