今年11月、東京都・文京区のマッサージ店で、12歳のタイ国籍の少女に性的なサービスをさせていたとして、店の経営者だった細野正之容疑者(51歳)が逮捕された。少女は今年6月下旬に母親と来日し、店の中で寝泊まりしながら約1ヵ月の間、60人ほどの客の相手をさせられていたという。
母親は少女を店に置き去りにして、一人で出国。9月に少女が自ら東京出入国在留管理局を訪ね、職員に「タイに帰りたい」「学校に行きたい」と話したことで、人身取引の被害が発覚した。
日本はタイ人の観光目的の滞在に対し、15日間の査証(ビザ)免除措置を取っており、この母親と少女も観光客として入国していた。
実はこのビザ免除期間中に、日本で“違法な出稼ぎ”をするタイ人女性が後を絶たない。
「彼女らは約2週間、部屋でひたすら体を売っています。1日に5~10人くらいを相手にし、売り上げの半分を店に払う。大体30~50万円を稼いで帰っていくようです」
そう話すのは、東京都内のアジア系マッサージ店に詳しい男性(40代)だ。これまで30軒ほどの店に通い、そこで出会ったタイ人女性らと店の外で個人的に会うこともあるという。
「彼女らは現地のブローカーを通じて、日本や台湾、韓国で出稼ぎし、実家に仕送りしています。入管に怪しまれないように、数ヵ月ごとの来日を繰り返している。中には子どもをタイにいる母親の元に残し、出稼ぎを続けている女性もいます」(同前)
そのうちの一人のタイ人女性のSNSを見せてもらうと、日本など海外各国の観光スポットでポーズを取る姿が投稿されていた。移動の自由があることからも、「強制売春」の影は感じなかったものの、中には危険な目に遭った女性もいるという。
「客を装った男性が包丁で女性に所持金を出すよう脅し、カネを持ち逃げするような事件がありました。店側も違法な運営をしているので、そうした弱みに付け込んだ犯行が横行しているようです」(同前)
こうしたアジア系の違法マッサージ店は、雑居ビルなどの一室で運営されており、ウェブサイトには携帯電話の番号と大体のエリアのみが書かれている。摘発から逃れるためとみられ、客はその番号に電話して、予約確定後に正確な住所を教えてもらう仕組みだ。電話の対応をするのは、中国人やタイ人などのアジア系が多いという。
さらには、こうした店に加え、居住用マンションの一室で、違法な売春行為が行われている事例もある。アジア系の性風俗従事者が滞在しているこうしたマンションは、通称”中華マンション”と呼ばれている。
〈短期ビザ〉〈新人タイ人〉〈ハズレない〉
ある中華マンションのウェブサイトを見てみると、こうした文言とともに、肌を露出したタイ人女性らの写真がズラリと並んでいた。キャプションには地名が書かれ、おおよそのエリアが把握できる。北海道から沖縄まで選択肢は幅広く、全国に400人以上が在籍しており、そのほとんどがタイ人だった。
客はこのサイトからチャットアプリに移行し、運営側とやり取りして、指定されたマンションの一室で性的サービスを受ける。本番行為は30分1万円で、同時に複数人と”避妊具なし”で性交するオプションもある。完全なる違法風俗で、ずさんな管理体制下で未成年を働かせていても分からない状況だ。
さらにウェブサイトには、〈毎週月曜日か火曜日に女の子はいつも入れ替わりしますので気にいた子居たら早く利用してください。顔出しは全員短期ビザで3日から1週間ぐらいだけ空いてます!(原文ママ)〉との記載もあった。女性らが短期滞在で頻繁に入れ替わっていることを考慮すると、あっ旋された女性の数は相当数いることになる。
こうした中華マンションは摘発もされているが、イタチごっことされる。3月には、大阪府・羽曳野市のマンションの一室を売春の場として提供したとして、売春防止法違反等の疑いで千葉県市川市の男性が逮捕された。また、このマンション内で性的サービスを行っていたとみられるタイ国籍の女性も風営法違反容疑で逮捕されている。
売春の売り上げの一部は、最終的に中国本土に送られていた可能性があり、大阪府警は中国人による売春組織が関与している疑いがあるとみているという。
こうしたタイ人女性らはどこからやってくるのか。続く後編記事『【年間1万人超】タイ人少女の売春強要問題、日本が「人身売買」の「最大の市場」と言われている理由』で詳述する。
【つづきを読む】【年間1万人超】タイ人少女の売春強要問題、日本が「人身売買」の「最大の市場」と言われている理由