強烈なにおいと散乱するゴミ…孤独死した母の部屋で遺品整理業者が見た光景

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故人の残した品を整理する「遺品整理」は、時間と労力がかかる作業です。そのため、最近では専門の業者に依頼する方も増えています。そこで今回は、グループ合計で18万件もの片付けを実施してきた「遺品整理プロスタッフ」に取材。代表取締役社長・石田毅さんに実際にあった事例を教えてもらい、「遺品整理」の仕事のリアルに迫ります。
今回ご紹介するのは、長年疎遠だった実母が孤独死したことを、警察からの連絡で初めて知った60代女性のケースです。
遺品整理を専門業者に依頼する場合、多くは見積もり、契約、片付けという流れで進みます。今回も女性からのお問い合わせを受け、石田さんも見積もりのためにまずは現場に向かったそうです。
部屋に一歩足を踏み入れると、遺体はないものの、なんとも言えない強烈なにおい…。床にはコンビニ弁当のあき容器が散乱し、カーペットには虫がわき、ベッドには人型の痕跡が残っているなど、壮絶な状況が広がっていたのです。
さらに、室内には尿パッドやペットシート、新聞紙があちこちに散乱し、すべてに排泄の痕跡が残されていました。じつは石田さんによると、排泄をトイレ以外でするいう状況も、けっして珍しいことではないそうです。
「依頼者が語っていたのは、お母さまが『なんでも自分でできる人だった』ということでした。きっと、子どもに世話をかけたくない、惨めな姿を見せたくないといった思いがあったのではないでしょうか。助けを求めることができず、心を閉ざしてしまう。そんな高齢者の心情は、共感できる部分があるような気がしますよね…」(石田さん、以下同)
石田さんは遺品の回収量をはじめ、部屋の広さや状態を細かくチェックし、見積もりを作成しました。提示された内容には依頼者も納得し、正式な契約を締結。後日、片付け作業を本格的に進める運びとなったのです。
そして訪れた作業当日。複数人のスタッフが現地に入り、現金や権利書などの貴重品が紛れていないか慎重に確認しながら、必要なものと不要なものを選別していきます。
「形見分けの品や手元に残す品、不用品などに丁寧に仕分けながら、もし買取りできるものがあれば、作業費用からその分差し引かせていただく場合もあります。これらの作業を終え、はき掃除をしたら基本的な作業は終了。その後、依頼者の方に最終の確認を行っていただきます」
60代女性に作業終了の報告をすると、見違えるようにすっきりと片付いた部屋を目にし、しばらく呆然としたあと、安堵の表情を浮かべ、想像以上の仕上がりに感謝の言葉を述べられました。そして続けて、「じつの娘でもできなかった大変なことを、どうして他人なのにできるのでしょうか…?」と率直な疑問を投げかけられたそうです。
同様の質問はこれまでにも何度も受けてきたという石田さん。その理由は2つあり、まず1つは、石田さんが学生だった16、7年前にさかのぼります。
「祖母が亡くなり、家族は深い悲しみに暮れていました。でもその一方で住居の退去期日が迫っていたため、早急に立ち退きの準備を進める必要があったんです。当時は今のような専門業者がほとんどなく、選択肢もごくわずか。電話帳をめくりながら苦労し、ようやく見つけた業者に、藁(わら)にもすがる思いで依頼しました」
しかし、その業者の態度はあまりにも酷いものでした。思い出のつまった遺品を放り投げたり、「くっさ」などと心ない言葉を浴びせられる始末。さらには、法外な値段を請求されるという目に遭ったそうです。
心に深い憤りを抱え、「そのとき感じた悔しさや心の怒りは、今でも忘れることができません」と石田さんは語ります。
そして2つ目が「他人だからこそ」という理由です。金銭的な理由で施設に入れない方、疎遠になった親子関係、身内では片づけが困難なケースなど、家庭ごとに異なる複雑な事情をたびたび目の当たりにしてきた石田さん。
「思い入れや愛着がたくさんある分、家族だと割りきれずに片付けがしんどいということもありますよね。でも、業者は故人や親族から適度に距離があり、対価の発生する“仕事”だからこそできることがある。
他人だからこそ丁寧な仕事をしようとも思えるし、遺品整理に向き合って故人に思いを馳(は)せることが、ご遺族の気持ちの整理につながることもある。実際にそういう場面に何度も遭遇してきて、少しでもお役に立てたことがうれしいんですよね。だから続けていけるんです」
「遺品整理」という仕事は、故人や遺族に寄り添い、その思いをともに尊重するもの。そしてそれはただの片付けではありません。遺品整理は、『家族』として故人に最期のお別れをするためのかけがえのない時間なのだと教えてくれました。
※ 実際の体験をもとに、依頼者および遺品整理業者の許諾を得て制作しています。個人情報保護の観点から、登場人物や一部の状況は実際の事例を損なわない範囲で変更しています

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