愛媛県新居浜市の消防PRポスターがSNS上で波紋を広げている。このイラストは単に生成AIで作成されたのではなく、制作に協力した高校生が描いたデザインを無許可で読み込ませて作ったのではないか、という趣旨の批判が出たためだ。
だが、同市消防本部の担当者は、SNS上の批判には「事実と異なる部分がある」と取材に説明する。最初に依頼する段階から学生側の了承を得ており、完成品に対しても同意を得ていたとしている。また、今回の騒動後も、学生側から撤去を求める声は上がらず、「ポスターに一部の文言を足してほしい」と依頼されたとしている。
波紋を広げたのは、消防署の前で女性消防士が敬礼しているポスターだ。新居浜市消防本部が公式サイト上で公開した25年3月21日付の発表によれば、「消防職員の募集及び消防を広く知ってもらうこと」が目的。
この発表では、ポスターの制作過程を説明している。デザインやレイアウトは同市内にある高校の美術部が協力して作成。部員たちを消防署に招き、防火服や消防車両を見学してもらったという。最終的に9作品のデザインを提供してもらい、消防長賞として1作品をポスターデザインに採用した。
担当者によれば、先述の美術部にデザインと構図の考案を依頼したのは24年9月。最初から、原画をもとに印刷用のデザイン加工を行うと説明していた。印刷会社が加工するたびに確認しながら進めていったという。そして、生成AIで加工したポスターを25年3月下旬に公開した。
その約半年後の25年9月下旬、このポスターに対する批判がSNS上で広がった。無許可で生成AIに読み込ませたのではないかという趣旨の批判のほか、「学生の頑張りを無下にするな」「人の心が無さ過ぎてちょっと引く」など、学生への配慮が欠けているという指摘も上がった。
だが担当者は9月25日、制作過程で学生側の了承を得ていると取材に説明。今回の作成に関わる消防本部と印刷会社、学生側、学校側が「こういう形にしていきましょう」と協議しながら進めていったと話した。つまり、「無断で」生成AIに読み込ませたという事実はなかった。
学生への配慮が欠けているという指摘についてはどう受け止めるのか。担当者は、「学生側が聞いていなかったということであれば、謝罪しなければならないということになりますが、学生とも一緒に進めてきた経緯がございます」と述べる。
今回の騒動後、消防本部側は学校に行って謝罪したという。制作した部員からはポスターに一文を加えてほしいという要望があったといい、「生徒の原案にデジタル処理を施しています」との注意書きを足した。市内のポスターにも、この一文をシールで貼る方針だ。
最後に担当者は、「ポスターを制作してから約半年経ったあと、事実とは異なることで炎上してしまったのは残念だと感じています」と心境を明かしている。