「積水ハウスを信頼して、土地と建物を合わせて7000万円もする一戸建てを購入しました。一戸建てのマイホームを持つことにずっと憧れがあったんです。それなのに――配管の水漏れや無数のビス穴、締め忘れたボルトや床の黒ずみなど、入居したその日から次々と欠陥が見つかり、修繕工事をする度に問題が発生して……この有り様です」
2階の天井が無惨に剥がされ、鉄骨や梁が剥き出しとなったマイホームで、40代の主婦A子さんは静かに憤る。
’19年9月、積水ハウスは工事方法の同意を求め、弁護士を通じて裁判所に調停を申し立てている。
「結論から言うと、調停は不調に終わりました。私が何を指摘しても、積水ハウスは『問題ない』の一点張り。話し合う姿勢が私には見えなかった。しかも、購入時には積水ハウスオリジナルの制震システム『ハイブリッドシーカス』が新居に設置されると設計担当者から説明を受けていたのに、実際には設置されていないことも分かった。調停でも、『ハイブリッドシーカスが入っていなくても問題はない』と譲らない。我が家の耐震能力は十分なのか、疑問だし不安です」
1年ほど続いた調停は不成立に終わり、工事は今も止まったままだ。
「修繕工事中、2階の家具や荷物を移動させる必要があったので、積水ハウスに費用を負担してもらって倉庫に保管しました。ところが、積水ハウスは調停が不成立に終わると『これ以上は倉庫での保管費用を負担できない』と弁護士を介して連絡してきた。『じゃあ、荷物を私たちの家に戻してください』と伝えたのですが、荷物は未だに戻ってきていません」
積水ハウスとの終わりの見えないやり取りに心身を擦り減らしていたA子さんを、さらなる不幸が襲う。
「今年3月に主人を亡くしました。まだ53歳でした。主人は死の直前、『この住環境が本当に辛い。もう限界だ』と口癖のように言っていました。生前は主人が積水ハウスとやり取りしていました。それが心身の負担になっていたのでしょう。仕事が終わって家に帰ってくると、睡眠時間を削って調停に臨むための資料などを作成していましたから……。この家を買ってから、心が休まる日は一日もありません。今も私は3歳の息子と一緒に、1階部分だけで生活しています。私は積水ハウスに慰謝料を求めているわけではないんです。ただ、欠陥や不具合がない、普通の家に住みたいだけなんです……」
A子さんと積水ハウスの間のトラブルについて、欠陥住宅に詳しい日本建築検査研究所の岩山健一氏の見解を問うた。
「施工をしたのが下請けの業者だったとしても、欠陥が見つかっている以上、積水ハウスに修繕する責任がある。修繕工事にあたって居住者の退去や荷物の一時撤去などが必要であれば、その費用は道義的に積水ハウスが負担するべきです。大手ハウスメーカーでも、杜撰な工事によるトラブルは十分起こり得ます」
A子さんの住宅に数々の欠陥が見つかったのは事実なのか。修繕工事中に誤ってトイレを撤去するなど、次々とトラブルが起きた原因は何なのか。どうして一時撤去した荷物を返さないのか。FRIDAYの取材に、積水ハウスはこう回答した。
「個別の事案に関する内容であり、お客様のご事情を考慮して、回答は差し控えさせていただきます」
A子さんが平穏な暮らしを取り戻せる日は、果たしていつになるのか。
『FRIDAY』2025年6月20日号より