山上徹也被告の家宅捜索をした警察官が証言…「テロリストのアジトのような部屋」から見つかった「ヤバすぎる危険物」

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「テロリストのアジトのように感じました」
そう証言したのは、山上徹也被告(45歳)の自宅を家宅捜索した奈良県警の警察官だ。
2022年7月、参院選挙の応援演説中だった安倍晋三元首相を銃撃した山上被告の裁判が続いている。11月5日に開かれた第5回公判では、薬物や銃器などの捜査を担当する警察官の証人尋問などが行われた。
この日の山上被告は、これまでとはやや異なる様子を見せていた。長い髪を後頭部で無造作に束ね、黒いトレーナーに、事件当日に履いていたものと似たカーキのカーゴパンツ姿。白いマスクをしていたが、時折、顎にずらす仕草を見せていた。
午後1時10分開廷。証人として出廷したのは、刑事部門の経歴が長く、山上被告の自宅を捜索して証拠物を押収した警察官だった。事件発生は勤務先の警察署の無線で知ったという。
「事件発生を知り、捜査本部が置かれている奈良西警察署管内に向かった」(証人として出廷した警察官)
そこで家宅捜索への参加が決まった。犯人の供述に関わらず、事件直後に自宅を捜索するのが捜査のセオリーだという。事件に関する証拠が残っていることが多いからだ。
検察「被告人方に向かうまで、事件について得た情報は?」
証人「被告は宗教団体に恨みを持っていた、と断片的に聞いていた」
現場では具体的な宗教団体の情報は共有されていなかったというが、事件直後には山上被告の“動機”について警察は把握していたことになる。
検察「犯行態様については?」
証人「手製の銃器を使った犯行だとは知っていた」
検察「手製の銃は実物を見ていた?」
証人「はい」
検察「事件前、手製の銃を見た経験は?」
証人「ありません」
検察「どういう構造、方法で銃弾が発射するのかわかりましたか?」
証人「見た目、銃口がここだと想像はついたが、具体的な仕組みはわからない。火薬で飛ばすと想像した」
検察「自宅にはどんなものがあると思っていた?」
証人「同じような手製銃、作るための火薬などがあると思った」
山上被告の自宅は、事件現場となった近鉄・大和西大寺駅の隣駅近くにあった。家賃3万円台、6畳1Kタイプの居室。ここに一人で住んでいた。
捜索には約20人の警察官が従事した。機動隊爆発物処理班、薬物銃器係、奈良西署機動捜査隊、科学捜査研究所の職員などで構成され、防護装備を身に着けた警察官の姿もあった。
「自宅内には手製銃や火薬な、爆発物があると思われていた。暴発する危険もあった」(証人として出廷した警察官)
周辺では銃器の暴発や火薬の爆発に備え、住民は避難が呼びかけられた。当時、山上被告自宅付近を取材していた記者はこう振り返る。
「午後5時過ぎくらいだったと思います。自宅周辺には家宅捜索に向かう警察官が集まっており、マスコミや近隣住民、野次馬らが心配そうにその様子を見守っていました。万が一のことがあるかもしれない、と現場にも緊張感が漂っていました」
午後5時46分ごろ、家宅捜索が開始された。先行して入ったのは爆発物処理班だった。
「ほかにも手製銃や火薬物、爆発物が仕掛けられている恐れがありました。ドア周辺には防爆マットを立てかけ、専門の装備をした爆発処理班が先行して入った」(証人として出廷した警察官)
すると爆発物処理班は、リビング内で手製銃6丁を発見した。
証人「リビングに手製銃が6丁あったが、一つの銃口が入口のほうを向いているように見えた。リビングに入ってすぐ右あたりにありました」
この時、山上被告は小さく何度もうなずき、弁護士に話しかける場面も見られた。のちの弁護側からの反対尋問で、入り口に向けられていたとみられた銃口の向きは前か後ろかを尋ねられ、証人からは明確な回答が得られなかった。現場にはそれほどまでの緊張感が漂っていたのだろう。
暴発の危険があったため、手製銃6丁はまず安全確保の上で搬出された。
ほかにも銃器などが見つかる可能性があったことから、警察官は室内をくまなく捜索した。すると玄関で自民党のパンフレットが発見された。さらに万力、工具類、コード類なども次々に発見されていった。
