【渡 淳二】「酒に強くなった」はじつは「危険信号」!知られざる「副作用」と「休肝日」の重要性!

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ビールが美味しい季節がやってきました!
コクやキレ、さらには喉ごしの爽快さまでもが求められる。「勘と経験」に「最新の科学技術」を融合して日本のビール造りは世界に類を見ないほどの発展を遂げ、発泡酒や新ジャンルの開発へと進化を続けている。生きた酵母を使いこなすビール造りの真髄からビールがおいしくなる注ぎ方や世界各国の名ビールまで、知ればもっとビールが飲みたくなる話を多角的に解説!
ビールのおいしさのすべてがわかる!
7000年ものあいだ人類に愛されてきたビールは、最先端の科学を駆使して、
今も日々進化を続けている。その製造工程から家庭でおいしく飲むコツまで紹介!
※本記事は『カラー版 ビールの科学』(2018年刊行)を一部再編集の上、お送りいたします。
習慣的に飲み続けているうちに徐々に酒量が増え、「お酒に強くなった」と感じた経験をした人も多くいらっしゃるのではないでしょうか。「お酒に強くなる」とき、私たちの体内ではどのようなことが起こっているのでしょうか?
アルコールの分解は、前述のADHとALDH系酵素による代謝が8割程度を占めるといわれています。残りの約2割は、肝臓のミクロソームにある薬物代謝酵素を中心とするミクロソームエタノール酸化酵素系(MEOS)による分解だとされています。
MEOSによる代謝では、アルコールは直接、二酸化炭素と水に分解されます。このMEOSは誘導的であり、お酒を飲み続けることでMEOS活性が高まって、より多くのアルコールを代謝できるようになります。一見酔いにくくなり、お酒に強くなったと感じるのは、この効果によります。
ところが、MEOSによってアルコールが代謝される際には、活性酸素が生じています。こうして生まれた活性酸素は、肝臓に酸化ストレスをもたらします。恒常的にMEOSが誘導された状態では、「酒に強くなった」と錯覚することで飲酒量が増大する傾向にあります。加えて、MEOSは薬物代謝の解毒作用を示すため、医薬品の効きが悪くなったりするなど、実はきわめて危険な状況をもたらしえます。
MEOSの活性は断酒によってもとに戻るとされており、しばらく飲まないとお酒が弱くなった感じがするのも、これが一因です。いずれにしても、連続しての大量飲酒が肝臓などの臓器に負担をかけることは間違いありません。休肝日は、肝臓をアルコールのストレスから解放するために必要不可欠だと心得てください。
最近は女性の飲酒割合が増加し、また、一日あたりの飲酒量も増加する傾向にあります。女性の社会進出に伴う飲酒機会や精神的ストレスの増加に加え、家庭でも精神的ストレス解消を図るキッチンドリンカーが増加傾向にあるなど、以前と比較して若い年齢で、重篤なアルコール依存症になる女性も珍しくなくなっています。
女性は男性と比較して、胃のアルコール代謝酵素が弱いことが知られており、また、女性ホルモンがアルコール代謝に影響しているとする報告もあります。一般に、アルコール依存症やアルコール性肝障害を引き起こす酒量は、女性では男性より少なく、3分の2程度ともいわれています。仕事でもプライベートでも、男性と同じような量のアルコールを日常的に飲んでいる女性は注意が必要でしょう。
2012年時点の世界における全死亡の5・9%に、アルコールが関与しているという報告があります。
アルコール問題は飲酒者だけでなく、その家族への影響も大きく、経済損失の原因の一つとされています。このような社会的問題としての背景から、世界保健機関(WHO:World Health Organization)は2010年、「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を発表し、同年の総会で採択されました。
この戦略には、「国の政策と措置」として、飲酒運転に関する政策と対応策、アルコール飲料のマーケティング対策など、具体的な対応策を含む10領域の「推奨目標」が盛り込まれています。WHOは、アルコールの有害使用を予防するための対策を彼ら自身が実行するのではなく、世界各国にゆだねる方針を採りました。
WHOの世界戦略をふまえ、日本では、2013年12月に「アルコール健康障害対策基本法」が成立し、翌年6月に施行されています。
日本政府は、国としてアルコール健康障害(アルコール依存症その他の多量の飲酒、未成年者の飲酒、妊婦の飲酒等の不適切な飲酒の影響による心身の健康障害)への対策を、総合的かつ計画的に進める責務を負っています。同法はまた、事業者の責務として、アルコール健康障害の発生、進行および再発の防止に配慮する努力義務を規定しています。
痛風といえば、すぐにビールに含まれるプリン体が原因と思われがちです。第1章で紹介したように、ビール会社への問い合わせとして上位に来る質問でもあります。でも、本当にそうなのでしょうか? 少し詳しく見てみましょう。
痛風の引き金となる尿酸のもとは、確かにプリン体という物質です。プリン体は、細胞中の核酸の構成成分で、アデニンやグアニン塩基がこれに相当します。プリン体が体内で代謝されると、尿酸という物質に変わります。尿酸は水に溶けにくい性質をもっており、尿として体外に排出されにくい物質です。
血中の尿酸濃度が上昇すると、析出した尿酸の結晶が足の指付近などに溜まり、炎症を起こすことがあります。いわゆる痛風発作です。この痛風発作が起こるのは通常、血清尿酸値が7・0mg/dLを超える状態が数年以上続いた後とされていますが、いったん発作が起きると激痛を伴うことから、生活習慣の変更を余儀なくされます。生活習慣を見直さないかぎり、痛風発作が繰り返し生じることを避けられないからです。
痛風は特に、ホルモンによる尿酸排泄の違いから圧倒的に男性に多い病気です。血液検査の際は、肝臓に関する検査値と同様、尿酸値にも注意するようにしましょう。
さて、そのプリン体が、他のお酒に比べてビールに多く含まれるのは事実ですが、通常の食品には、ビールに比してはるかに多くのプリン体を含むものも多くあります。日本の一般的なビール100gあたりのプリン体含量が約6~11mgであるのに対し、レバーや赤身の魚、干物などは、その20~40倍以上のプリン体を含んでいます。
尿酸にはもともと、体内でつくられるものと、食物として体外から摂取するものとがあります。一日平均にして体内で500mgの尿酸が産生される一方、食品から摂取する量は一日約100mgといわれており、合わせて600mgの尿酸が日々、新たに増加しています。
他方、腎臓を経て尿から排出される尿酸は一日平均450mg、汗や消化液に溶けて排出されるものが150mgあります。増加分とほぼ同量が排出されており、プラスマイナスゼロでバランスがとれています。よほど飲み過ぎたりバランスが悪い食生活をしたりしないかぎり、健常者の場合には大きな問題にならないと思われます。
ただし、アルコール自体にも尿酸を生成し、かつ尿酸代謝を阻害する作用があるため、大量のアルコール摂取は痛風の原因となる場合があります。ビールに限らず、他のお酒でも飲み過ぎれば痛風の原因になります。バランスのよい食事を毎日心がけるとともに、水に溶けにくい尿酸の排出を円滑にするために、尿量を増やすよう水分を十分に摂ることが大切です。
「生ビール」と「ラガービール」がどう違うか、知っていますか?

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