「最後は夫のすべてを奪い、捨て去るつもりです」50代夫や義両親から罵倒され続ける40代妻の壮大な復讐プラン

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夫婦は伴侶とどこで出会うことが多いのか。ゼクシィの「結婚トレンド調査2022」(全国推計値)によると、近年は次のような結果になっている。
職場や学校が多いが、最近は恋愛・結婚アプリなどネットでの出会いも増えている。若者の人口減少が顕著な地方などでは、結婚相談所を利用する方法も健在だ。いわばプロのマッチングコーディネーターが出会いから婚約までをサポートしてくれる安心感は心強いものだろう。
しかし、結婚相談所やお見合いのような安全・安心なシステムがすべてうまくいくとは限らない――。
九州地方に住むA子さん(40代)は結婚20年。在日外国人3世のA子さんは、在日男女専門のお見合いで結婚した夫のB男さん(50代)と、二人暮らしだ。
夫は親から引き継いだ会社の経営者。商売には浮き沈みがあって多額の借金を抱えた時期もあったが、最近経営は安定している。しかしその安定ぶりとは裏腹に、ここ10年は夫からの絶え間ないモラルハラスメントに苦しめられている。
「結婚した当初は優しかったんです。私のことをいろいろ気遣ってくれたし。でもそのうち本性が出始めて。何かと私を見下しては、支配しようとしだしました」(A子さん)
とにかく暇さえあれば、LINEのメッセージ送信ではなく電話をかけてきて、A子さんを家政婦のようにこき使う。
「私も会社の経理や事務をしているので、社内の細かいことはもちろん、『自分の財布が見つからない。どこにある?』『今夜の夕食はなんだ?』『何時に帰ってくるんだ?』などと小うるさく聞いてきます。無視するとしつこくかけてくるので、電話には出ます。私は淡々と答えるだけですが」
夫は自分が稼いで妻を養ってやっているというプライドと見下す気持ちがあるので、料理、掃除、近所付き合いなど、家事一切をA子さんに任せきり。
以前A子さんが新型コロナウィルスに感染して40度以上の高熱で苦しんでいる時は「俺の飯はどうなるんだ?」と言って、買い物も外食も拒否。結局、A子さんが病をおして夫の食事を作り、洗濯物を干して取り込んだ。夫は雨が降っても洗濯物の取り込みはしなかった。妻が病に臥しても、この有様だ。
「夫だけならまだ我慢できます。夫の父母である舅や姑も私を家政婦扱いなんです。例えば、在日の家庭は法事が多いんですが、取り仕切りや雑用は嫁である私だけの役目です。食事の支度などで私が朝から晩まで忙しく立ち働いても、誰も手伝おうとしません。椅子に座って優雅に食事をするかおしゃべりするかどっちか。昭和の時代の嫁ならありうるけど、令和の今でも、当たり前のように私に押し付けてきます」
夫だけでなく舅や姑がつらくあたるのは、子供を産めなかったことも要因になっているとA子さんは分析する。
「夫は長男なので、血統をつなぐ後継ぎを嫁が産むべしと思い込んでいました。そして妊娠を継続できないのは、女の私に非があるとも。挙句の果てに舅は『子供ができないのは、A子の食生活に問題がある。今すぐ改めろ』とか『A子はIT系企業で働いていたから、電磁波を散々浴びている。だから妊娠しないんだ』とか、私を罵りました。でも検査をすると私ではなく、夫の生殖機能に問題があったことがわかったのです。それでもガンとして譲らず、私に非があると言い続けました」
とはいえ当時のA子さん自身も子供が欲しくて、不妊治療を経て妊娠。が、どうしても出産までいきつかず、流産を繰り返した。姑が「妊娠は病気ではない」と言い張り、流産しやすい時期に家事や事務の仕事からA子さんを解放してくれなかったのも、原因の一つだった。
姑も自分の姑から同様に、否、それ以上に苛烈な嫁の役目を課せられたらしい。「妊娠は病気ではない」というのは、自分の姑から放たれた言葉。いずれにしろ、こんな環境で子供をちゃんと育てるのは無理だったとA子さんは振り返る。
