全国的なコメ不足が続くなか、農家がこれまでの方針を見直し、食用米の作付けを拡大する動きが広がっています。価格の高騰や需給の不安定さが続く中、いま生産現場では何が起きているのでしょうか。
【写真を見る】コメ不足で農家が決断 「大豆をやめて食用米に」生産現場に変化
大分県宇佐市で、祖父の代からコメ作りを続けている「ジョイライス大分」の和田幸太さん。2017年に法人化して生産規模を拡大し、現在は食用や飼料用など30ヘクタールでコメを作付けしています。去年から全国的にコメ不足が叫ばれる中、和田さんはこれまでの方針を転換しました。
和田幸太社長:「去年よりは大体5ヘクタールから6ヘクタール増やしています。一気に食用をそこまで増やしたことはなく、初めてです」
コメの価格維持のため、国が続けてきた減反政策が2018年に廃止されたあとも大分県内の作付実績は減少傾向となっていました。こうした中、今年は県全体で200ヘクタールほど増加に転じる見込みです。
背景には去年から続く価格の高騰に伴い、農家の生産意欲が高まった一方、消費者のコメ離れや農業への先行きの不安もあるといいます。
和田幸太社長:「コメがどうしても足りないという状況なので、農業としてどう残っていくかって考えたときに、大豆をやめて食用米を少し増やして、足りないものを作っていこうと」
コメをめぐっては、随意契約の備蓄米が店頭に並び出したことを受け、価格に変化が生まれています。6月22日までの1週間、5キロあたりのコメの全国平均価格は3835円と1か月で600円近く下がりました。中でも九州・沖縄地方は3640円と全国平均よりも安くなっています。
備蓄米の流通を受け、大分市の米穀店では客の動向に変化が現れました。
山川米穀店 山川富弘さん:「私たちのところに『コメをください』という人が3割ぐらい減りました。ペースを取り戻して助かりました。いまは仕入れにエネルギーを使っています」
ただ現状は、取引のある客のニーズに応えるのが精一杯で、新規業者の購入を断る状況が続いているといいます。さらに8月中旬の早期米から始まる新米シーズンについて、価格がどのように推移するか見通せないのが実情です。
山川米穀店 山川富弘さん:「高い、安いのせめぎあいじゃなくて、いいところに着地してほしいのが自分たちの気持ちです。上乗せして買っても、日本のコメは安心して食べられるからいいよねって、全消費者にそうなってほしい」
コメ作りは物価高により、生産コストが上昇。さらに今年は統計開始以来、最も早い梅雨明けとなり、今後の暑さや雨不足も心配され、生産者は不安を抱えた状態が続いています。
ジョイライス大分 和田幸太社長:「農業はやっぱりなくなってはいけない。なかなか後継者不足で作り手もいなくなっているなかで、やれる範囲で続けていきたい。コメを主食に、みなさんにたくさん食べてもらいたいです」
持続的に農家が生産でき、消費者が購入できる適正価格はどこなのか。コメを取り巻く環境は、いまも不安定なままです。