証人の警察官によると、山上被告の自宅は物が散乱し、足の踏み場もない状態だったという。法廷では当日撮影された室内写真も公開されたが、両方の壁には棚が置かれ、中には大量の本やファイル類が収められていた。それ以上に多くの物が多く、段ボールや袋などで床も見えない状態だった。
棚からはライフルなどにつけるスコープ、薬莢、さらに複数の火薬がプラスチック製品や缶の容器に入っていた状況で発見された。
証人はこれを「爆弾だと思った」と明かした。
「大量の火薬が容器内に入っていて、封をされていたので見た目で爆弾だと思った」(証人の警察官)
爆弾に関する知識は一般の警察官レベルという証人。火薬の入った容器には雷管がないことがわかり、爆弾ではないことが後に判明した。
「発見当時は爆弾だと思いました。でも雷管がないので、即座に爆発する恐れはありませんでした。ただ、近くで火器を使用すれば爆発する恐れはありました」
火器とはタバコのことだ。山上被告の自宅はタバコのにおいが充満していたという。押収物の中にはリトルシガーが含まれており、室内から吸い殻は見つからなかったというが、普段からそれを吸っていたとみられる。
大量の火薬がある室内で喫煙すれば、引火する危険は十分に考えられた。
火薬の発見で、警察は周辺住民の避難範囲を拡大した。前出・当時取材した記者もこう語る。
「容疑者(当時)の自宅から『爆弾が見つかった』との情報が流れ、現場の規制線の位置が広がった。一時騒然として、緊張感が走ったことをよく覚えています。不安そうな周辺住民が何人もいました」
銃器や火薬の発見で、警察官は「テロリストのアジトのように感じた」と証言した。もっとも、弁護側から「テロリストの定義」について問われたとき「定義はわからない」と語っていたことから、爆弾に見える火薬や銃器の発見に「テロリスト」を連想したのだろう。
銃の制作に関する道具や材料が大量に発見された山上被告の自宅。捜索に当たった警察官の目には「武器工場」のように映ったのかもしれない。
生活の痕跡が乏しかったことも拍車をかけた。ベッドや布団などの寝具類はなく、唯一あったのは敷布団か掛け布団かわからないような布だけ。
「それも床に丸まって置かれていた状態で、敷くスペースすらなかった」と証人は語る。
部屋の中央に置かれた作業机の上には殺人に関する書籍も複数見つかり、これも押収された。
証人尋問の後、手製銃も証拠品として法廷に持ち込まれた。中でも注目だったのが、黒い鞄から検察が取り出した手製3銃身パイプ銃。裁判員、裁判官らが実際に手に取り、重さや構造を確かめた。
ただし、山上被告は証拠品を検証する裁判員らのことはほとんど見ず、たまにちらりと目を向ける程度だった。
しかし、これまでの証人尋問や証拠調べでは、椅子に深く腰掛け、机にひじをついて背中を丸めていた山上被告だが、この日はどこか関心を示しているようにも見えた。弁護士の書類を覗き込んだり、何度も瞬きを繰り返したり、落ち着かない様子だった。
特に女性の裁判員が重そうに手製銃を持っていた場面では、何度もうなずき、何かをつぶやいていた。
次に黒色火薬の鑑定結果報告された。
自宅から押収された黒色火薬は19個容器に分けて入れられ、総重量は合計2248.9g。1本あたり10gの標準的な手持ちサイズの花火の場合に換算すると200本以上に相当する。
実際に裁判員らが証拠品を確認する間、山上被告はマスクをつけて検察のほうをじっと見つめ、弁護士と何か話していた。
最後に、山上被告が所有していた軽自動車から発見、押収された3枚のベニヤ板についての報告があった。3枚とも銃弾で空いたとみられる無数の穴が開いており、裏面が裂けた箇所もあった。銃弾による練習痕とみられる。
山上被告もこのベニヤ板を熱心に見つめていた。
家宅捜索の様子から、生活のすべてを旧統一教会への恨みに費やしていたことがわかる。改めて押収品を目にしたとき、いったいなにを思ったのだろうか。
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