インフルエンザは、毎年多くの方がかかる感染症で、発熱や倦怠感などの全身症状がよく知られています。一方で、咳は発症初期から現れることが多く、回復後もしばらく続く場合があるため、日常生活に支障をきたすこともあります。
本記事では、インフルエンザと咳の関係性、そのほかの病気との違い、そして自宅や医療機関での適切な対処法を解説します。
監修医師:林 良典(医師)
また、熱が下がった後も倦怠感や咳が数日続くことがあり、解熱したからといって完全に回復したとは限りません。呼吸器症状として喉の痛みや咳、鼻水などが高熱と同時、あるいは少し遅れて現れる場合があります。
参照:『インフルエンザ施設内感染予防の手引き』(厚生労働省)参照:『新型インフルエンザ 診療ガイドライン(第1版)』(一般社団法人日本感染症学会)
ただし、すべての方に咳が出るわけではなく、喉の痛みや鼻水が中心となる場合もあるため、咳の有無だけでインフルエンザかどうかを判断することはできません。
このような咳は、喉や胸への刺激を伴い、強い場合には胸の痛みを感じることもあります。咳によって呼吸が浅くなり、全身のだるさが増すこともあるため、症状としては大きな負担につながります。
また、二次的に細菌感染を合併した場合には、黄色や緑色の痰が出るようになり、肺炎に進行する可能性もあります。息苦しさ、熱がなかなか下がらない、食欲の低下などの症状がみられた場合は、肺炎などの合併症が疑われるため、自己判断せずに医療機関を受診することが推奨されます。
一般的な風邪(急性上気道炎)
新型コロナウイルス感染症
気管支炎
肺炎
これらはいずれも呼吸器に炎症を起こすため、咳や喉の痛み、発熱といった症状が重なりやすく、初期の段階では区別が難しいことがあります。また、気管支喘息のように乾いた咳が長く続く病気もあり、咳が出るという症状だけでインフルエンザかどうか判断するのは難しい場合があります
インフルエンザの咳は発症初期から出やすく、数日間でピークを迎えるのが一般的です。これに対し、新型コロナウイルス感染症では乾いた咳が長く続く傾向があり、持続期間に違いがみられます。
また、新型コロナウイルス感染症では、味覚や嗅覚の異常、息切れ、長期間にわたる倦怠感などの症状を伴うことがあり、これがインフルエンザとの大きな違いです。
さらに、こまめな水分補給は粘膜の潤いを保ち、痰を出しやすくする効果があります。温かいスープやカフェインの少ないお茶などを選ぶとより効果的です。市販ののど飴をなめたり、マスクで喉を保湿したりすることも、咳を軽減するのに役立ちます。
参照:『令和6年度インフルエンザQ&A』(厚生労働省)
咳が強い場合には、症状をやわらげるための咳止め薬(鎮咳薬)や、痰を出しやすくする薬(去痰薬)が処方されることがあります。さらに、肺炎や気管支炎などの合併症が疑われる場合には、胸部レントゲンや血液検査などを行い、必要に応じて抗菌薬が投与されることもあります。
参照:『令和6年度インフルエンザQ&A』(厚生労働省)
長引く咳は生活の質を下げるだけでなく、喘息の悪化など、別の病気が背景にある可能性もあります。特に、痰の色が濃くなる、息苦しさが強い、夜間に咳で目が覚めるといった症状がある場合には、あらためて医療機関で診察を受けることが推奨されます。
インフルエンザは風邪とは異なり、急激な高熱や強い全身症状を伴うのが特徴で、咳も主要な症状のひとつです。発症初期には痰を伴わない乾いた咳が多くみられ、進行に伴って湿った咳に変化することもあります。こうした咳は、肺炎などの合併症の兆候となる場合もあります。風邪や新型コロナウイルス感染症など、インフルエンザ以外の呼吸器疾患と症状が似ているため、咳の質や持続期間、全身の状態を総合的に判断します。
自宅では安静を保ち、加湿や水分補給などで咳をやわらげるよう心がけましょう。症状が強い場合や長引く場合には、医療機関を受診して適切な治療を受けることがすすめられます。
参考文献
『インフルエンザ施設内感染予防の手引き』(厚生労働省)
『新型インフルエンザ 診療ガイドライン(第1版)』(一般社団法人日本感染症学会)
『呼吸器Q&A(一般社団法人日本呼吸器学会)』
『新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き第10.1版』(厚生労働省)
『新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A』(厚生労働省)
『令和6年度インフルエンザQ&A』(厚生労働省)