謎の激安・中華系ビジネスクラスで空の旅の顛末

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最初の経由地で降り立った中国・鄭州の空港(写真:筆者撮影)
【画像】ビジネスクラスの料金がエノコミーより安い? 筆者が最初に見たときは「バグ」だと思った予約画面
経済ジャーナリストで、法政大学MBA兼任教員の浦上早苗さんが挑戦した50歳からの“おひとり様”世界一周。その旅を通じて見えてきたもの、感じたことを、ありのままに綴る連載が「シン・世界一周~人生後半、日本を学び直す旅」です。
昨年10月に世界一周航空券を使った世界一周旅行を始めた。ところが、同じく海外にいた家族が大けがをして緊急手術を受けたため、イスタンブール(トルコ)で離脱し旅を数カ月中断した。
海外旅行保険のありがたさが身に染みたが、その話はいずれするとして、今回は世界一周を再開するにあたって“恐る恐る”利用した、中華系キャリアの激安ビジネスクラス搭乗記を2回にわたってお届けする(本記事は1回目)。
【画像】中国南方航空、ビジネスクラスの座席や写真など(9枚)
今年4月、世界一周旅行を再開するため日本からイスタンブールに向かう航空券を探し始めた。
世界一周航空券を利用しての旅だったので、イスタンブールから先の航空券は全て手配済みだったが、そこまで戻る航空券を取らなければならない(世界一周航空券の詳細については前回記事を参照)。
東京からイスタンブールまで、直行便は全日空とターキッシュ エアラインズが運航している。フライトは約13時間で、4月の片道運賃はエコノミーで13万~16万円だった。
すでにビジネスクラスで世界半周しているので、身も心もすっかり贅沢になって「エコノミー13時間はつらい」と感じてしまう。だったら「乗り継ぎながら向かおう」と経由便を探し始めた。時間がかかる分、経由便のほうが安いことが多い。
LCCも含めて航空券をしらみつぶしに探しているとき、かなり”おかしな”航空券を中国南方航空のサイトで見つけた。
イスタンブールではなく、トルコの隣にあるジョージア・トビリシ行きだが、日にちによっては価格の幅が異常に大きく、エコノミーよりビジネスクラスのほうが安い日がいくつかある。全日空やターキッシュエアラインズのエコノミーと比べても安い。
ビジネスクラスの料金を見て、最初に見たときは「バグ」だと思った(画像:中国南方航空サイト)
低価格の理由は乗り継ぎが2回発生し、しかも中国で最低1泊する必要があるからだとわかった(エコノミーは謎に高いのだが……)。こちらは世界一周中の身、中国での乗り継ぎは望むところだ。
トビリシは最近日本人デジタルノマドに人気が高く、前から興味があったので、トルコに入る前に数日過ごすのも悪くない。
さらに南方航空の魅力的なキャンペーンも見つけた。乗り継ぎ時間が一定以上の場合、近隣のホテル宿泊を無料で提供してくれるという。エコノミーは原則相部屋、ビジネスクラスは4つ星以上のホテルの1人部屋だそうだ。
この航空券を見つけたときは何か罠があるのではと疑ったが、迷っている間にチケットが売り切れていく。「失敗したらそのときだ」と、4月17日成田発・ビジネスクラスのチケットを思い切って予約した。
旅程は「成田~鄭州(ていしゅう)~ウルムチ~トビリシ」。それぞれ22~23時間半の乗り継ぎが発生し、総所要時間は60時間。気になるお値段は13万8170円。
今回の行程の一部。赤のピンを刺している地点がトビリシ。トビリシからイスタンブールまではフライト2時間半、1万円前後で行ける(画像:Googleマップ)
(画像:編集部作成)
ちなみに、同じ価格で広州や深セン、大連を経由して40時間弱でトビリシに到着できるフライトもあったが、せっかくなら新疆ウイグル自治区のウルムチを観光したかったので、あえて一番時間がかかるルートを選択した。
あっという間に出発の日になった。搭乗2時間半前に成田空港の南方航空カウンターでチェックインし、案内された航空会社共用ラウンジ「NARITA PREMIER LOUNGE(成田プレミアラウンジ)」に向かう。
世界一周の最初のフライトで利用したANAラウンジに比べると空いていて、ゆったりと過ごせる。もっと早く来ればよかったと思いながら、窓際の席で一仕事した。
成田プレミアラウンジ(写真:筆者撮影)
ANAラウンジに比べて人が少なく、窓際の席も取りやすい(写真:筆者撮影)
いよいよ搭乗である。ビジネスクラスは8席しかなく、乗客は筆者を含めて4人。
