長時間映画のヒットが相次いでいる。
興行収入100億円超を記録した「国宝」のほか、アニメ映画やハリウッドのアクション大作も2時間30分を超える。19日公開の「宝島」の上映時間は3時間を超え、映画の長時間化の流れが続いている。(文化部 近藤孝)
8月27日、横浜市内の映画館で「宝島」の試写会が開かれた。3時間11分の作品を見終わった50歳代の会社員女性は「3時間と聞き、中だるみやおしりが痛くならないか心配していたが、そんなことは全くなかった」と、満足げだった。
同作は戦後の沖縄を舞台に、激動の時代を駆け抜ける若者たちの姿をエネルギッシュに描く。直木賞を受賞した真藤順丈さんの原作小説は文庫本でも上下巻になり、大友啓史監督は「最初にプロデューサーと話した時、『5時間の映画だな』と思った」と振り返る。
映画の上映時間は2時間前後が一般的だ。長くなれば1日の上映回数が減るため、配給会社側は二の足を踏んだという。それでも「沖縄の歴史を2時間半にまとめるのは厳しい」という思いが強く、結局3時間を超えた。
同じく吉田修一さんの長大な小説を原作とする「国宝」も豪華絢爛(けんらん)な歌舞伎の舞台を再現し、2人の俳優の歩みを描いて上映時間は2時間55分となった。映画などのレビューを載せるインターネットサイト「Filmarks」には「3時間があっという間」「退屈しなかった」という投稿があふれ、観客に支持された。
かつては「風と共に去りぬ」(1939年)や「七人の侍」(54年)、「ベン・ハー」(59年)など文芸作品や歴史大作を中心に3時間を超える作品もあったが、最近は長時間化が若者向けのエンターテインメント作品にも及んでいる。アニメ映画「劇場版『鬼滅(きめつ)の刃(やいば)』無限城編 第一章 猗窩座(あかざ)再来」も、トム・クルーズさんのスパイアクション「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」も2時間半を超える。
配信が普及し、長時間作品や連続ドラマの「一気見」に慣れた若者層には、長時間映画も抵抗がなさそうだ。映画ジャーナリストの大高宏雄さんは「今は興行の常識にとらわれず、監督ら制作者の意向を反映させた映画作りが行われるようになっているのではないか。見せ場を堪能できるエンタメ大作が、観客に受け入れられている」と指摘する。