知床沈没事故の初公判で運航会社社長側が無罪主張「船長『荒れる前に引き返す』と」…予見可能性が争点に

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

北海道・知床半島沖で2022年4月、乗客乗員26人が犠牲になった観光船「KAZU I(カズワン)」の沈没事故で、業務上過失致死罪に問われた運航会社「知床遊覧船」社長・桂田精一被告(62)の初公判が12日午前、釧路地裁(水越壮夫裁判長)で開かれた。
公判では、事故の予見可能性が争点となる。
被告は罪状認否で、「船長との協議で『海が荒れる前に引き返す』と聞き、大丈夫だと思って出航を認めた」と説明。弁護人も「被告に事故は予見できなかった」として無罪を主張した。
同社は運航基準で「風速8メートル以上、波高1メートル以上」が見込まれる場合は出航しないと定めていた。しかし、カズワンは22年4月23日午前10時頃、「風速15メートル」や「波高2~2・5メートル」の予報が出る中で斜里町の漁港を出発し、午後1時20分過ぎに沈没した。
被告は事故当時、同社の安全統括管理者や運航管理者を兼任していた。起訴状では、被告が天候悪化に伴う死傷事故の発生を予見して出発を中止させる義務を怠った結果、乗客24人と船長(当時54歳)、甲板員(同27歳)を死亡させたとしている。
カズワンが本来は予報を踏まえて途中で引き返す予定だったとする被告側の主張に対し、検察側は冒頭陳述で、出航前に引き返す可能性があると乗客に説明するはずだが、事故当日はしていなかったと主張。被告が事故当夜の事情聴取で、通常のコースで運航予定だったと述べていることも指摘した。
事故を巡っては、同社の安全管理体制の欠如に加え、国側の監査・検査の不備も判明。国土交通省は同年12月、船舶の安全基準の強化や悪質業者への処分の厳格化など66項目に上る再発防止策を策定した。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。