世界一長く歯を磨いているのに、むし歯の罹患率は高い……「9割が歯の磨き方を間違えている」日本人の非常識とは

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日本人の歯磨き習慣は、世界の非常識――。
「日本人の9割が歯の磨き方を間違えている」と話すのは歯科医師の前田一義氏だ。
『歯を磨いても むし歯は防げない』著者の前田氏が、歯科医療世界一のスウェーデン式「世界標準のオーラルケア」の新常識をリポートする――。
スウェーデン人は、日本人の2倍近い量の砂糖を消費しています。1人あたり年間消費量は34.1キログラム! 彼らには自宅や職場など多くの場所で、同僚や家族とお菓子を食べながら息抜きする「フィーカ」という時間を楽しむ文化もあってか、砂糖の消費量が半端ないのです。
私もスウェーデンを訪問した際にフィーカにお呼ばれしたことがあるのですが、そこで出てくるケーキはすさまじく甘いものばかりでした。物量もすさまじく、参加者が持参したケーキが机の上に何種類も並べられ、せっかく用意してくれたものなので、すべて1つずつ食べたかったのですが、苦戦を強いられ、途中でギブアップしました。
ところが、それほど甘いもの好きなお国柄なのに、むし歯の罹患率(3歳、6歳、12歳の平均)をみてみると、スウェーデンでは17.3%(2021年スウェーデン国立保健福祉委員会)しかありません。日本は33.1%(厚生労働省令和2年歯科疾患実態調査)ですから、日本人がはるかに高いのです。
つまり、日本人はスウェーデン人の半分しか砂糖を摂っていないはずなのに、むし歯罹患率は2倍近くあるわけですね。
さらにいえば、歯磨きにかける時間も日本人は長い。世界40ヵ国4000万人を対象にした調査(2018年, Oral health Report)では、日本人が歯磨きにかける1日の時間が平均6.4分で、世界一の長さでした。
ということは……。日本人はスウェーデン人より砂糖の消費量が少なく、世界一長く歯を磨いているのに、むし歯の罹患率はスウェーデン人より2倍も高いということになります。
なぜこれほどまでにむし歯が多いのか……。そこには日本人の口腔ケアの常識が世界標準から40年以上遅れているという現実があります。
「むし歯予防には歯磨きが大切」ということは知っていても、その歯磨き法が最新の口腔医療から見ると間違いだらけなのです。残念なことに日本人は、歯磨き時間、歯磨き粉の選択、磨き方などさまざまな点で、効果の少ない磨き方を選択しています。
歯磨きに関する日本人の常識は、世界の非常識といっていいと思います――。ですので、これ以上、むし歯にならないための方法をひとつずつ解説していきます。
まずは歯磨き粉選びです。
日本では様々な歯磨き粉が売られていますが、大手から販売されているものも含めて、ドラッグストアなどの商品棚には、口の中がさっぱりするだけで、むし歯予防としてはほとんど効果がないものばかりが数多く並んでいます。
ここまで最新科学を無視した「むし歯に対して無頓着な歯磨き粉」が数多く売られているのも、「フッ素は歯を強くする」という世界常識のひとつが日本では、そこまで浸透していないからかも知れません。
むし歯は、口内の細菌が食べカスなどの糖質を分解して作り出した酸によって、歯が溶けてしまうことをいいますが、フッ素には歯を強くして同じphでも歯を溶けにくくする作用があります。一方で再石灰化の働きを促す作用もあり、穴があく前に歯を修復する能力が増します。
またフッ素が取り込まれると、歯の表面が「ハイドロキシアパタイト」から「フルオロアパタイト」に変わります。それによって歯が強くなる。そうした効果によってむし歯リスクを大きく減らすことができることがわかっています。
ですので、むし歯を予防したいのなら、「フッ素が配合された歯磨き粉」を選ぶべきとなります。
本気でむし歯になりたくないのであれば、単に「フッ素配合」と書かれているだけの歯磨き粉も選ぶべきではありません。そういったものは、むし歯予防としてほとんど効果がない濃度でしか配合されていないものが多数あるからです。
効果があるのはフッ素の濃度が高く、明確に数値がかいてあるものになります。フッ素濃度の単位はppmで記されていますが、理想は1500ppmです。それに近いものを選ぶのがむし歯予防のための初歩的な第一歩になります。
日本では2017年からようやく上限が1500ppmになり、上限に近いフッ素濃度の歯磨き粉が売られるようになりました。まだまだ少ないですが、高濃度のフッ素が配合された歯磨き粉は「1450ppm」など、具体的な数字が記載されています。購入する際は、数字を確認することが大事です。
とはいえ、歯の悩みは人それぞれです。知覚過敏や歯の色に悩まれている方も多いでしょう。
ですので、歯磨き粉を買うのであれば、まずは高濃度のフッ素が配合された歯磨き粉を選択。そのうえで、知覚過敏、ホワイトニング効果など、ご自身が求めている効果がついたものを選ぶのがベストな選択になります。
つづく『「歯を磨きすぎると知覚過敏に」「歯磨き粉は2センチ」……ほとんどの日本人が勘違いしている歯磨きの世界常識とは』では、前田氏がむし歯にならない歯磨き方法や、歯ブラシの選び方などをお伝えします。
【つづきを読む】「歯を磨きすぎると知覚過敏に」「歯磨き粉は2センチ」……ほとんどの日本人が勘違いしている歯磨きの世界常識とは

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