しかし、一番許せないのは、「夫にしろ、舅や姑にしろ、私のことを馬鹿だと決めつけていることです」とA子さんは悔しさを滲ませる。
夫は有名大卒で語学も堪能だ。それゆえ周囲の誰よりも自分は頭がいいと自負している。舅や姑も「うちの自慢の長男です」と親バカぶりを隠さない。
「偏差値的にはそうかもしれませんが、夫の生活能力はゼロ。私がいなければ生活できないんですから、ある意味馬鹿ですよ」
ある時、舅が大病をしたのでA子さんが病院に付き添い、医者の見立てを聞く事になった。
「そしたら、夫は開口一番『お前、医者の言うことを理解できんの? オヤジも不安がってるんだよ』と吐き捨てるように言ってきたんです。自分の親の付き添いをしてもらっているのだから、普通は『ありがとう』と言いません? 呆れ果てましたが、担当医師の言うことをスマホで録音して、書き起こして、重要な点を整理して夫に提出しましたよ(苦笑)。夫は黙って読んでいました」
さらに、常に反吐が出るほど悪い態度の夫が本当に“人間として終わってる”と思ったことがあった。
「私の誕生日に、夫がLINEを送ってきたんです。内容はなんだと思います? 『どうしようもない阿呆妻の操縦法』というタイトルのネット記事のURLです。『お前みたいな馬鹿、世の中にいるんだなあ』と書いてあって。もちろん誕生日のプレゼントなんてなし。よりによって、なんで私の誕生日にそんなひどいLINEを送ってくるのか。泣けて仕方がなかったです」
最悪の出来事を思い出して、A子さんは涙を滲ませた。
そんなLINEを送りつけつつ、夫は、A子さんがいる場所に必ずついてくる。彼がリビングにあるテレビを独占するため、A子さんは寝室で見たい番組を見る。そうすると夫も寝室にやってきて、テレビのチャンネルを勝手に変える。
「まるで幼稚園児でしょ? いや、子供なら可愛いですが、おっさんについてこられても鬱陶しいだけです」
また、A子さんが最近自分で始めた仕事にも理解を示さず、「そんなことをせず、家にいろ」と恫喝してくる。
「私なんて大した能力がないから、おとなしく家事をしていればいいって思ってるんでしょう。外でイキイキと働くのが癪に触るから、あれこれと嫌がらせをして、私のやる気を削ぐんです。そして仕事でストレスが溜まると、私に言葉の暴力を振るってスッキリするみたい。ある意味、私はサンドバッグですね」
なんで夫はこうなったか。もともとの性格もあるかもしれないが、前述の通り、自慢の長男として両親が溺愛して育てたのが大きい。
「きょうだいの中でも長男の夫はとにかく大事にされました。『B男は偉い! 頭がいい!』と50を過ぎた息子を褒めたたえるんです。で、夫の弟はみそっかすで、愛情を与えられなかった。でも、B男は大学を卒業してすぐに親の会社に入って社長になっているから世間知らずなんです。今、会社が安定しているのは自分が頑張っているからだと自慢していますが、経理や社内の面倒な細かい仕事、人間関係のもつれなどは、私が全部処理しています。裸の王様ですけど、社員は誰も『お前は裸だ』とは言えません。私はムカつくので、『あんたは言うほど偉くない』って言ってます」
しかも、どうやら、夫は外で入れ上げている女がいたのだが、最近フラれたらしい。
「なんで分かったかというと、女との食事代とかプレゼントで買ったもののレシートを、経費として処理するように私に渡すんですよ。でも最近レシートがなくなったんで、『ああ、女と切れたんだな』って。でも嫉妬心どころかなんの感情も湧きません。むしろ、外に関心の対象があったほうが、私がサンドバッグにならずにすむので気楽。適当に浮気でもしてくれたほうがいいんですよ。自分はモテると思っているらしくて、それをいちいち私に言うのが、これもまた鬱陶しいです(苦笑)」
こんな毎日を送っているのに、離婚はよぎらないのだろうか。