ビジネスクラス担当のキャビンアテンダント(CA)が「浦上さん、本日はありがとうございます。フライトは4時間半を予定しています」と英語で挨拶に来てくれた。
8席のみ用意されているビジネスクラス(写真:筆者撮影)
お待ちかねの機内食……と言いたいところだが、これまでの経験から中国系航空会社の食事のクオリティは日本のキャリアに劣る印象を持っている(ただし、CAが機内を巡回しご当地調味料「辣醤(ラージャン)」を振りかけてくる四川航空など、エンタメ感のあるサービスは多い)。
だからビジネスクラスであってもそう期待はしていなかった。
機内食は中華2種類、和食1種類の計3種類。先にオーダーを聞かれた隣の席の中国人女性が和食を選ぼうとしたら、CAが中国語で「あなたの隣の客が日本人だから、和食を譲ってあげたほうがいいんじゃないか。この中華もおいしいよ」と変更を促している。
いや、会話の内容全部聞き取れてますよ。つまり和食は残り1つってこと? CAが私のことを考えてくれるのはありがたいけれど、変更を説得されている隣の人に申し訳ない。
隣の客に無事、中華を選ばせたCAは、私に説明を始めた。「本来は3種類のメニューを準備していますが、和食しか残っていません。それで良いでしょうか」
何と、私はメニューを選ぶ以前の問題だった。「良いでしょうか」と聞かれてだめだと答えたらどうなるんだ。斜め上すぎて首を縦に振るしかない。ビジネスクラスの乗客が少ないので最小限しか用意していないのかもな。今時のフードロス対策と思って受け入れますよ。
和食の機内食には、いなり寿司や茶そばがついていて、思ったよりおいしかった。いい意味で期待を裏切られたのは食後のデザートで、フルーツとハーゲンダッツのアイスのコンボだった。高級アイスといえばハーゲンダッツと刷り込まれた50歳、これはテンションが上がる。
「和食」の機内食(写真:筆者撮影)
思ったより豪華だった食後のデザート(写真:筆者撮影)
乗客が4人しかいないからか、CAが「飲み物どうですか」などと聞く前に常に名前を呼んでくれた。最初の半周でビジネスクラスはそこそこ経験しているが、これだけ名前を連呼されたのは初めてだ。
おおむね快適だった最初のフライトだったが、鄭州に降り立った直後に事件は起きた。
南方航空の貴賓室を名乗るアカウントから「明日は鄭州でお待ちしております。よい旅を」とメッセージが入ったのだ。
「明日? いや、もう着いてますけど」
と折り返すとそこからやり取りが始まり、メッセージを数ターンした後に「空港を出て〇番ゲートの前で待っていてください。車を迎えに行かせます」と連絡を受けた。
宿泊予定のホテルの名前やチェックイン方法については数日前に案内が来ていたので、自力で行くつもりだったが、ありがたく申し出を受けることにする。
ほどなく一台のバンが目の前に止まり、降りてきた20代と思われる男性がいきなり「こんにちは」「お腹どう?」と日本語で話しかけてきた。数年前に日本に留学していて、東京の池袋に住んでいたという。
日本語人材は突然現れる、というのは世界一周を通じて何度も何度も体験したが、ここでも出会ってしまった。
宿泊するホテルは空港から5分も走れば着くはずだが、車はどうも違うところに向かっている。男性は走りながら電話をかけ、中国語で「今から顧客を連れて行くから。1人。そう、1人部屋。高級な客だから、必ずいい部屋を準備してね。よい部屋を頼むよ」と話している。
「ホテル変わったの?」と聞くと、「あなたはVIPだから」と返ってきた。
ここで何となく読めた。筆者は出発2日前に南方航空のコールセンターにホテルの手配を依頼したのだが、どこかの段階で到着の日にちを間違えられ、さらにエコノミークラスの客として登録されていたようだ。
筆者が到着してから航空会社側もミスに気付き、今リカバリーの真っ最中なのだろう。
普通の日本人だったら怒るかもしれないが(というより、何が起きているかわからないだろう)、かつて中国に住んでいた筆者は「ああ、これよこれ! これが中国!」とワクワクを抑えきれなかった。
そして彼らがリカバリーしようと過剰なおもてなしに走ったおかげで、筆者の予定は一気に狂うことになる(後編へ続きます)。
【画像】中国南方航空、ビジネスクラスの座席や写真など(9枚)
(浦上 早苗 : 経済ジャーナリスト、法政大学MBA兼任教員(コミュニケーションマネジメント))

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