「ハルヒの聖地」1日限定で初の校舎開放…教諭も「これまで入れなかった分、思う存分楽しんで」

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人気アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」の舞台とされる兵庫県西宮市の県立西宮北高が23日、ファン向けに初めて学校を開放する。
少子化で近隣の高校と統合され、2027年に校名がなくなることを受け、生徒と教諭が協力して企画。10月に1000人限定で来場者を募ったところ、1日もたたずに枠が埋まった。(阪神支局 中山真緒)
アニメは谷川流(ながる)さんの人気ライトノベル「涼宮ハルヒシリーズ」が原作。京都アニメーションが手がけ、06年からテレビ放送された。
西宮北高は谷川さんの出身校で、主人公が通う「北高校」のモデルとされる。アニメでは、ファンに「ハルヒ坂」として親しまれる学校前の急坂をはじめ、校舎の外観や教室、登下校シーンで描かれる玄関ロビーなどが忠実に再現されている。放送開始当初から熱心なファンが訪れ、敷地外から写真を撮るなどしていた。
西宮北高は22年、少子化に伴う学校再編で近くの高校との統合が決まり、今年4月に西宮苦楽園高が誕生。西宮北高の校舎はそのまま使われているが、校名は現在の2年生が卒業する27年3月末でなくなる。校門には2校のプレートが掲げられており、西宮北高の分は27年3月の閉校後に外される。
同高はこれまでファンを校内に受け入れることはなかったが、統合で校名が消える前に、「『ハルヒの聖地』を生徒の学びに生かしたい」と、1日限定で校舎を開放することを決めた。
定員1000人で、10月1日の午前9時からインターネットで募集を開始。X(旧ツイッター)で発信したところ、「北高に入れるチャンス」と話題となり、同日午後10時過ぎに定員に達した。応募した千葉市の公務員男性(45)は「『北高』の名前がなくなるのはさみしいが、登場人物になった気持ちで、色んな角度から『聖地』を見てみたい」と話した。
学校はファンの受け入れを、生徒の社会学習の機会として期待している。当日は、生徒がアニメで登場した場所に案内し、生徒が制作したAR(拡張現実)も体験してもらう。校内の特定の地点でスマートフォンをかざすと、画面上にアニメのシーンが表示されるという。
ARの制作に携わった西宮北高2年の生徒(16)は「イベントを通じて西宮北高のことが、少しでも多くの人の記憶に残ってほしい」、イベントの準備を担当した西宮苦楽園高1年の生徒(16)も「来年以降に入学する生徒にも、『ここはハルヒの聖地』と伝えたい」と話す。
上内伸一郎教諭(44)は「ファンの方にはこれまで入れなかった分、思う存分楽しんでほしい」と話している。
ファンがアニメの舞台を訪れることは「聖地巡礼」と呼ばれる。地域活性化に一役買っており、2007年放送のアニメ「らき☆すた」に登場する埼玉県久喜市では、商工会が中心となってイベント開催やキャラクターグッズの販売に取り組み、日本政策投資銀行によると、放送開始から10年間で地元への経済効果は30億円に上ったという。
一方で、「聖地」は観光地とは限らず、外部の人が立ち入りを禁じられている敷地に無断で入るなどのトラブルも起きている。
一般社団法人「アニメツーリズム協会」は、▽地域の住民の日常を壊さない▽私有地や侵入禁止区域には立ち入らない▽ゴミは持ち帰る――などを呼びかけている。

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