待っているのは「いまより希望がない生活」です……若者たちが知らない熟年離婚のヤバすぎるリアル

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定年を迎えてからは外出の機会はめっきり減り、毎日家で妻と二人っきり。「そんなゆったりした生活も悪くない」なんて思っていたのに、なんだか妻はずっと不機嫌だ。
共通の趣味もないため盛り上がる話題もない。「秋に旅行でも行こうか?」と声を掛けても、返ってくるのは「一人で行けば」と素っ気ない返事……。
退職後に、突然関係がギクシャクしてしまう夫婦は少なくない。これまで仕事に人生を捧げてきた夫が、妻との時間をどう過ごしていいかわからなくなるからだ。妻もまた、家事もロクにしない、年金以外収入のなくなった夫を冷たい目で見るようになる。
「定年後の夫婦関係なんてこんなものか。息苦しい老後を過ごすくらいなら、いっそ離婚して、新たな人生を切り拓くのもひとつかも。
そういえば、馴染みのスナック『ソール・デ・ソーニ』のナルミちゃん、この前酔っ払ったときに『俺と一緒にならない?』と尋ねたら、まんざらでもなさそうだったぞ。よし、俺もまだまだ若い。第二の人生を始めるのに遅すぎるなんてことはない……!」
こんな妄想を勝手に膨らませ、定年後の離婚に踏み切る夫婦が急増中だ。厚労省の統計によると、令和6年の離婚総数18万5895件のうち、同居歴20年以上の夫婦による「熟年離婚」は4万686件、うち35年以上の「超熟年離婚」は7194件。しかも、その割合は年々増えている。
「定年を機に、離婚で新たな人生を」と思う気持ちはわからないでもない。
しかし、現実の熟年離婚は想像しているようなモノにはならないことを知っておくべきだ。
「若い夫婦の離婚と比べると、熟年夫婦の離婚はひと言で言えば『総じて暗いもの』であることを知っておくべきです」
こう語るのは、熟年離婚に関する相談を数多く受けてきた法律事務所キノール東京の辻千晶弁護士だ。
「若い頃の離婚は、その瞬間は苦しくても新しい生活や新しいパートナー探しに希望が持てます。ところが定年後離婚の場合、経済面でも健康面でも『新たな希望』を見出すことが難しくなるのです。両親の介護問題はもちろんのこと、自分が倒れたり入院したりするときにも、パートナーに頼ることができません。基本的には『いまより希望がない生活』が待っていると想定したほうがよいでしょう」
真っ先に問題になるのは経済面だ。FP事務所「ゆめプランニング」代表の大竹麻佐子氏が説明する。
「貯金や退職金、そして株式などの財産も原則半分分与しなければなりません。その上将来受け取る年金も一部を妻に分割しなければなりませんし、今後収入が増える見込みはほぼないので、多くの場合離婚後の生活は苦しくなります。
家を売ってそのおカネも分けていた場合、一人で住むところを探す必要もある。75歳、80歳になっても部屋を貸してくれるところがあるのかなど、住む場所にも苦労してしまうのです」
健康面でも、特に男性は離婚後の生活が乱れやすい。
71歳の山本文雄さん(仮名)は、化学製造メーカーを定年退職後、67歳のときに35年連れ添った妻と離婚した。
「ある日の夜、酒に酔った勢いで妻に怒鳴ってしまったんです。出てくるつまみがいつも同じだとか、そんな些細なことがきっかけでした」
いつもは耐えるだけの妻だが、この日は違った。
後編記事『「皿一枚の所有権で半年モメるケース」もある……人間の本性が浮き彫りになる、熟年離婚はこんなにヤバい』へ続く
「週刊現代」2025年09月01日号より
【つづきを読む】「皿一枚の所有権で半年モメるケース」もある……人間の本性が浮き彫りになる、熟年離婚はこんなにヤバい

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