22日、東京都議会議員選挙において都民ファーストの会が第一党となる見通しとなったが、各陣営はどのようなSNS戦略を展開したのか? 政治とネットに詳しい立命館大学の谷原吏准教授に集めてもらったデータを元に説明してもらった。
【映像】ひと目で分かる! 玉木代表の登録者の「激減」
谷原准教授は「投下された動画がその日のうちにどの程度回ったか、その累積が分かる」というデータ(6月15日起点)を引き合いに出して「圧倒的に強いのは石丸伸二氏の『切り抜き』。2番目に多いのは石丸氏が立ち上げた地域政党『再生の道』の『公式』だ」と説明した。
「特にこの1週間で再生の道は“嵐のように”街頭演説のライブ配信を投下し、それがその日のうちにかなり見られた。再生の道の『公式』に続く3番目はれいわ新選組だが、これは必ずしも都議選関連の動画だけではないため、どの程度(都議選に)影響があったかわからない。いずれにせよ、とにかく投稿数が多い、もしくは動画の初速でよく見られたのが再生の道関連だった」
再生の道において、公式チャンネルより切り抜きチャンネルの方が初速で再生されている点について谷原准教授は「切り抜きチャンネルの方が見られていると言っていい。ただし、無数にある切り抜きチャンネルの中での1番大きいチャンネルが強いということだ。そして、この1番大きいチャンネルに続くものが“ぼこぼこ”あるので再生の道のYouTube空間におけるプレゼンスは計り知れない」と述べた。
「切り抜き動画」と「政治」の相性については「非常に良い。例えば一番伸びている切り抜きチャンネルだと、再生の道の候補者の討論会や石丸氏が良い発言部分だけを切り取って詰め合わせて投稿しており、石丸氏に好意的な興味がある方にとっては非常に良いコンテンツだ。サムネイル画像も『論破した』など人々の注意を引くものになっている。切り抜きが強いのは今回の都議選に限った話ではなく、去年の都知事選挙や兵庫県知事選挙でも、本人の公式より切り抜きの方が遥かに回っている」と解説した。
続いて「(初速だけではなく)チャンネル全体の累積の再生数」と「登録数」と「投稿数」についてのデータを引き合いに出して以下のように述べた。
「まず再生数から。ここでも石丸氏の切り抜きチャンネルが圧倒的だが、それ以外はかなり様子が異なる。実は2番目には参政党がくる。これが何を意味するかというと、参政党の動画は“発売初日”はそれほど見られなくてもロングセラー的に過去の動画を見に行っている人が多くいるということだ。だから、参政党は政党名で検索されたり、あるいはチャンネル登録されて過去動画を見られるという“根強い人気”があると言っていいだろう」
そして、そんな参政党は「登録者数」において圧倒的に強いという。
「参政党のコンテンツは本当にロングセラーで、直近1週間で1万人登録者が伸びている。特に都議選期間中は伸びていて、6月から見てもずっと登録者では参政党の1人勝ちで、再生の道も意外と伸びていない。都議選というより、おそらく次の参議院選に向けて根強いファンを確実に獲得しているのが参政党のYouTubeなのだ」
一方で「登録者数」の落ち込みが激しいのが国民民主党の公式チャンネルと玉木代表のチャンネルだという。
「6月に一貫して登録者数が減っている。玉木代表のチャンネルはなんと1万人ほど減っていて、コメント欄も一時期かなり荒れていた。特に山尾氏の公認問題で非常に荒れて、ネットユーザーも敏感に反応して登録を外すというところまで行ってしまった。チャンネル登録解除はちょっと面倒なので強い動機があったようだ。この状態から参院選に向けて回復するかどうかだ」
「投稿数」については再生数などとは異なる様相が見えるという。
谷原准教授は「直近1週間で見ると、再生の道及び再生の道の切り抜き関連が非常に伸びているが、6月を通して見ると、日本維新の会、公明党、日本共産党が“鬼のように”動画を投下していることが分かる。非常に短い動画、いわゆる“プロ仕様”というか、まるでTikTokのようなショート動画が大量に投稿されているが、都議選関連でもなく、全然見られてもいない。つまり、動画の作り方で再生数が変わるわけでもなく、メッセージの中身が肝心なようだ。また、国民民主党や石丸氏関連、れいわ新選組や参政党などはネット上の歴史が深く、ネット上での地盤がある。だから、『これからユーザーをつけよう』というのは相当厳しいだろう」
最後に谷原准教授は動画が乱立する問題点について「いろいろな政党の動画を横比較で見比べることが難しい。どうしても自分が元々興味のある情報を優先して見るという形になる。だから選挙区の候補者の討論会や党代表の討論会などの試みは有権者にとっても有益なのではないか」と指摘した。(ABEMA NEWS)