世界的にEVシフトの勢いが鈍化する中、ハイブリッド車(HV)需要が高まっている。
トヨタは全方位戦略でエンジン車から、HV、PHV、EVまで幅広く展開し、7月の世界販売・生産実績が過去最高を記録。スバルやマツダなどトヨタと提携する企業も好調だった。
一方、人気の高いHVを北米市場に投入できていない日産は苦戦が続く
欧州では、EVシフトを急いだボルボが3000人削減に追い込まれ、ドイツ勢も業績悪化が深刻だ。中国ではEV生産能力が世界需要を上回る過剰状態が続き、価格競争が激化している。
リスク分散に成功したトヨタが圧勝する一方で、EV偏重や戦略の偏りが他社の明暗を分けたといえる。
前編記事〈やっぱりトヨタのハイブリッド車の圧勝だった…EVつくり過ぎで自滅した中国もろとも沈む「世界のEVシフト勢」〉では、こうした状況を詳しく解説している。
事業環境の厳しさが高まる中、自動車製造技術も変化し始めた。目立つのは、ハイブリッド車(HV)の製造技術が急速に高まっていることだ。
トヨタと世界首位を争うフォルクスワーゲンは、マイルドハイブリッド車を展開しているものの、いわゆる“HV”はまだ投入できていない。
それだけ、回生ブレーキを組み込んで発電を行い、エンジンとモーターの円滑な駆動を実現することは、コスト的にも、製造技術的にも難しいことが確認できる。
HVに関しては、完成車メーカーとサプライヤーの協業体制の拡充が欠かせない。
現在、懸架ばねやエンジン、伝達系の部品、車載用モーター関連の中核部品を製造するニッパツは、HV向けのモーター関連事業の成長加速に向け、回転部品の製造体制を拡充している。排気系部品大手の三五は、欧州勢のHV分野での投資拡充をにらんでHV排気関連部品の供給体制を引き上げている。
アイシンは、もともとEVをターゲットにしていた駆動システム“eアクスル”をHVにも搭載可能にする。こうした国内サプライヤーの取り組みは、トヨタがHV、PHV、EVに共通したプラットフォーム(車体)で導入しようとしている。
また、トヨタと一部で提携する独BMW、BMWとエンジン開発で協業するメルセデス・ベンツなども、わが国のHV関連パーツ、システムを必要とする可能性は高い。
HV重視の流れは、半導体分野にも波及した。
パワー半導体大手の富士電機は、デンソーと協業して炭化ケイ素(SiC)チップの供給体制を構築しようとしている。これは、世界的なHV需要の取り込みに加え、主要国の政策リスクへの対応を狙った戦略だ。
特に、トランプ関税、米国の外国人労働者に対する締め付けに対応しつつ、事業運営の効率性を引き上げるため、他企業と協働することの重要性は高まっている。
米国では、韓国の現代自動車の建設現場で、韓国人の労働者が拘束された。この影響で工場建設は遅延した。トランプ政権は「米国人を雇え」と世界の企業に明示したといえる。
それにより、ここから、米国の製造拠点を整備し供給網を敷こうとする、フォルクスワーゲンなどの競争力が低下することが懸念される。
こうした変化に対応するため、北米市場を中心に自動車関連企業の合従連衡は避けられない。
中国では、国内メーカーの急速なEVシフトで、海外企業が収益を持続的に上げることは難しい。車載用バッテリーも供給過剰になっている。しかも、中国政府の政策次第では、市場環境はさらに悪化する可能性もある。
世界の大手自動車メーカーが電動化やSDVに対応するため、北米市場の重要性は一段と高まるだろう。
注目される企業の一つが日産だ。
これまで日産は主にEVで北米市場に勝負をかけてきた。しかし現在需要が高いのはHVだ。日産はニーズを読み誤ったと言わざるを得ない。2026年度にようやく北米市場にHVを投入するが、これも遅きに失した感は否めない。
日産が採用するハイブリッドシステム「e-Power」は、高速走行時の燃費が悪く、長距離移動を主とする北米市場には向かないという指摘もある。
今後、日産は追加のリストラを余儀なくされ、経営再建が難しくなることも懸念される。
こうした状況の悪化を食い止めるため、稼働率が低下した米国工場をいかに活用するかは戦略の要諦になるはずだ。
日産は、ミシシッピ州とテネシー州に3つの工場を持つ(テネシー州の1つはエンジン工場)。ミシシッピ州ではホンダのピックアップトラックを製造する方向のようだ。
ポイントは、こうした協業・提携が本格化するか否かだ。
テネシー州の工場などでホンダと協業し、より高いHVの製造技術の開発に取り組めるならば経営悪化に歯止めがかかる可能性はある。その実現は、日産の経営再建だけでなく、国内のサプライヤーの業績、関連分野での雇用にも影響する。
世界の自動車産業で100年に一度の変革が加速する中、わが国の自動車産業を取り巻く環境の厳しさは増している。そうした状況下、HV技術の重要性は増している。
その技術を本当に使いこなせるかどうか。当面、それが自動車メーカーの優劣を大きく左右することは間違いない。
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