富士山の山梨県側登山道・吉田ルートで今季、サンダルなど軽装登山者の入山に対し、県職員が「拒否権」を発動できるようになった。
同県では昨季から通行料の義務化など登山規制を導入した一方、訪日外国人観光客らの軽装登山が課題となっていた。条例改正により指導に従わない登山者の入山を拒否できるようになり、山開きから約1か月半で800人超に指導を行うなど啓発を進めている。(富士吉田通信部 涌井統矢)
「富士山は天候の変動も激しく危険な山。安全のために、しっかりとした装備がないと入山を許可できません」
15日、5合目の登山口に設置されたゲート前で同県富士山観光振興グループの浦郷敬さん(47)が登山客に指導すると、雨具のズボンを持っていなかった東京都中野区の中国人留学生(27)は売店で購入。「富士山への認識が甘かった。気をつけて登る」と話し、登山道に向かった。
同県は昨季から、通行料の支払い義務化や夜間のゲート閉鎖などの登山規制を導入。問題視されていた夜通し登る危険な「弾丸登山」はほぼ解消された。ただ、サンダルや半袖短パン姿で登頂を目指す登山者の姿は依然として多く、県職員らが登山口で注意しても、訪日客の中には反発したり無視したりするケースが絶えなかったという。
そのため、県は今年3月、登山道規制のための県条例を改正し、県職員の判断で軽装登山者の入山を拒めるよう明記。県の非常勤職員として登山客への安全指導をしてきた富士山レンジャーにも任期付きの正規職員として同様の権限を与えた。
富士山頂は夏場でも最低気温が5度以下になることが多く、7月上旬や8月末以降は氷点下になることもある。県職員とレンジャー計約15人が交代で5合目に常駐し、上下セパレート式の雨具や防寒着、登山に適した靴の用意がない場合は近くの売店などでそろえるよう求めている。
県によると、7月1日の開山から今月14日までに計864人に指導。ほぼ全員が指導に従い、必要な装備をそろえたという。県警によると、吉田ルートの遭難者は昨年1~8月に前年比5人増の12人だったが、今年は8月19日までに2人。浦郷さんは「安心安全に登山していただくためにも必要な装備の周知を継続していきたい」と話した。
軽装登山を巡っては、静岡県も今季から登山者に対し、事前に啓発動画の視聴などを義務づけている。県富士山世界遺産課は「事前学習で登山のルールへの理解を深めてから登ってもらいたい」としている。