「ごめんなさい、ごめんなさい…」妊娠後も「風俗」で働き続けた女性がついた“あきれた嘘”…「歌舞伎町弁護士」が見たナイトビジネスの衝撃現場

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

〈「中絶の援助はしますが…」風俗嬢が妊娠…事実を告げられた男性客の“言い分”とは? 「歌舞伎町弁護士」が語るナイトビジネスの裏側〉から続く
欲望が渦巻く街、新宿・歌舞伎町。きらびやかなネオンに彩られた“日本一の歓楽街”は、一方で悪質ホストや売春といった問題と隣り合わせでナイトビジネスに関するトラブルも多い。
【画像】父親は誰? 風俗嬢がDNA鑑定して分かった「衝撃の結果」
そんな新宿に拠点を置き、“歌舞伎町弁護士”として数多くの依頼を解決してきたのが若林翔氏だ。今回は、若林氏の新著『歌舞伎町弁護士』(小学館)から一部抜粋し、実際にナイトビジネスの現場で起きたトラブルを紹介する。(全3回の3回目/初回から読む/前回を読む)
客と“本番行為”をした後に妊娠したデリヘル嬢は、その後も出勤し続けたという 写真はイメージ KeyRabbits/イメージマート
◆◆◆
子育ての熱意にあふれた人がいる一方、諸般の事情から中絶を選ばざるを得ない人もいる。「親子関係が確定すれば、中絶費用や永代供養代を負担する」との相手方の同意を得て、DNA鑑定の申し込みを行ったデリヘルに勤める女性は、なかなかのくせ者だった。
鑑定を行うラボに細胞を送り、人工妊娠中絶の予定日も決定、DNA鑑定の手続きは順調に終えることができた。しかし、その後、鑑定結果がなかなか知らされない。
彼女に電話を入れても出ないので、店長にかけたが、彼も出なかった。ラボに確認すると「鑑定結果は出ている」が「開示できない」と告げられた。なんと、彼女は鑑定料の一部(先払い分)を振り込んでいなかったのだ。
私はファイルを開き、彼女との打ち合わせの記録を確認した。そこにはたしかに《鑑定料、振り込み済み》と書かれていた。
とはいえ、さして腹は立たない。依頼者は嘘をつく。捜査官が捜査の初期段階で、ホシを決めつけるのと同じぐらいの頻度と考えればいい。
状況を把握したので、私は2人に連絡して《鑑定料を振り込まないかぎり、結果はわからない。結果がわからなければ、“父親”と交渉もできず、中絶費用も永代供養代も回収できない》とメッセージを送った。

すると、その日のうちに彼女と店長がやって来た。私は予定が詰まっていたので断ったが、しつこく言うので深夜に事務所を開けた。到着した時から彼女は泣いていた。「ごめんなさい、ごめんなさい」と泣きじゃくっているが、泣いて何かが解決するわけではない。
わざわざ店長が来たのはなぜかと思ったら、なんと、彼女は妊娠中もデリヘルに出勤していたのだった。それなのに、どうして鑑定料が支払えないのか。
「店に借金もあるんです」
店長が言った。
「センセ……」
彼女が流し目で言った。
「鑑定の……グス、結果が、グス、わかったら……ねえ、グス、120万円……でしょ」

1週間だけ立て替えてほしい? そいつは無理な相談だ。
店から借りたのか、誰かに借りたのか、あるいは自分のへそくりか。事情は知らないが、彼女は十数万円の鑑定料全額を振り込み、結果が判明した。
彼女のお腹に宿った小さな命の父親は“その客”ではなかった。相手方であったその客からは「自分じゃないのに疑われてDNA鑑定まで協力させられて」、とクレームを言われたが、そりゃあそうだろう。
こちらとしても謝るしかない。
(若林 翔/Webオリジナル(外部転載))

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。