「別れないのは経済的な問題だけ。B男との生活は本当に嫌だけど、十分な生活費は渡してくれるし、肉体的な暴力はふるわない。夫のいいところはそこだけ。お金さえ渡しておけば、自分が優位に立てると思っているのでしょう。私には自活するだけの稼ぎはないし、自分の両親は早逝しているので別れても戻る家もありません。今は離婚するつもりはないです。だけど、何か嫌がらせをされる度に、私は『離婚しよう』と刃を突きつけています。夫は私がいないと困るので、黙りこむだけ……」
実はA子さんに重病の疑惑があった時期があり、その時のB男さんの狼狽ぶりは、傍目に見ても明らかで、「A子の病を一緒に乗り越える」と宣言したそう。しかし病の疑惑が晴れると、たちまちモラハラ夫に戻った。
こんな夫だが、外面だけはいいのでタチが悪い。他人にはニコニコと愛想がいいので“優しい人”という評判にご満悦だ。しかし妻の前では豹変して、他人の悪口てんこ盛りなので始末におえない。
それでも夫は最近“いいひと運動”を始めた。
「死ぬ前には“いい人”でいたいらしいんです。私に対しても言い過ぎたなって思ったらとりあえずは『ごめん』って謝ります。でも額面どおりには受け取りません。だって謝った舌の根も乾かないうちに、自分勝手なことを言い出して、またぞろ私をサンドバッグにしますから。私に重病の疑いがあった時も性根は変わらなかったし、そもそも自分がモラハラ夫だとは1ミリも思ってない」
生活習慣病のデパートの夫に対して画策していること
夫は糖尿病や高脂血性など、生活習慣病のデパートでもある。もし倒れたら看病はするのか? とA子さんに問うと「しません」とキッパリ。
「第三者のサービスに委ねます。このままだと夫のほうが早く逝きそうなので、それを待っている自分もいます。だけど私には子供がいないので、そのまま夫が逝ったら、夫婦の共有財産を義両親かきょうだいと分割しないといけないんです。舅や姑が『自分の財産は孫(夫以外のきょうだいの子)に譲る』と普段から言っているので、それも悔しい。それならば、夫の弱みを全部握って、財産の相続人を私だけにするという遺言を書いてもらおうかとも画策しています」
A子さんは続ける。
「B男はまだ親が生きていて、秘蔵っ子の自分を擁護してくれる人がいるから、私に対して強気でいられます。だけど彼らが逝ってしまったら、私しか頼る人間がいなくなる。その時には本気で別れようかと。私がいなくなれば、生活も仕事も立ちゆかなくなって困り果てるので、それが最大の復讐です」
A子さんは半分本気、半分冗談のように笑う。復讐をしようとする相手の公私を支えているのは自分であるという事実が彼女を支え、最後は夫を捨て去るつもりだと。
「これも私の運命なんです」とA子さんは呟く。冒頭のお見合いおばさんは何人もの身上書を持ってきたし、彼らと見合いもした。が、なぜだか初対面であまり印象が良くなかったB男さんと縁があった。さらには、どうしても子供を出産できなかったことや、自分に大病疑惑があったのにB男さんが変わらなかったことも。
A子さんのルーツの民族がよく言葉にする「運命から逃れられない」と、彼女は締めくくった。
結婚当初の蜜月期を経て、互いを思いやっていた夫婦は時間の経過とともにそれぞれ本性を現していく。その結果、最近は、熟年離婚も増えている。今後、A子さんに切り出された瞬間、B男は「まさか離婚されるとは」と愕然とするだろうか。もし、そんな厳しい未来を回避したいのなら、出会いの初心を忘れないことが大事なのだろう。
———-東野 りかフリーランスライター・エディターファッション系出版社、教育系出版事業会社の編集者を経て、フリーに。以降、国内外の旅、地方活性と起業などを中心に雑誌やウェブで執筆。生涯をかけて追いたいテーマは「あらゆる宗教の建築物」「エリザベス女王」。編集・ライターの傍ら、気まぐれ営業のスナックも開催し、人々の声に耳を傾けている。———-
(フリーランスライター・エディター 東野 りか)

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