映画『鬼滅の刃 無限城編 猗窩座の再来』は大ヒットとなっている。
稼げるとわかっている作品には、おそろしい金と手間暇がかけられて、どんどんすごいものができていく。ちょっと夢のような世界だとおもう。
インターネットのニュースを見ていると、「鬼滅の刃」観客のマナーが話題になっている。映画館での基本マナーを守っていない人が目立つということで、それもまた、空前の大ヒットの余波らしい。
私は封切りの翌週に見に行った。
混んでいるのが予想されたから平日の深夜の回に行った。23時すぎてから始まって、終わりが午前2時をすぎる。もう終電はない。
空いているかとおもったが、まあ、めちゃ混んでいるわけではないが、でも深夜にしては混んでいた。若いカップルが多くて、たぶん、60人から70人くらいいた。座席は400ほどある大きな劇場だったので、ぎゅうぎゅうではないが、視界にけっこう他の客が目に入るという混み具合である。深夜としてはかなりの混雑だ。
みんながみんな、売店で飲み物とポップコーンを買っている。なんか律儀な深夜族である。
売店が9階で、劇場は13階なのでエスカレーターで上がっていくが、どのエスカレーターもポップコーンのかけらが落ちまくっていて、ちょっと驚いた。
上のエスカレーターに乗り換えても同じくらい落ちているので、ずっとこぼしつづけているらしい。「鬼滅」を見に来た人が落としていったポップコーンかけらなのだとおもわれる。帰り道に不安を持っているチルチルとミチルがいっぱい来てるのかもしれない。
近くのコンビニで安いペットボトルとポテトチップを買って持ち込むというような悪いマナーの若者はあまりいないようだ。でも歩くときにポップコーンをぼろぼろこぼすのはあまり気にしていない。
不思議な風景である。
無限城での戦いは長い。
聞くところによると、無限城編は三部作の予定だという。
今回の猗窩座編が第一部。あと2つある。
でも、それで「鬼滅の刃」の最後まで行き着くことができるのだろうか。
少し詳細に検討してみる。
今回の『猗窩座の再来』は無限城編の第一部。
原作漫画でいえば、16巻から18巻になる。
16巻の138話で産屋敷が爆破され、映画は139話の柱と炭治郎が集結するところから始まる。
無限城が出現して全員が取り込まれ、童磨と胡蝶しのぶの対決、獪岳と善逸、そして猗窩座と義勇&炭治郎の決着までが扱われている。
原作157話の途中まで、である。
157話で、童磨がカナヲに名前を聞いていたところまでだ。まだカナヲは答えていない。
このあと、「私は栗花落カナヲ、胡蝶カナエと胡蝶しのぶの妹だ」と言う。
カナヲの決意の表明だ。
無限城第二部はそこから始まる。
18巻、157話の7ページめ(119p)だ。
カナヲの決意が聞きたい。
原作は全部で23巻、205話で構成されている。
「無限城編第一部」で139話から157話と、19話分進んだ。
残りは49話ぶんとなる。
さて、のこり49話をどこで区切って映像化していくのか。
原作漫画内容を区切るとこうなる。
157話-163話(7話ぶん)童磨戦(カナヲ・伊之助)
164話―179話(16話ぶん)黒死牟戦(悲鳴嶼・不死川兄弟・時透)
180話―203話(24話ぶん)鬼舞辻無惨戦(総力戦)
204話・205話 後日談(2話ぶん)大正編と令和編
黒死牟戦から鬼舞辻の初戦にかけては「伊黒&甘露寺+愈史郎の鳴女戦」も同時進行。
童磨戦は7話と短いので、ここだけでは1本にしにくい。
そのため「童磨+黒死牟」の戦い23話で2部、残りで3部となるのがいちばんわかりやすい区切りである。
ただこれだと1本ずつがとても長い。
今回の「無限城編第一部」が19話ぶんで155分(2時間35分)の映画になっている。
煉獄さんの「無限列車編」は原作14話ぶんで117分の映画であった。
単純に計算するなら、無限城編で1話ぶんの映像化が8分10秒ほど、無限列車編で8分21秒ほどかかっている。
強引に1話8分と丸めて計算しても、「童磨+黒死牟」で184分(3時間と4分)、鬼舞辻無惨を全部やったら、3時間28分となる。丁寧に作ったらさらに十数分は延びるはずで、1本4時間近くとなると、なかなか厳しい長さである。
2部はそのまま、3部は前後編に分けて同時に公開、というあたりがいいのかもしれない。
鬼舞辻無惨との戦いを2つに分けるのなら、まんなかは191話あたり。
炭治郎は離脱して、集結した柱が全て潰されたように見えたところ、あのあたりで区切ることになる。
長さではそれでいいが、テレビアニメではなく、映画館で見る1本として、鬼殺隊が全滅したように見えるところで終わって放り出されたら、客が怒って暴れ出すかもしれない。むずかしい。炭治郎が復活した姿だけを見せればいいのか。
「無限城編」3部作というタイトルにこだわれば、鬼の新ナンバー4の「鳴女」が消滅したとき無限城が消えるので、無限城の戦いは183話まで、そこから先は「最終決戦・無惨との市街戦」となる。ここで区切れればわかりやすい。
しかし、黒死牟が消滅するのが178話で、無限城が消滅するのは183話なので、6話しかない。
黒死牟編で区切ると、無限城消滅編は6話で1本となってしまって、成立しない。
切りにくい。
本気で区切りを考えるととてもむずかしい。
1本3時間を超えることを承知で、のこり49話ぶんを2本として強引に映画化するか、穏当な長さにするためにやや不本意なところで区切って3本とするか、どちらかになる。
いままでの制作姿勢からすると、納得しにくい区切りというのは作ってないので、残り2本で作る可能性が高いように感じる。
いや、それにしては長い。4時間1本のアニメは耐えきれない人が多いのではないか。
どうするのだろう。
固唾を呑んで見守るばかりである。
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